みんなの学校PJtee-01

0限目 学校をつくろう

「学校をつくろうと思って」

そんな話を聞かされたのは、茨城県稲敷市に来てもうすぐ2年が経とうという頃。「地域おこし協力隊」としてこの稲敷市に身を置き、まちづくり活動に精を出していた最中のことだった。

いつ、どのタイミングでその話を耳にしたのか、詳しくはよく憶えていない。主に精神障害を抱える人たちの暮らしと仕事をサポートするNPO法人SMSC、その代表はーーセンシティブな事業内容とは対照的なほど、当時稲敷地域のさまざまなところでその姿を確認できた。

わたしが主導していた「空き家再生プロジェクト」で古民家再生を行っていた現場に、地域の事業者が集まる商工会関連の集まりに、顔を出しては冒頭の言葉を発していたのだった。また、霞ヶ浦のほとりにあるSMSCの小さな事業所では不定期で「村会議」なる地域感度の高い人たちの集う談話会が開かれていた。そこでもやはり中心で「学校を活用して、そこを拠点に地域福祉を変える」と話していたのがSMSCの代表である根本敏宏という人だった。

常日頃まちづくりや地域活性化について考えていたわたしは、彼の言葉がずっと気になっていた。学校を拠点とする場づくりについて、そこで行われる「福祉」の事業について、その結果もたらされるであろう地域への影響について。

まだ詳しいことは何もイメージできていない中で、彼の話す地域づくりはこれまでわたしたちが行ってきた事業とは本質的に異なるであろうことだけは理解できた。地域おこしに携われば携わるほど身を持って知る「社会問題」「地域課題」。これらの諸課題と地域はどう付き合っていくのが良いか。「賑わい創出」や「人口獲得」というカタチだけの虚しいまちおこしでは解決されない、芯を捉えたようなアプローチはどう生み出していくべきなのか…

日々消耗するようなイベント運営や地域情報の発信を行う傍ら、「学校をつくろう」という言葉だけがいつまでも脳裏をよぎって離れなかった。

これは、わたしがNPO法人SMSCに参画して広報室を立ち上げる、ほんの少しだけ前の話。

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NPO法人SMSCが考える新しい地域福祉のカタチ、それが「みんなの学校プロジェクト」です。

特に若い世代。自分たちが住んでいる町が限界集落になってしまったら、高齢になってきた時にかなり不便になる。老後の不安も増えてしまうだろう。
それに、帰るべき地元がなくなってしまうというのは、みんな寂しいことだと思うんだ。
だからみんなで考えて、解決していきたいと考えている。
これから行うみんなの学校プロジェクトは、地域の拠点になる高齢・障害・児童を含めた総合的な福祉サービス事業と地域の交流事業を行っていく予定。
この拠点では、高齢や障害、児童や地域の方が様々な形で出会うきっかけを作ります。
これまで関わることがなかった方々が出会い、相互理解を深め、他人が抱える生きづらさをジブンゴトに変える仕組みを提供します。
そして、地域×福祉の化学変化により、地域課題を地域の人たちで解決し、誰にとってもまちが安心できる場所に変えていくことが目的です。
多くの方が安心して過ごせる地域社会の実現を目指して。

地域に生きるさまざまな人たちが、それぞれのライフイベントのたびに訪れる場所。

そこで交錯する人と人とのすれ違いから互いの異なりを知り、お互いの生きづらさをお互いの力で解決し合う場所を運営していきます。

「福祉」という既存の枠を越えながら、地域住民や行政、さまざまな業界の人たちと「地域」をテーマにつながる事業。

これまでも多くの難所があり、これから立ち上げに向けてさらなる山が待ち受けていると思われます。

わたしたちの行く道が「地域福祉」を変えていくものだと信じて、この軌跡を記録していきます。


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