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過去から未来に受け継がれたいもの/兎の中の人

以前、とあるところで司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ』を若い人は一度読んだ方がいいと聞き、そこまで若くはない私も読んでみることにした。

恥ずかしながら、私は司馬遼太郎さんの作品は『燃えよ剣』を一通り読んだ程度。
あとは映画で『関ケ原』を見たぐらいで、深く関わることがなかった。
この機会に少し真面目な本も手に取っておこうと軽い気持ちで読み始めたのである。

この作品自体は小学校の教科書用に書き下ろしされたものらしくとても短い文章で綴られていて、読むスピードが遅い私でも深く読み込まなければ数分で読めるものだ。
読んでみた感想をまず簡潔に言うと、確かに今こそ改めて読んでみるべき作品であると私は思う。

自然への驚異とウイルス

まず初めの部分で『20世紀は自然へのおそれが薄くなった時代』と記されていた。
21世紀の現在でも、まだおそれは薄かった部分はあったのではないだろうか。
現在の新型ウイルスという脅威は、自然に生まれたものか人工的に作られたかは厳密は分からないとは言え、自然への敬意が薄くなっていたのも一つの原因と言えなくはないと思う。

当たり前だったことが当たり前でなくなり、様々な情報に踊らされ委縮する人もいれば、ウイルスなどと軽く考えている人もいて考え方に関するトラブルすら起きる日々。
身近な場所で心無い言葉や意見の相違で争いが起こる場面にも遭遇し、落ち込んだ時期もあった。
こんな日々がずっと続くのかと思うと鬱々とならざる得ない。

ツラい時こそ人間の在り方を考える

だが、司馬遼太郎さんは後半部では人間の在り方を述べられていた。

『人へのいたわり』
『助け合いの大切さ』
『自己を確立するたくましさ』

歴史小説で出会った人物たちを書き、過去の出来事に触れながら感じたこと。
過去も現在も未来も変わらず、抱き続けたいものについて書かれていた。

4月、5月のような不安一色だった一時期よりは緩和されたとはいえ、まだ心が荒むような出来事は多い。
私自身もまだ夢を追う機会を逃しっぱなしでなかなか前進しているようには感じないのが現状だ。
自分だけでなく、多くの人が苦しい状況がまだ続いている。
生活ががらりと変わろうとしている今だからこそ、司馬遼太郎さんが記した過去から現在に受け継がれている人間の在り方を見直してみるべきなのかもしれない。

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