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オリンピックで印象に残ったパントマイムというジャンル #22

この記事を書いているのが2021年8月27日
東京オリンピックは無事に閉幕し、現在パラリンピックが開催中です

今回のオリンピック及びパラリンピックにはパントマイムアーティストの方々が多数関わっているのはご存じでしょうか

オリンピックの開会式は随分と話題になっていたので、目にした方も多いのではないかと思います

開会式で話題を呼んだ「ピクトグラム50個の連続パフォーマンス」

こちらを演じられたのは
モヒカンヘアーで一世を風靡した「が〜まるちょば」のHIRO-PONさんと、パントマイムとアクロバットのデュオ「GABEZ(ガベジ)」のMASAさんとhitoshiさんでした。

そしてそして
東京パラリンピックの開会式で「片翼の小さな飛行機」に出演し演じられたのは、マイム俳優のいいむろなおきさん


どちらの方々も世界中でパフォーマンスを披露して来られた、業界限らず有名な方です。今年の夏はこのような世界中で注目された最も大きな催しにて、素晴らし作品を披露して下さいました。

しかし、オリンピックとパラリンピック
双方ともになぜパントマイムのアーティストがピックアップされたのでしょうか。自分が感じたことをいくつかまとめてみました。

オリンピックに求められるパントマイムの要素

どのような点がオリンピックの式典と相性が良かったのか
いくつかまとめてみました

1:ノンバーバルである
2:普遍的である
3:エンタメの幅が広い
4:テーマや物語を楽しめる

上記の点が、このような大きな催しにおいても必要とされた要素なのではないかと考えます。それぞれについてもう少し深堀りしてみましょう。

1:ノンバーバルである
オリンピックやパラリンピックというイベントは世界規模の催しとなります。当然ながら視聴されているのは世界中の方々です。
そうなると、言語や文字、またそれらの文化的な背景に頼った演出の比率は自ずと小さくなるでしょう。

《視覚的に楽しめて、理解出来る》これが重要なポイント。
ダンスやその他のパフォーマンスも視覚的に楽しめるショーではありますが、2つ目の要素である、言葉を用いずともメッセージが理解できる作品も必要となってきます。言葉を用いずとも感情や物語を表現出来るパントマイムは、ノンバーバルにおいて有用なジャンルであったと言えます。

2:普遍的である
次に必要な要素が普遍的であるということです。
時代や文化を問わずに共感できる作品かどうか。見ている人が国も文化も年代も性別も違う中で、共通に感動でき心動かされる作品でなければなりません。

当然そうなると流行り物や何かのパロディは用いることができない。
しかし、パントマイムの表現は喜怒哀楽のような人類共通の感情、そしてそれを見ている人が理解出来るように形作って行きます。
元々世界でパフォーマンスをしてきている人達であり、国籍や文化問わず伝わるように創作するプロフェッショナルな方々です。このような国際的な場面においても、世界共通の笑いやエンタメを知っているからこそ、誰もが理解し楽しむことが出来る作品へと昇華することができたのだと思います。

3:エンタメの幅が広い
エンタメにおける要素は《笑い、驚き、泣き》の3つ。
このように自分は考えていますが、このどの方向性でも創作できるのがパントマイム表現の良いところです。
「ピクトグラム」は驚きと笑いを形にし、「片翼の小さな飛行機」は、泣きというと安っぽい言い方になりますが、一人の少女の姿と歩んできた人生、そして、大きく広がる未来に心動かされ涙腺に訴える物語でしたね。
あらゆる角度からでも創作ができるからこそ、パントマイムはその場に求められているエンタメの方向性へアプローチが出来る。これも一つの特色であったと感じます。

4:テーマや物語を楽しめる
最後に、これらの上記の要素を用いたまま、一つの物語として構成出来るというのがやはり強みなのだろうと感じます。

「ピクトグラム」はパフォーマンス寄りですが、それでも技を魅せるということではなく、世界中へ向けた生放送の中で、失敗の許されない中、曲のカウントに合わせてシルエットを形作っていくパフォーマーの姿。そこにこそ人が発するエネルギーと魅力が詰まっていました。

これだけのパフォーマンスを完成させるのに、どれだけの練習をしたのだろう。そう考えさえたり、必死であるが故にクスッと笑えてしまう。そのようなアナログなところに魅了され、心動かされたのではないでしょうか。

また、パラリンピックの「片翼の小さな飛行機」も勿論一つの物語。
比喩的な表現の中に、人が持つ希望や葛藤のドラマが想像できる。
そういったある意味での抽象的なメッセージは、他のエンタメでは感じ辛いことがあります。

抽象的でありながらもシンプルだからこそ理解でき、心に訴えてくる演出。再現ドラマや映画のように完全に具体的ではないからこそ、見えていない余白の部分に感じられる人生の軌跡が、パントマイムならではの物語の提示に繋がるのです。

世界で戦えるパントマイム

パントマイムの競技人口は決して多くはありません。
学べる環境が限られていることもありますが、他のスポーツや芸能などに比べて圧倒的な成果をあげている方が少ないからでしょう。

誰かが「将来この人みたいになりたい!」と思わされる場面に出会えるシーンが少ないのですね。

だからこそ、こうして世界を代表する催しである、オリンピックやパラリンピックの中で役割があったこと、これはこの業界として素晴らしいキッカケだったのではないかと思います。

でも、残念なことに、パントマイムをやりたいという人の背中を押すコンテンツはインターネット上に少ないんです。(ちゃんとした情報源は、5つくらいしかありません)
そんな状態を改善するために、パントマイムに関するコンテンツを日々これからも増やしていきたい。
もし、気になったら過去の記事パントマイムパーソナルレッスンで一歩踏み出してみてください。オンラインで学ぶなら、このブログの添削もして下さっている、しもとりさんのパントマイムの無対象の教科書もおすすめです。

始めるキッカケ

自分が自己紹介で最初に記したように、パントマイムを始めたキッカケはラーメンズの小林賢太郎さんでした。色々と問題となり、開会式の演出家としては出演することが出来ませんでしたが、小林賢太郎さんもパンマイム的な表現においては第一人者です。

元々演出家として実績もあり、またこの様な場においての表現
つまりパントマイム的なアプローチ、ノンバーバルでの魅力的な演出を期待されてのキャスティングであったと自分は思っています。

沢山の偉大なアスリートの姿を見て、そのスポーツに興味を持ち、自分もやってみたいと思った子たちが沢山生まれたはず。
それと同じ様に、この開会式を観た人達が、パントマイムに初めてみたいなと思ったかもしれません。

こういった大きな役割、そしてそこで見せた圧倒的な表現や作品を見て、どこかの誰かの心の中に小さな種を植え付けたかもしれない。
いつかその芽が出たときにまた、業界というのは盛り上がり、新たな世代を生み出していくものではないかと思っています。

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