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想い出の角砂糖

Mr. Children の himawari の曲中に出てくる歌詞。

想い出の角砂糖。

どういう人生を歩んで、どういう脳のシワが刻まれたらこんなワードが出てくるのか。
嫉妬の炎で焼けるくらい好きな詞だ。

想い出の角砂糖は、過去のうちのたった数パーセントしかない、甘い部分を固めて作る。
だからそのまま舐めるには甘すぎる。眩暈がするほどに。

今までの道のりのその全てを、角砂糖の成分に使えたわけじゃない。
甘味とは対極にある時間も、過ごしてきた。

だけど最後は甘くなるように。
できるだけ大きくなるように。
どんな苦味も中和できる、そんな角砂糖ができあがると思っていた。


しかし、完成は思っているより早く、そして予期せぬタイミングで訪れた。


それと一緒に差し出された珈琲は、そんな角砂糖じゃ太刀打ちできないほど黒く、酸っぱく、苦い。

こんなものに溶かしたところで、抗いようのない苦味は舌から離れてくれないだろう。


だからこっちの角砂糖は、瓶にでも入れて取っておくよ。


いつ使うかわからないけど、これから先に直面する、少しだけ耐えがたい苦味の珈琲を飲む時のために。

いつか、この角砂糖があって良かったと思えるように。
これを作った時間が、大切だったと胸を張れるように。


それは僕が人生で作り上げた数々の角砂糖の、ほんの一部にしかならないくらい、遠い先の話かもしれないけれど。


その時のために、今は顔をしかめながら、苦い珈琲を啜ることにする。


我儘を言うのであれば、貴方にとってもこの角砂糖が、甘いものであってくれたらと想う。


今日も、Mr. Children の曲はいい。
いつ聴いても、やっぱりいい。

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