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【ショート台本】思春期に出会ったものの影響力【3兄妹の会話】

<登場人物>
ユキト(男):長男。中二病を長年拗らせて生きている。売れてない役者。
ミナミ(女):末っ子長女。おバカな兄二人に囲まれたせいかしっかり者。
ヒトシ(男):次男。兄よりはましだと思って生きている。

※男2人、女1人で構成されているが、呼び名や一人称などを変えることで性別を変えて演じることも可能。
例:ユキ兄→ユキ姉
  ヒトシ→ヒトミ、ヒトミ姉
  ミナミ→カズヤ、カズくん


リビング、もしくは茶の間でテレビを見ているユキトとミナミ。


ユキト:「……ミナミ、中学とか高校時代に出会ったものって結構覚えているもんだよな」

ミナミ:「何?ユキ兄?さっきのテレビで紹介された曲とかの話?……ああ、確かにそうかも。友だちとカラオケ行くと誰かしら歌うし」

ユキト:「その後に出会ったものより人生に影響していると思うんだよな」

ミナミ:「へぇー……なんか思い当たることでもあるの?」

ユキト:「俺さ、ハガレンとかハリーポッターとかスレイヤーズにめっちゃハマってさ、図書館で本借りたりして黒魔術の研究したこととかあったんだよ」

ミナミ:「正直、知りたくなかった!そんな身内の黒歴史!!」

ユキト:「いろんな文献を漁って必死に調べた結果、賢者の石は作れないことが分かった」

ミナミ:「それは、本当によかった」

ユキト:「あ、それ役者仲間に話した時も同じ返事が来た」

ミナミ:「そんな反応に困る話、家族に話す前になんで外の人に話しちゃうの!?そんな話を聞いたら普通は引いて帰ってこないよ!引き潮のまま、波も起きないよ!」

ユキト:「大丈夫だよ。誰にもそんな過去あるよ的な感じで慰められたよ。10くらい年下に」

ミナミ:「大人の対応されているじゃん。10年下の人、めっちゃ大人じゃん!波が戻ってきてくるなんて奇跡だよ」

ユキト:「今どきの若い子って本当にしっかりしているよなー」

ミナミ:「つかね、絶対『このおじさん、本当に可愛そうな人だな。賢者の石なんて作れるわけないのに』って思ってたと思うよ」

ユキト:「ナミちゃんはひっどいなぁ……そんなこと思うような仲間は一人もいないよ!みんないいやつだし」

ミナミ:「黒歴史を話したの一人じゃないの!?広めないで!そんな恥ずかしい過去!」

ユキト:「多少は後悔している。翌日寝れなかったくらいには」

ミナミ:「寝れないくらい後悔するなら話さないでよ。こんなのが兄なんて私も恥ずかしい」

ユキト:「さすがに傷つくなぁ」


リビング、茶の間に入ってくるヒトシ。


ヒトシ:「ユキ兄とナミちゃん、仲良く何話しているの?」

ミナミ:「ヒトシ兄、聞いてよ。ユキ兄がさあ……」

ヒトシ:「ああ、ユキ兄は最近、話し方が親父に似てきたからとりあず7割聞いて3割流せばいいよ」

ミナミ:「そうなんだ……」

ユキト:「そういうのって、普通は本人いないところでするもんじゃないの?」

ヒトシ:「あれ?ユキ兄、いつの間にいたの?」

ユキト:「ヒトシ、最初に俺にも声かけてたよな?」

ヒトシ:「え?ああ、うんそうかもー」

ミナミ:「そういう感じで流せばいいのかぁ」

ユキト:「まあいいや。中高の時に俺、黒魔術の研究を必死にしていたんだよ。ハガレンとかハリーポッターとかスレイヤーズとかハマった影響で」

ヒトシ:「おい、ユキ兄。黙れ」

ユキト:「え……ヒトシ、怖い顔してどうしたんだよ」

ミナミ:「ちょ、確かに身内の恥ずかしい過去なんて聞きたくもないだろうけど……」

ヒトシ:「実はな……オレもガチで調べてた。本も何冊か持っている」

ミナミ:「正直、知りたくなかった!そんな身内の黒歴史パート2!?」

ヒトシ:「突き詰めた結果、賢者の石の材料を手に入れられないということが分かって作るの諦めたんだよ」

ユキト:「すげぇ!全く同じことしている。しかも結果もほぼ同じ」

ミナミ:「二人して何やってるの!?」

ユキト:「ああ!そういえば、悪魔をおっぱい大きいお姉ちゃんに擬人化した『萌える悪魔辞典』とか持ってたな!俺もオマエの部屋から拝借して読んでた」

ヒトシ:「おいおい。勝手なことすんなよぉ。てか、あれにはきゃわいいつるペタ幼女もいたぞ」

ミナミ:「兄貴二人の性癖なんて聞きたくもないんだけど。てか、私の部屋に放置してあるエロ本、これからは大人のお姉さんのはユキ兄、小さい女の子のはヒトシ兄の部屋に勝手に置いておくからね」

