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食を求める旅

静岡で食べた生の桜エビのかき揚げをふと思い出し、食べたくなることがある。町のなかにぽつんとある普通の蕎麦屋だったが、生の桜エビを食べたことがなかった私は、美味しすぎて夢中になって食べた。一口頬張った時のサクサク感に驚き、噛むごとに生の桜エビの香りが口いっぱいにひろがる。静岡へ行ったからこそ出会えた味だった。

鍾庵 生桜エビのかき揚げ丼とお蕎麦のセット


旅先の景色に感動した記憶も、もちろんある。あるのだが、食べ物の記憶は何故か強く残っている。特に今までに出会ったことのなかった食材や味が、自分の味覚にヒットした時の衝撃は忘れられない。

人間は、聴覚ー視覚ー触覚ー味覚ー嗅覚の順で忘れていくそうだ。嗅覚と味覚は記憶に残りやすい、ということ。記憶に深く刻むことのできる、新たな食との出会いを求める旅をしてみてはいかがだろうか。

レストランへ行くことだけが、現地の味を知る全てではない


私が旅の中で1番ワクワクするのは、スーパーや市場へ行くこと。現地でとれた新鮮な食材や、そこにしかない調味料を買い、ホテルで料理をする。これも現地の味を知ることになる。同じ食材でも日本で食べているものと違うことがあり、面白い。

実際、ハワイへ行った時は、到着した日にスーパーに行き、パパイヤを山ほど買う。毎朝食べられるよう、熟れ加減の違うパパイヤを選ぶ。日本では見たことのないほどの大きさの束になって売られているクレソンも買い、心行くまで毎日食べる。どちらも大好物だが、日本ではお高くてあまり手を出せないので、ここぞとばかりに食べ溜めておく。
私流のハワイの楽しみ方だ。

大好きなパパイヤとアップルバナナ


旅行プランは、食事から


旅先を決めるとき、どんな情報に心をつかまれているのだろうか。絶景の綺麗さや、アクティビティ、街の雰囲気など、人によってさまざま。私が心を奪われて旅行を決めるのは、魅力的な食べ物を知ったとき。昨年行ったスペインがまさにそうだった。

母が「死ぬまでに行ってみたい」と、スペインのバルセロナへ行ったのだが、私はガウディーも建築物も興味が無い。そこで母の誘い文句は「スペインに生ハムを食べに行こう。」だった。興味をそそられた。本場の生ハムが食べたくて、母とのスペイン旅行を決めた。

観光は母の行きたいところへ、私はお腹をすかせるための運動ついでに観光。もちろん建築を見て感動した場所もあった。そこまで無関心なわけではないんだけれど、今までの旅行の中で、食と食以外への興味の差がもっとも大きい旅行だった。

バルセロナにはいくつか市場があり、お店がところせましと並んでいる。お目当てはもちろん「生ハム」。種類が多すぎてどれを買えばいいのかかなり迷ったが、3種類ほど購入しホテルへ帰り、いざ実食。今まで食べたどんな生ハムより濃厚で美味しかった。やっぱり本場ってすごい。


デパートのようなちょっといいお値段のスーパーから、地元の人しかいないスーパーなど色々回った。あるスーパーへ行ったときにふと目に入った、豚レバーのペースト。お土産で買いたいから、とりあえず試しに食べてみよう。軽い気持ちで購入し、ホテルで食べてみる。

美味しすぎてフリーズ。

レバーの旨味だけを残して臭みが全くない。いくらでも食べられる。私の味覚にヒットした衝撃を感じた。スペインまで来て良かったと思わせてくれる味だった。


左 豚レバーペーストの胡椒風味
右 アリオリソース(マヨネーズにニンニクなどを混ぜたソース)


高級レストランのお洒落な料理よりも、スーパーで買った500円のレバーペーストの方が記憶に残るんだから、面白い。レバーペーストを買うためだけにスペインへ行きたい、と思うほどの素晴らしい出会いだった。

これが食べたいからまた来たい、と思えるような味との出会いを、ぜひあなたにも体験してみてほしい。


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