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ちょうどいいベンチでしかうまれない言葉がある

髪を切ってもらった。頭が軽くなったような気がして、我ながら単純だなと思う。考え込むと、ろくな考えには至らない。美容師さんとはもう6年くらいの付き合いになる。
ぬるっと入店したものだから、「猫みたいに入ってきたね」と言われる。いつもはどこかのお店に入るのにも緊張してしまうので、そんなふうに入れる貴重な場所だなと思ってうれしくなる。再婚したという話を一番に聞かせてくれた。「お互いいろいろありましたね」と言葉を尽くさなくても気持ちを通わせられるのがまたうれしい。ぼちぼちやっていきましょうよと労い合う。美容室は、そんな定点観測の場だなと思う。
なんとなくいつもと違う駅から帰ってみる。歩いているとちょうどいいベンチをみつけて、ふと座り込んで日記を書く。空がグラデーションになって暮れていく。春の風で道端の菜の花が揺れる。少し寒い。また立ち上がって、家に帰る。

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