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母さんー!

こんにちは☺️児童養護施設出身・少年院出身の青年の自立をサポートする団体、NPO法人スマイルリングでの、青年たちとの日常をnoteします☺️✨

母さんー!

感受性の強い
少年院出身の青年からのLINEは
いつもこうして始まる。


お母さんー!母さんー!!

行って来ますっ。頑張りますっ。


なんと嬉しい。

こんなに嬉しいLINEが

この世にあるのかしら。


夕闇の中、

真っ暗な沖に出て行く、漁師になった彼。

その時々の自分や

一緒の船に乗っている相棒の楽しい動画。

ため息が出る程の、美しい海に沈む夕日。

そんな写真や動画を送ってくれる。


彼の表情は

ある時は元気いっぱいに。

あるときは不安気に。

あるときは誇らし気に見える時もあれば、

“もう、どうとでもなれ!”

そんな表情に見える時もある。


お母さんに甘えたい
一人の子の顔である。

それを見ている私も、一人の母の顔になる。


真っ暗な海の上で
疲れと緊張で頭をグルグルさせながら…。

降るような星の下、

海から湧き上がってくる銀色の魚達を睨み付け、

夜通しタモを上げ続けている。


そんな彼の無事を願う毎日である。



そんな“息子”が先日、


スマイルリングのある、

ここ十勝帯広に来てくれた。


少しだけでも会いたいです。


突然思い立って来たようだが、

久しぶりに会えるのが嬉しかった。


予約していた歯医者をキャンセルし、

急いで仕事を終わらせて、

待ち合わせ場所へと走った。


同じ北海道に住んではいても

なかなか頻繁に会う事は

ままならない距離なのだ。


少しはにかむ彼と一緒にスーパーに行き

荷物を持ってもらい

ホームでご飯を作って食べさせた。

彼とは本当に普通のことがしたかったから。


堀ちゃんとホームに住む青年とが

賑やかに、とても楽しく彼を迎えた。

ほとんど堀ちゃんの思い出話ばかりだったが、

大笑いした。

彼の笑顔も輝いていた。



帰りの列車までの間は

我が家で2人で過ごした。

“自分の好きな曲を聴いてもらいたい”

そう言って、2曲のラップを聴かせてくれた。

どちらも『家族』への愛を謳ったものであった。


この人、奥さんの連れ子達と暮らしてるんです。
その子へ、自分の想いを歌ってるんです。

ラップって、暴力的な歌詞が多いでしょう?
この人、初めてこんな歌詞で
ラップを歌った人なんですよ。

凄い人です!…。


2人で一緒にスマホの画面を見つめながら

静かにその曲を聴いた。

血の繋がらない親子が家族になっていく。

そんなとても良い曲だった。


そんな可愛い“息子”との時間は

本当にあっという間で…。

駅まで送ると

少し寂しそうな、名残り惜しそうな

そんな表情を見せてくれた。


『乗り遅れるから早く行きなさい』

そう言う私の胸が、グッとなった。

息子とは、

なんと…こんなにも可愛いものなのか。


そんな彼は今、

自分の力で、逞しく生き直し始めている。


“母さん”

いつまでそう呼んでくれるのだろう。

どんどん逞しく大人になっていく彼。

今この瞬間この時は、

とてつもなくかけがえの無い時間なのだ。


今日も“息子”は漁に出て

一晩中波の上にいる。

逞しく成長を続ける、優しい青年だ。

子を産んだことの無い

私の“息子”になってくれて

本当にありがとう。


NPO法人スマイルリング
理事 ののむらちあき😁

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