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世界海洋デー

日本サステイナブル・レストラン協会アドバイザーを務められている生江 史伸シェフが6月8日、ニューヨークの国連総本部で行われた、「世界海洋デー」の中で5分のスピーチをされました。

日本サステイナブル・レストラン協会 FMG Lead Ambassador を務めさせている料理研究家スマイリーとしても生江シェフの活動はまさに誉れといえ今後の活動においても目がはなせません。

【生江 史伸プロフィール】
1973年横浜生まれ。大学の政治学科卒業後、イタリア料理店を経て、北海道ミシェルブラストーヤジャポン、英国ザ・ファットダックで二番手シェフを務め、2010年東京レフェルヴェソンスを開店。ミシュラン二つ星、アジアベスト50レストランで「サステナブルレストラン賞」を受賞。

■日本サステイナブル・レストラン協会
公式ウェブサイト
https://foodmadegood.jp/

6月8日、ニューヨークの国連総本部で行われた、「世界海洋デー」の中で5分のスピーチ

https://unworldoceansday.org/un-world-oceans-day-2022/

食のよろこびは、世界の環境と繋がっていることを再認識する(しなければならない)時代に私たちはいます。

国連スタッフからは事前に、「料理人/レストラン/外食産業としての役割を話してほしい」とのリクエストをいただいており、私たちの産業分野がどんな声を上げて、どのような行動をとることができるのか、そういうことを盛り込んでお話をしてまいりました。

今年のテーマは『 再生:海のための共同アクション 』

壇上で冒頭シルビア・アール博士💙が
「『再生』は、海の再生よりむしろ、人間の海に対する意識の再生だ」を定義づけられていましたが、自分もまさにその通りだと思ってきました。

野菜や果物を知るために農園や果樹園に行く人は、ひと昔前にくらべると嬉しいことに増えましたが、
魚や貝類、海藻類を知るために海へ向かう人は、あまり増えていないような気がします。

日本は世界の中で6番目に長い海岸線を持つ国です。
それぞれの場所で、ちょっと海の中をのぞいてみると、信じられないような楽しい発見が必ずあります。

そういったお話しをしようと、ご指名をいただいたときから考えていました。

海に関する世界的な問題を、日本・アジアの目線で話す、フードシステムの中継ぎの役割を伝える、温暖化やその他人間の活動から起因する海洋環境の変化を伝える、ステークホルダーが違いを超えて共同する、ということは5分では到底話し尽くせない内容ですが、
国連スタッフの温かくも厳しい添削を4度ほど通過し、このようなお話しになりました。

国連総本部で、コックコート&エプロンでスピーチをした人は、おそらく初めてなんじゃないかと思います。
違和感アリアリですが(笑)楽しみました。(緊張しました。)

よろしければ、動画もありますので探してみてください。
https://unworldoceansday.org/un-world-oceans-day-2022/
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【 国連でのスピーチ全文 】
今日は海藻についてお話したいと思います。

海藻は多機能です。 
陸上では、人間や家畜の食料を供給し、医療産業や化粧品産業で利用され、歴史上長い間肥料として利用されてきました。

海では、海洋生物を支え、生物多様性を維持するための自然な生息環境を提供しています。
地球全体では、マングローブや塩性湿地などの沿岸湿地だけでなく、藻類、海草、大型藻類が大気中の二酸化炭素を吸収すること、すなわち「ブルーカーボン」が科学的に明らかにされつつあります。

日本の沿岸部では、海の砂漠化が問題となっており、沿岸海域の健全性や地域経済に深刻な影響を及ぼしています。
私は、実際に何が起こっているのかを自分の目で観察したいと思い、フリーダイバーの訓練を受け、海が許す限り観察できる地域に移りました。

海水温が海藻の分布に影響を与える主な要因の一つであることは、科学者たちがすでに証明しています。
海水温が高いほど、海藻の生存、成長、繁殖に大きな影響を与えるのです。
さらに、海水温が高いと、海藻の捕食者であるウニなどが、特定の海藻が成熟する重要な時期である冬の最も寒い時期まで活動することができてしまいます。

2021年の冬はとても暖かく、水温はかなり高く、18℃を下回ることはあまりありませんでした。その結果、「ワカメ」という天然・養殖の藻類の収穫が壊滅的に少なくなり、多くの漁師が被害を受けました。

ラニーニャなどが原因で、2022年の冬は豊作となり、漁師さんたちの安堵の笑顔を見ることができました。
ウェットスーツを着て冷たい14~15℃の水中に潜るのは決して快適ではありませんが、海藻の森の復活を観察し、その中に頭を突っ込み、まるで海の哺乳類になったかのように重力から解放されて陸上生活のストレスがなくなるのは素晴らしいことだと思います。
地球温暖化の影響はまだ不明ですが、
海藻の森で感じるこの感覚は、決してあなたを失望させることはないでしょう。癒しや活力を与えてくれます。

海藻の森の再生と地球温暖化は切り離して考えることはできません。ですから、私の料理を通じて、さまざまな海藻を使ったおいしい料理で、その重要性を知ってもらい、議論するきっかけになればと思っています。

料理人の喜びのひとつは、自分のキッチンの外に出て、おいしい料理で誰かの一日をより有意義に、思い出深いものにすることです。

日本では数千年以上もの間、海藻を食べてきました。海藻を料理することは、私たちに無限の喜びを与えてくれます。

先日、私は海藻学者、プロのフリーダイバー、地元の漁師と一緒に、地元のコミュニティで子供向けの海藻教育ワークショップに参加しました。
このイベントは、午前中に沿岸でダイビングをし、その後、海藻学者者の講義と漁師の話を聞きながら、私の海藻をテーマにした料理を食べるというものでした。

このイベントを通じて、目に見えない美しい海藻の森と物理的・知的なつながりを提供することができ、経験則に裏打ちされた学習と沿岸水域の世界への驚きの感覚(センス・オブ・ワンダー)を生みだすことができました。

私はシェフとして、食のシステムにおいて、生産者と消費者をつなぐ役割を担っています。そして、お客様が自分たちの食べ物がどこから来るのかを理解できるよう、ストーリーテリングと教育のためにプラットフォームを活用することができます。
この海藻プロジェクトを通じて、地域のサプライチェーンを確立し、人々が自分たちの住む環境をより身近に感じられるようにしています。

海藻のユニークな性質を尊重し、思いやりのあるレシピを作ることで、人々の意識をつなぎ、共通の認識を持つよう促すことができればと思います。

そして、海の再生という共通の目標に向かうよう、呼びかけたいと思います。

2022年6月8日 世界海洋デー #unworldoceansday

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