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風鈴の音がした。

風鈴の音がした。

寝入りばなに季節外れの音が響き、気になりだすと眠れない。
誰かがしまい忘れたのだろう。
今まで気にしたこともなかったのだが、引っ越し準備が重なって
疲れているのかもしれない。

あまり耳につくので起きて窓を開け、音の出所を探った。
暗くてよくわからないが、斜め下の部屋のようだ。
明日文句言ってやる。

あまり耳につくので起きて窓を開け、音の出所を探った。
暗くてよくわからないが、斜め上の部屋のようだ。
明日文句言ってやる。

あまり耳につくので起きて窓を開け、音の出所を探った。
暗くてよくわからないが、真下の部屋のようだ。
明日文句言ってやる。

翌朝台所に立つ妻に愚痴をこぼした。
「そんなわけで全然眠れなかったんだよ。」

「あら、今日の我が家の引っ越しで、このマンションは空っぽよ?
 もうだれも住んでないし、そんな音聞こえなかったわよ。」
「そんなはずは。。確かにうるさいくらいに鳴ってたんだよ。」
「う~ん、センサー系か情報処理系に問題が起きたのかしら。。
 結構古い型だし、急な環境の変化は適応が難しいかしらね。。
 愛着はあるけどやっぱりここは思い切って。。?」

ふむ?という顔でちらりと私の右耳たぶに視線を送る妻。
私の耳たぶに、記号のような模様があることは知っていた。
ほくろか痣のようなものだと、今までは思っていた。
だが。。

訳もなく膨れ上がる不安と共に、私はじっと「妻」を見つめた。

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拙いお話で恐縮です。
みんなのギャラリーで見かけた1枚の風鈴の写真から、
こんなショートショートを思い描いてみました。

生まれて初めてのショートショートなので、どうぞ読み飛ばしてください。
「ノックの音がした」で始まる名作と星新一へのリスペクトでもあります。
写真は、風鈴がなかったので昨年の秋の紅葉を引っ張り出しましたが、
見事に季節はずれでしたね。まあいいか。

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