見出し画像

鳥取県の山間にて、ほっこり。

遠くからわざわざ行くほどではないけれど、近くに行ったらぜひ寄ってみたい。そんな場所が多いほど、旅は楽しくなるように思います。毎年、稲刈りシーズンになると手伝いに出かけている岡山県美作市の棚田があるのだけど、この秋は雨が多かったので、農作業が無い日には少しクルマを運転して、岡山県と鳥取県の県境あたり、鳥取県の智頭町や若桜町をうろついてみました。このあたりには、一度見ておきたい建物がいくつか残されているからでした。

画像1

何より、いちど見ておきたかったのが若桜町にある国指定重要文化財の不動院岩屋堂。日本三大投入堂のひとつとのことで、洞窟の中に建てられたお堂が二棟並んでいます。創建は西暦806年。ご本尊は弘法大師が自ら彫ったと伝えられる不動明王像で、年に二回のご開帳があるという。

画像2

こんなにすごいものが、なぜこんなところに、というような山間に、ひっそりと佇んでいます。このお堂が人気の観光地にあればゆっくり見ていられないかもしれないけど、ここでは眺め放題。ただし、普段は中に入れないので念のため。

鉄道駅が町の中心にある。

そして、ここは鉄道の町でもある。若桜鉄道起点の町として、駅が町の中心にあり、とても大切にされています。駅が好きな僕としては、とてもうれしい。鉄道があるところには旧街道もある場合が多く、ここでも蔵の並んだ旧街道が、今でも生活道路として大切に使われています。

画像3
画像4

まずは何よりも、町の中心にある若桜鉄道の若桜駅。今年の3月、この通りの内装にリニューアルされました。小さな駅の中にはカフェがあり、読書室もあります。デザインはJR九州の『ななつ星』のデザインチームが手がけたとのこと。このデザインには賛否あるようですが、このような山間の町で、駅を大切にしようという心意気は伝わってきます。

画像5

続いての駅は若桜鉄道の安倍駅。無人駅なのに、なんと美容院が入っていて、切符の販売なども行っている。駅ができたのは昭和7年で、この駅舎も待合室も、開業当時のまま使われている。とは言え、ただ古いだけではなく、いずれの駅も清潔で居心地がいい。もともと林業が盛んな土地柄からか、鳥取県のこの辺りには大きな家が多く、豊かな印象を受ける。無人駅が清潔だということは、住んでいる人たちの心が豊かなのだよ、という僕の持論を、そのまま証明してくれるような地域なのだった。

なんとも贅沢な小学校。

そしてもう一カ所。いずれ見に行きたいと思っていた建物が、鳥取県八頭郡智頭町立旧山形小学校。全長81mの廊下が壮観です。日本一の長さなのかと思ったら、愛媛県に83mの廊下を誇る小学校があるらしい。山間の狭い土地に建てられたため、このように長い校舎にならざるを得なかったとのこと。

画像6
画像7

天井の杉材は節のない部分を選び、船底型に組まれている。こうすることによって、天井が高く、広く感じられる。林業が盛んな土地ならではの贅沢な校舎。智頭町内小学校の統廃合により、残念ながら平成24年3月31日に閉校されているものの、現在はこのように利用されています。


ついでと言わず、この町には一泊してみたい。

以上、岩屋堂も若桜鉄道の駅も旧山形小学校も、全部まとめてクルマで半日で回れる範囲にありました。しかもそこは鳥取。梨だけではなく、美味しそうな果物もたくさん並んでいます。
旅は移動を楽しむ行為でもあるけれど、同時に時空を移動する楽しみもある。その点で、ここは古いものと新しいものが自然に混在した、とても居心地のいい地域でした。

画像9


弘法大師の時代から、昭和初期の駅舎や小学校まで。そこで過ごした人たちにもう会うことはできないけれど、彼らが同じ山を眺めて何を思っていたのか、などなど、昔話を勝手に想像するには充分の場所です。道を歩いているお年寄りに、林業が盛んだった頃の話のひとつも聞きたくなる。
昔からあるものを大切にしていたら、いつの間にかこういう町ができあがった、という印象。なぜか観光地とは呼びたくない、普通にいい町。

もちろんそのための努力はあるのだろうけど、こういう地域は、まだまだ日本中にあるんだろうと思います。ご存じでしたら教えてください。これからは、こういうところにこそ、わざわざ”観光”に行きたいと思うのでした。

画像10


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?