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「海パン」と少年。

8月の上旬、瀬戸内海の周防大島にある道の駅裏の堤防で、ぼんやり日没を眺めていたときのこと。少し離れた場所に、貸し自転車に乗った男子高校生と思われる3人のグループがやって来た。
おそらく地元の高校生ではないのだろう。最初のうちは「うわ、海が真っ赤」とか言いながら、みんながスマホで写真を撮っているようだった。

そのうち、その少年たちの誰かが、「いけね、海パン忘れてきた」と慌て始めるようすが、風に乗って聞こえてきた。「どうする?」「あそこまで戻るか?」「明日また行こうぜ」などなど。言葉は関東のイントネーションだった。
ところでそのとき、ふと思ったんだけど、「海パン」って言葉を今の少年たちも使うんですね。僕も子どもの頃は使っていたし、年上の世代も使っていました。

トレパンは絶滅したのに、海パンは生き残った。

次々と新しい技術が導入され、流行も目まぐるしく変わるスポーツウエアの世界において、何かほかの言葉が生まれていてもおかしくはない。しかし「海パン」だけは、昭和の体育の時代から生き残った希有な言葉かもしれない。「トレパン」はとっくに死語になり、運動靴はスニーカーとなった今も、海パンは生きていた。なんたって、略さず言えば「海水パンツ」というヘンな言葉ですよ。なのにプールで履いても海パン。とても生き残れそうな言葉とは思えないけれど。

僕が某フィットネスマガジンで原稿を書くときも「海パン」だった。スポンサーとのタイアップページでは「スイミングショーツ」なんて書くこともあったけど、誰もそんな言い方しませんよね。
「水着」という言い方もあります。でもなぜか、この言葉はレディス限定で使われていませんか? 男ものを「水着」と呼ぶのは、間違いではなくてもなぜかしっくり来ないのです。

などと、何の役にも立たないことを考えながら、見ていた日没はこちら。
昼間は35℃を越える猛暑でしたが、日が落ちた後の海風は涼しく爽やかでした。

さすが、瀬戸内海は実力あるなぁ。
ついでに、日が沈んだ後のようすも貼っておきます。

ということで、皆さん、これからも「海パン」をよろしくお願いします。

なお、周防大島は、僕が師と仰ぐ"旅のカリスマ”、民俗学者の宮本常一さんの出身地でもあります。ここは、実に学ぶべきことの多い島でした。単なる物見遊山の旅では飽き足らない人に、強くお勧めしたい旅行先です。
その話はいずれ、noteにもまとめておくつもりです。

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