ヒトシ:「待て!オレだっておっぱいの大きいお姉ちゃんは大好きだ!」

ミナミ:「だから兄貴の性癖なんて聞きたくないんだけど!そもそも私の部屋に二人の荷物やマンガを置いていかないで!物置じゃないんだから!」

ヒトシ:「オレたちの部屋の惨状を知っているだろ?置く場所がねえんだ」

ユキト:「東京にいるミナミが帰省する前には少しは片づけているんだぞ」

ミナミ:「それじゃ、普段はもっと酷いわけ?てか、せめてエロ本だけは片づけてよ」

ヒトシ:「それは申し訳ない」

ユキト:「でも、俺の漫画がミナミの部屋の本棚に並べられていたのはちょっと驚いた」

ミナミ:「ユキ兄が片づけないから仕方なく私が片づけてあげたの!」

ユキト:「俺の黒バスとミナミの黒執事が巻数順にめっちゃ綺麗に並んでたのは本当に感動した」

ミナミ:「本来は自分の部屋でやってほしいんだけど」

ユキト:「でも他の漫画は棚に入れるだけで並べてくれなかったんだな」

ミナミ:「途中で私の本棚に兄貴の漫画を並べる必要がないことに気が付いたの。あれ、ちゃんと自分の部屋に収納してよね」

ユキト:「俺の部屋が片付いたらな」

ミナミ:「今から片づけてよ」

ユキト:「最近忙しんだよ。また黒魔術の研究にハマっちゃってさ」

ヒトシ:「さすがに30歳超えて中二病再発とかないわー」

ミナミ:「知りたくもなかった……身内の現在進行形の黒歴史……」

ユキト:「歴史は人の生きてきた過程だからな。常に更新されるものだよ」

ヒトシ:「なんか意味わからないけど、カッコいいー」

ミナミ:「その歴史が黒いんだからぜんっぜんかっこよくない」

ヒトシ:「でも、ユキ兄のそれは埋まってやつを掘り返しているだけだからな」

ユキト:「ぬか漬け的なやつか?きゅうりとかと一緒に埋めて発酵させた的な……」

ヒトシ:「ちげーよ!それただの土だよ!掘り起こしたのは土に埋まっているものだよ!」

ユキト:「な!なに!?つまりアレか?俺がぬか床だと思って一生懸命こねてはきゅうりやなすを埋めてる物はただの赤土か!?『よく漬かったねぇ~おいしくなったねぇ~』ってかき混ぜてるぬか床はただの赤土だってことか!?」

ヒトシ:「それは完全に幻覚だよ!本当にやっていたらただのヤバい奴だろ!」

ミナミ:「ゆ、ユキ兄、変な薬とかキメてないよね」

ユキト:「あー……そういえば、最近3回目のワクチン打った」

ヒトシ:「なんでもかんでもワクチンのせいにすればいいってわけじゃないからな」

ミナミ:「文句言う人は世の中にはいるけどさ、医者も製薬会社もこんな意味不明なクレームきたら迷惑だと思う」

ユキト:「他に……あ!ハッピーパウダーチーズ味!」

ミナミ:「それ、ただのハッピーターン食べただけじゃん。亀田製菓の人もそんな意味不明なクレームきたら迷惑だと思う」

ヒトシ:「普通にうまそう」

ユキト:「職場の人からもらった。たぶん期間限定の味だと思う」

ミナミ:「そもそも、ハッピーパウダーって名前がアレなだけで、普通のものしか入ってないはずだけど」

ヒトシ:「え?マジで?」

ユキト:「あのうまさはぜったいヤバいやつ入っている気がするけど」

ミナミ:「二人とも成分表を見なさい」

ヒトシ:「どうでもいいけど、研究の成果はあったの?」

ユキト:「ワンチャン、サラマンダーなら召喚できそうだった」

ヒトシ:「へぇーすげー、頑張って」

ユキト:「おう!役者仲間も同じ感じでそう言ってた」

ミナミ:「だからなんで家族以外に話しちゃうの……つか、それ完全に聞き流している人の反応だからね」

ユキト:「とりあえず、召喚に必要なのは財力だから。そこさえクリアできればイケる」

ヒトシ:「魔力とかじゃないんだ」

ユキト:「MP(マジックポイント)は使わないけど、MP(マネーポイント)は使うんだ」

ヒトシ:「お、上手い」

ユキト:「ふへへへ」

ミナミ:「ユキ兄のその笑い方、ムカつくなぁ」

ユキト:「とりあえずな、この世で一番高い煙草を手に入れて密室の中で焚き上げる必要があるらしいからな」

ヒトシ:「それ、幻覚だろ」

ミナミ:「それ以前に一酸化中毒で死ぬと思う」

ユキト:「それじゃ、HPも鍛えとかないと」

ミナミ:「……ヒトシ兄、やっぱりユキ兄との会話めんどくさいね」

ヒトシ:「だから、親父にするように半分聞いて半分聞き流せ」

ミナミ:「あ……半分でいいんだ……」

ユキト:「だからさ、そういうのって本人いないところでする話だよな」

ヒトシ:「あれ?ユキ兄、いつからいたの?」

ミナミ:「ぜんぜん気付かなかった」

ユキト:「いやいやいや!さっきまで一緒に会話していたでしょ?」

ミナミ:「とりあえず、その芸人仲間の人たちにはもう研究の事、話さないで」

ユキト:「うん。わか……ん?ミナミぃ、俺は芸人じゃないぞ?役者っていったよね?」

ミナミ:「え?芸人でしょ?芸人目指してるって言ってなかった?」

ユキト:「こんな面白くもないふっつーの奴が芸人の訳ないだろ」

ミナミ:「はあ?寝言、言っているの?」

ヒトシ:「ユキ兄、起きろよ」

ユキト:「こんな目もぱっちり開いている状態で寝てるやついるかー!?」

ヒトシ:「あー。はいはい。寝てまちゅねー。起きてくださぁい」

ミナミ:「二人のやりとり見てたら芸人にしか見えないんだけど」

ヒトシ:「オレを巻き込むな」

ユキト:「『じんたん&ゆきあつ』悪かないな」

ヒトシ:「それの名前はアニメのファンに怒られると思う。てか、芸人でいいのかよ」

ユキト:「よかねえよ!」

<終>


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