後悔になりそうな想いをすくいに

コツンコツンと歩く音がひびく。思わず息をとめてしまうくらい、静まりかえった空間にすこし緊張しながら。懐かしさを身体いっぱい感じていた。



引っ越しをしようと決めたのは、まだ寒い時期だった。年末がきたら、新年度になったら。そうして、なんどもとおりこしてしまったのだけど、決まるときはスルスルと物事が進むみたい。


こんなとこだったらいいなっと考えていた場所で、1DKの部屋をかりることになった。



引っ越しすると決まってから、いまの部屋の駅には、あまりこないだろうなぁっと思った。通りすぎることはあっても、途中下車はしないかなって。


半分くらい片付けた部屋をみわたしながら、いまの部屋にきたときのことを思い出した。いろんな場所に行きたかったこと。いつのまにか日常に追われていたこと。また今度っと言い訳することが多かったこと。


ぼんやりと考えごとをしながら、スマートフォンをてにとる。ぐるぐるとしているよりも、あのメッセージのほうがわたしの気持ちをあててくれるだろうから。



『お休みエンドロール』
夜ねむるまえに明日が楽しみで笑っちゃうような。お休みの日の過ごし方をおしえてくれるサイト。


占いやおみくじとはちょっとちがう。でも、どうしてかな。いまの自分の気持ちを見透かされているってかんじるくらい。的確なメッセージくれるんだ。


オーナメントを選んで、メッセージをうけとる。


ほらね、やっぱりねって、笑ってしまった。



むせかえるような本の香りが、記憶をしげきしてくる。最寄り駅のちいさなカフェでランチしたあと、向かった先。歩いてもいける距離にある、図書館にきていた。


ドラマの撮影にもつかれるくらい、おしゃれな外観。ドキドキしながら、扉をあけると、沢山の本がむかえてくれた。

なつかしいな。あの独特の空気が自分のまわりをとりまいていく。


しっかりとした表紙の大きめの本を読むことも、長くしていなかったことだ。読みたかった本をてにとり、席をさがす。


コツン、コツン。
この音がすきだ。


ひとつ空いてた席にすわり、パラリと紙をめくる。そのまま、本の世界にとんでいった。


気がついたときには、青空が赤くそまっていた。時間がかかってしまったけれど、読みきれた。


あと、何回これるかなっと空を見上げる。
お休みエンドロールがそっと背中をおしてくれていなかったら、わたしは図書館にきていなくて。そんな後悔をかかえたまま、引っ越ししていただろう。

後悔したって思っていることは、すぐにしてしまおう。そしたら、後悔は経験になる。


そんなメッセージのおかげで、わたしの休日は、後悔を経験にできた。さて、まだまだ残っている引っ越しの準備ももうすこしやろう。


長い時間おなじ姿勢だったからか、ちょっと肩がこったみたい。ぐいっと身体をのばす。そしたら、お腹がなった。 へへへ。そのまえにお腹をみたそうかな。あの気になってた焼き鳥やさんもいいかもな。


わたしの足取りはどんどん軽くなる。


後悔になりそうな想いをすくいとって、わたしには翼がはえたみたいだ。


いつも読んでくださり、ありがとうございます♡