掘り出し物
「俺の事書いて」
久しぶりに連絡が来た。
中学時代の友達からだった。
そうは言っても、最後にそいつと連絡を取ったのは、4ヶ月ほど前。
僕が彼の誕生日に真っ先に電話して、彼が恋人や意中の相手と連絡を取り合う可能性を潰すための電波ジャックを決行した、あの日以来。
自分で書いておいて言うのもおかしいが、電話をかけた動機が醜い。
ここに、僕の人間としての器のサイズが表れていると思う。
それはさておき、彼のリクエストに答えるべく、僕はネタを掘り起こす作業に入った。
中学までの思い出で書けるだろうか。
とりあえずやってみよう。
まずそいつと話すようになったのは、幼稚園の頃のこと。
「幼稚園の頃の友情」と聞くと、微笑ましい関係を思い浮かべるかもしれない。
しかし僕らの関係はちょっと特殊だった。
まず、僕らは顔を見合わせるたびに何かしら喧嘩を吹っ掛けた。
「なんだ、今日も来やがって」
「そっちこそ、まだ生きてやがったのか」
こんな江戸っ子のようなやりとりを、もう少し優しい言葉遣いと、たどたどしい口調でやりあう。
しかもそれを、母親に抱かれながらやるのだから、世界観はめちゃくちゃである。
それから同じ小学校に進んで、しばらくは同じクラスになることがなかったが、小学5年生の時に同じクラスになった。
ここからは、本当に楽しい毎日だった。
滅多に訪れない、給食ではなくお弁当を持参する日。
そんな日は必ず、そいつを含めた5、6人で集まった。
1人の先生に詰め寄り、教員用に発注された「生姜焼き弁当」の生姜焼きを食わせろ、とねだるのだ。
食べさせてくれるまで粘るので、先生の弁当箱にはいつもご飯とキャベツしか残っていなかった。
今なら、生姜焼き弁当の生姜焼きを奪うということがどれほど重罪なのか理解できる。
あの先生には、申し訳ないことをした。
それから中学校に入学すると、彼はバスケ部に入った。
少年野球を4年間や利、中学で野球部に入った僕からしたら、未経験の部活(しかもだいぶ本格的で厳しい)に入るその勇気は純粋にすごいと思う。
しかも、キャプテンまで務めた。
小学校の算数の授業中、教室の後ろでプロレスごっこをしながら
「ひねりつぶしてやるー!」
と叫んだら
「じゃあ、俺のことも捻り潰せるのか?」
とたまたま廊下を歩いていた、学校で1、2を争うほど怖い先生に見つかって、マジで捻り潰されるくらいの勢いで怒られていた彼が。
(僕はその場にいなくて、のちに本人談でそれを知って腹がちぎれるほど笑った。)
中学校に入学して早々、水道の蛇口を引っこ抜いて慌てふためいていたあの彼が。
一度試合を見に行ったが、普段の彼とは全く違う、背番号4番がコートで必死にプレーしていた。
大学生になった今でも、バスケは続けているらしい。
またいつか、試合を見に行きたいと思う。
書けるか不安だったけど、めちゃくちゃ書けた。
昔のことだけで、全然書けた。
そのくらい、魅力的なやつなんだと思う。
とはいえ昔のことばかり書くのも味気ないので、そろそろ会って話がしたいなぁ。
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