今から遊ぼうよからはじまる、大きなこどもの約束
窓からはサンサンとした太陽がふりそそいでくる。ジリジリとした暑さが今はちょうどいいくらい。
キンキンとした冷たさを身体にとりこんでしまったのだから。
★
ムンとした熱気を感じて、リモコンのスイッチをいれたのを覚えていた。すこし汗ばんだ身体をくねらせて、エアコンからの涼しいかぜを肌でかくにんして。そのまま、もういちど、まぶたを閉じてしまって。気づいた時には、時計の針は両方とも高いところにならんでいた。
まだ眠れそうだけど、スマホをたぐりよせて、ブックマークをおす。わたしの休日は、このサイトにアクセスすることからはじまるのだから。
暗闇のなかでひかるオーナメント。ここは、『お休みエンドロール』の世界だ。くるくるとかわるオーナメントを選んで、メッセージをもらうサイトだ。
お休みの夜、流れているエンドロールのなかに明日が楽しみにする気持ちがありますように。
そんな優しさのあるサイトだから、だいすきだ。このくるくるかわるオーナメントをみながら、今日の予定をたてる。それが、わたしの休日のはじめかた。
やりたかったこと、やろうとしてたこと。それらを組み合わせていく。
めずらしく今日は、出かける予定ははいっていなかった。いまから洗濯や掃除をしても、夕方には空白の時間。今日のメッセージでどうするか決めてもいいかもしれないな。
メッセージを読んでいると、誰かからの連絡がきているとの通知がでてきた。
誰だろ?
トントンと操作して、届いたメッセージを読んだわたしは思わず声をあげ、そのまま、通話ボタンをおした。
★
「けっこう混んでるけど、入れてよかったね。」
「ほんと、ラッキーだね。」
もう夏といっていいほど気温の高かった。夕方になってもなお、その暑さは続いていた。冷たさをもとめた人々でどこのお店もいっぱいだから、こんなにすんなり入れたのは幸運だ。
ちいさな店内は、あまり空調がきいていないようだ。外の暑さとくらべると、いくぶん涼しいくらい。まだほてっていら身体には、すこし暑くて、汗がツーっとつたう。
オーダーは、案内と同時にきいてもらった。すぐにお持ちしますと言っていたから、あとは待つばかり。ソワソワとキッチンらしき方をみてしまう。
「はぁー、楽しみだね。かき氷たべるのが今日のメッセージでもあったんだ。」
「えっ、ほんとに? わたしもだよ。」
「「お休みエンドロール??」」
ふたりして驚きの声をあげると、お待たせしましたという言葉とともに、繊細な雪のはいった器がめのまえにおかれた。
わぁっと思わず声がでる。
かき氷。それも、フルーツがごろごろとしている濃厚なシロップのかかったデザートのようなかき氷だ。
わたしは、いちごとラズベリーとミルクジャム。友人は、宇治抹茶と白玉あずき。
ふたりして、いただきますと同時にスプーンで雪をすくう。さくっとした氷と、いちごとベリーのシロップを口へ。
冷たさと甘さがやってきて、んーーっとうなってしまった。お祭りにたべるときのかき氷とは違った、繊細な味だ。
ちょっと多いかとっとすこし不安だったくらいの大きさだったのに。おしゃべりもまじえつつ、あっという間に食べてしまった。いつのまにか、身体のほてりはおさまり、暑いくらいの店内の気温がちょうどいいくらいだ。
「まさかさ、おんなじメッセージだとは思わなかった。だから、電話だったのね。」
目の前の友人がこちらをみて、笑った。
★
夏の先どり、してみない?
シンプルだけど、そっと提案してくれる。お休みエンドロールからのメッセージを読んでいたとき。夏の先どりときいて真っ先に思い浮かんだのはかき氷だったから。去年は食べ損ねてしまったから。ずっと楽しみにしていたんだもの。
よし、かき氷のお店をさがそうって決めてから。届いた連絡には、かき氷食べにいかないっというお誘いだった。びっくりした。だって、まさか、こんな偶然あるのって思ったのだもの。
★
何もなかった休日。当日に遊びにいこうなんて、もうほとんどない。前もって約束をするのが、大人の約束の仕方なのだという、暗黙のルールがあるような気がしてた。
今から遊ぼうよなんて、なんだか、幼いころにもどったようだ。ランドセルをおいて、また集合ねっみたいな約束ができる人がいるっていいな。冷たさと甘さのおかげでふわふわっとしている頭でそんなことを考える。
「なんかいいね、こんな休日も。急だったのに、会ってくれてありがとね。」
「わたしの方こそだよ。ありがと。」
「今日のお店しらべてるときにさ。もうひとつ気になるお店あったの。ここもいってみない?」
いいねっと笑う休日。暑いのは苦手だけど、今年の夏が楽しみができた。メッセージがくれた、とっておきの夏のさきどりに、わたしはまたにっこりと笑った。
いつも読んでくださり、ありがとうございます♡