Xデザイン学校ユーザーリサーチコース振り返り
🗓こちらはResearch Advent Calendar2023の10日目の記事です🎉
こんにちは!IT系の事業会社でUXリサーチをしているOMです。
私は2017年からUXリサーチを専任でやり始めたのですが、その前から開発をしながらユーザビリティテストやインタビューを行っていました。おおよそ2012年ごろの話になります。ということで、なんとUXリサーチを始めて10年を超えてしまいました!10年?!
今まで、ユーザビリティ評価について、エキスパートレビューについて、インタビュー調査について、それぞれ自分なりに学び、業務に活かしてきたなぁとの実感があります。そこの中で、私があまりちゃんと(?)学んでいなかった分野がありました。
その分野とはフィールドワーク(現地に赴いての観察)です。
今年の秋、ユーザーリサーチにおけるフィールドワークを学ぶ機会をみつけ、Xデザイン学校のユーザーリサーチコースを申し込みました。
この記事では、この講座を振り返り、感じたことを残しておこうと思います。
🏫Xデザイン学校とは?
Xデザイン学校とは、社会人向けのデザインの学校です。デザインといっても、デザインツールの使い方や表層的なデコレーションについて学ぶ学校ではありません。
春開講コースと秋開講コースの2シーズンあり、私が申し込んだのは秋開講の『ユーザーリサーチコース』。もう一つあったリサーチ系コースに『UXリサーチコース』もありましたが、わたしはフィールドワークを学びたいと決めていたので、ユーザーリサーチコースを選択しました。
✏️ユーザーリサーチコースを受講してみて
全5回という短いコースでしたが、とても多くのことを学べたと思います。ここでは、その中でも私が特に忘れたくないな、と思ったことを4つ書き留めておこうと思います。
😃実は”似ていることをやっていた”
当時の私は『フィールドワークについて、知識はあるけど実践がない』という状況でした。自分でやってみようにも「合っているかわからない」となりそうだったので、今まで実践は避けていた、というのが正直なところです。
今回、実際に現地に赴きフィールドワークしてみたり、先生からのフィードバックをいただくうちに『あれ?何かこの感覚って知ってるな?』と感じていきました。
何で知っていると思ったんだろう?何と似ていると感じたんだろう?と考えて気づいたのは、『フィールドワークしている時の感覚は、ユーザビリティテストをしている時や、利用者の方から実際のサービスの使い方を教えていただいている時とすごく似ている』ということでした。
この『今まで自分がやってきたことの中で、似ていることがある』と気づけたことが、フィールドワークへの理解が深まった気がします。
それまでは、フィールドワーク(現地に赴いての観察)って、すごく特殊なことをやっているんだと思っていたんです。だけどそうじゃないんだと、気づけたこと。なかでも『ユーザビリティテストって、利用者がサービスを使っている時の観察か』と気づけたことで、いままで『フィールドワークってどう実務に活かせるんだろう』とモヤモヤしていたことが一気に晴れて、フィールドワークの使い所や目の付け所が見えてきた気がしました。
いつもやっている『ユーザビリティテスト』を『サービスの中でも特定機能を利用しているところの観察をベースにインタビューしている』と捉え直してみた、といえるかもしれません。
今回のユーザーリサーチコースの中では、実店舗で買い物している方のフィールドワークを行いました。私が日常的に行っているのが、オンラインでなおかつスマホやPCで提供しているサービスのUXリサーチがほとんどなので、オンラインとオフラインというだけでも、かなりの変化になります。
例えば
オンラインからオフラインになることで、観察する対象がめちゃめちゃ増えた。観察対象に影響を与える要因も多く認識できるようになった。
画面の中の観察から日常行動の観察になることで、観察する範囲も領域ものすごく広がった。
などなど、私が業務で行っている観察と比較することで、フィールドワークをする際に気をつけるべきところや気にしておくべきことなど意識できたと思います。
❤️🔥フィールドワークで意識したこと
何度か実際にオフラインでのフィールドワーク行い、オンラインでの観察との違いを体験し、これは気をつけなければならないと感じたことがいくつか出てきました。その中でも、特に気にかけるようになっていたのは次のようなことです。
観察対象は、人だけではなく環境も含める
オフラインとオンラインでものすごく違うなと思ったことの一つが、環境まで感じることができることでした。見えるものや耳に入るものは格段に多くなりますし、どんな匂いがするかだったり、気温、人の気配や空気感などなど、オンラインでは感じとれなかったいろんな情報が入ってきます。こういったことも観察のひとつとして捉えることで、情景が思い出しやすくなるというか、観察状況を思い出した時に色鮮やかに蘇ってくるような気がしています。
可能な限り、場に溶け込む
観察をする自分がいることで、フィールドワークする場に影響を与えかねないなと思い、場に影響を与えないような立ち振る舞いを心がけました。こういう立ち振る舞いをするためには「フィールドワークするその場の人」を観察せざるをえなくなるので、一石二鳥かも?と思ったりしました。
観察した人と、同じことをやってみる
これは、オンラインのユーザビリティテストでもよくやるのですが、その人がやったことと全く同じことを自分でもやってみたりしていました(もちろん、対象者が帰った後ですが)。そうしたことで、その人には何が見えていたのか、自分で観察しきれなかったことはなんなのか、身を持って体験することができたと思います。
🤔より多くのことを気付ける観察をするには?
フィールドワークでもユーザビリティテストでも、慣れていないと『何も見つけられなかった!』みたいなことになるのは、割とよくあるのかなと思います。
今回、フィールドワークを体験してみて、ユーザビリティテスト初心者だった時の『何も見つけられない感』というのを久しぶりに感じました。
まず思ったのは「一回フィールドワークやってみただけじゃ何もわかんないな」ということです。
私はユーザビリティテストではいろんなことに気づけていると思っているのですが、どうしてフィールドワークではこんなに気づけないのにユーザビリティテストだといろんなことに気づけるのだろうかと考えた時、今まで観察してきたユーザビリティテストとの比較をしているのではないだろうかと考えました。今までの人とはこことが違うな、だけどここは同じだ、とか、違うこと・同じことを見つけていくことが、気づきにつながるのでは?と思い、それであれば、フィールドワークも数を重ねて比較する対象を増やしていけばいいと考え、可能な限り実践してみました。
次に思ったことは、「現実にあったこと」と「自分が感じたこと」を分けて認識すること。そしてそれを「人に伝わるように言葉にする」ことの重要さです。私がフロントエンドエンジニアからUXリサーチャーにジョブチェンジにした際に痛感したことを、再び意識することになりました。
「この人は商品を選ぶのに迷っている」と思ったとします。そう思ったのはどうしてでしょう?伝えられなければ説得力がありません。
「洗濯洗剤の棚の前で腕を組んで商品を眺めている。商品を手に取ってパッケージをあたらめてみたり裏返して説明を読んでいる。2,3別の商品を手にとって同じように裏面も読んでいたが、結局どの商品も手に取らず、ボディソープのコーナーに移動していった。」かもしれませんし、「洗濯洗剤の棚の前でスマホを片手に商品を眺めている。黄色い価格表(特売商品)の値札に指を這わせ、100gあたりの単価を確認。その後スマホを取りだしスマホ画面と店頭の値札を見比べ、商品は手に取らずに店を出た。」なのかもしれません。状況をより詳細に紡ぐことができれば、ただ「商品を選ぶのに迷っている」だけではないことも、同じプロジェクトメンバーに伝えられます。
それに、私の場合、『自分が思ったこと』というのが、単純な言葉として出てきがちです。だけど、この単純さは、伝わりやすい一方で質的な調査で得られたかけがえのない情報を全て削ぎ落としてしまった状態であることがほとんどです。それはあまりにも勿体無い。ふと思ったことに対しても「なぜそう思ったのだろう」と改めて状況を見直してみる。こういったことも、意識して行うことは、フィールドワークをする中では特に重要なのでは?と思いました。
一回観察しただけでは気付けることはものすごく少ない。観察対象同士を比べることで、多くの気づきに繋がりそうだ。
自分が思ったことを「どこからそう感じとった」のか「観察内容で」説明できるようにする。説得力も増し、意見交換にもつながる。
こういうことをやっていくと、「とりあえず関係ないかもしれないけど、メモに残しておくか」という内容がどんどん増えていくと思います。この辺りはオンラインでのユーザビリティテストと同じだと感じました。無駄かもと思うことでも残しておく、それが次に観察する時の内容に追加されて、より多くのことに気づくことができるようになる、との仕組みなのかなと思っています。
🔥段階を意識することの重要さ
観察後の分析の過程では、かなり丁寧に一つ一つの工程を実践したと思います。十分に時間をかけることはできませんでしたが、いつもの業務では急足で通り過ぎてしまうようなところも「この工程ではこういったことをやるのだ」と意識して分析していくことができました。その中で、もしかしてこの「意識する」ということが、とても重要なのではないかと感じました。
長くも短い「分析」という工程の中で、「意識して物事を進める」ということは、分析の工程の中に『立ち戻ることができるセーブポイント』を作っているようなものだな、と感じました。
セーブポイントがなければ、最初からやり直しです。
分析のどの部分が甘かったのか振り返ることができません。それぞれの工程を意識していれば「ここが足りないな」とか「ここをもうちょっと丁寧にやってみよう」とか、立ち戻る時の目星がつけやすくなります。
私は、業務を行っていると、効率化、自動化、と費用対効果ばりのコスパばかりに、目が行きがちになってしまうのですが、そこで見落としている部分はとても多くあるのではないか、と恐ろしくなり、また、反省もしました。
私はプロのUXリサーチャーとして、各工程の意味や役割を把握し、今回重要視しなければいけないのはどこなのか、今回は軽めに済ませても良い部分はどこなのか、と、その時々に応じて見極めていかなければならないなと、強く感じました。
ここを意識するためにも、私の今後しばらくの目標は『丁寧なUXリサーチ』(多少スピードは落ちてもよし)になりました。
🙌おわりに
今回、私は、この講座でゴリゴリにフィールドワークを身につけてやろうと思っていたので、かなり前のめりに参加していたと思います。たぶん、学びというよりも、獲得してやろうみたいな気持ちだったのではないかと思ってます。
私はどちらかというと、業務の中で自分の至らなさに気づき、その部分の質を上げたり知識を補充するために行動していくことが多いです。いうなれば、追い込まれないと行動しないようなタイプなので、自分のエンジンがかかりやすい状況を知っておくことが、私の中ではとても重要です。
今回は、エンジンもうまくかかって、良い状況の中、学ぶことができたと思います。同じチームの皆さんもありがとうございました!
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