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アラフィフからのアイドリッシュセブン【21】 ダンスマカブル①挑戦

2021年1月31日、アイドリッシュセブンイベント「ダンスマカブル」公開が終了しました。
マネージャーの皆様、お疲れ様でございました。
運営の皆様、脚本を務められた山中拓也さん、重厚な音楽を奏でてくださった音楽家の皆様、そして骨太なドラマを演じて下さったメンバー、声優の皆様、ありがとうございました。
楽しい時間を頂きました。


PVが発表された当日は、ダンスマカブルというワードがTwitterトレンド入りし、いつもの温厚で繊細なキャラクターと真逆な印象のセリフの逢坂壮五の名前が踊った。罵られたい夢女子がこんなに多いとは。
(ちなみに、2021年1月にNHK「あさイチ」で放映された「推し活」特集、ノンジャンルでボードに名前が並ぶ中、壮五の演じる「シャオ」という役名がラインナップされたのを筆者は見逃さなかった)

マネージャー各氏をザワつかせて始まったイベントであるが、さながら映画のごとくのシナリオのボリュームと、ストーリーを進めるための課題曲をプレイする数も膨大で、これまた各氏を戸惑わせた。アイナナにはオート機能があり、高評価を得られていれば自動で回せる。これを使わないと時間と労力を使い果たしてしまう。

なんて過酷な試練なんだ。どこまでも鬼畜だな!

イベント

私は何度も言うが去年からゲームを始めたので、それ以前のことは分からない。
周年記念のストーリーは彼らの日常や仕事の際の裏話。
復刻された妖万華鏡 空虚咎送り(あやしまんげきょう からとがおくり)は、人間と妖怪と鬼による剣を交えた五番勝負の中でそれぞれの関係性と気付きを描いた秀作であったが、登場人物の演技はメンバーのキャラクターの特色からは大きく逸脱していない。


イベントストーリーは、アイドリッシュセブンオールスターキャストによるファン感謝祭のようなものなので、ファンもキャラクターに準じた脚本とキャラの肉付けを楽しむものだと思っていたかもしれない。

しかし、この5周年というコンテンツが持つ蓄積とファンへの信頼があってのことだろう、
「ダンスマカブル」では、
メンバーに彼らとは全くの別人格を演じさせるという挑戦をした。

上でも書いた逢坂壮五は、大企業グループの御曹司で物腰は柔らか、言葉も丁寧で常識人(時折見せるエキセントリックな面は真面目の裏返しの気がする)なのだが、
今回演じた人物は、巨大な力を統べる教会組織を護る軍隊の一兵卒で、天才的なスナイパー。無気力、無感動、無配慮(この無配慮というのがストーリーの中で大きく作用してくる)。
本人も困惑するほどに役作りは大変だったそうだ。

役作りを強いられる。それは壮五だけではなく、全員が全員の話らしい。

それでも、役を、ひいてはこのドラマを、精一杯素晴らしいものにしたいというメンバーの意思がとても伝わって来た。
素直に嬉しい。

役者としての顔

アイドル達の、いつもとは違う声色、演技にファンやマネージャー各氏は驚きを隠せなかったようだ。
ドラマだからこそ見せられるアイドルの顔はとても嬉しいものなのだが、思い入れが強いほど抵抗感を感じてしまうのはやむを得ないのかもしれない。
抵抗感を感じるというのは、それだけ惹き付けられたということでもあるのだけれど。

と考えた時に、この配役は各個人の年齢やキャリア、性格、事情も含めて考えられたのではないかと気がついて唸ってしまった。
アイドルへの信頼と愛が感じられる。

印象

せっかくなので、演技から受けた印象を書くことにする。なんとなくでも納得して頂けると幸い。

演技が以前からの印象と大きく変わったと思われたのは、九条天と棗巳波。

九条天は言うまでもなくブロードウェイ仕込みのエンターテイナー。人の顔を持つ災厄という二つ名の通り、普段の彼からは想像もつかない憎しみや哀れを併せ持つキャラクターを見事に演じてくれた。

棗巳波は子役からの長いキャリアを持ち、作曲家でありパフォーマーでもあるという、表現力に長けた俳優。
中性的な魅力を持つが、今回は男らしさの中に儚さの残る青年を絶妙なバランスで演じてくれた。
2人が雄々しく火花を散らすさまは、視聴者にも衝撃を与えただろう。
役としては途中での退場ではあったが、その後のストーリーに大きな影響を与えた人物像であった。

TRIGGERの3人は主題歌を務め、本幹をなす人物を演じた。上に上げた九条天をはじめ、八乙女楽や十龍之介も主演格の役どころを演じてきてキャリアは充分。
2人のパーソナリティに被る部分とそうでない部分が役にはあったが、ない部分を補える演技力はさすが。
全編に渡ってその魅力を発揮してくれた。
特に主演の八乙女楽についてはまた改めて書きたい。

IDOLiSH7の二階堂大和は役者としての才能と経験から来る余裕を感じさせてくれた。
参謀のクレバーさに、ある点を超えると爆発する、裏にある狂気の顔を混ぜていくのは彼の十八番。前後編通しでの出演。

「天子」という純粋無垢な役柄を演じきったŹOOĻの亥清悠も17歳でありながらブロードウェイでの舞台で培った確かな演技力を持つ。ギャングスターとは全く違う表情にファンがさらに増えたはず。
前後編通しでの出演。

同じ17歳のIDOLiSH7和泉一織と四葉環は演技経験の少なさを感じさせなかった。2人とも主演ドラマの経験はあるが、グルーブ結成以前は演技する場面はなかったと思う。
斜に構えた目線の奥にある熱いものが伝わって来た。
18歳未満という仕事上の時間制約の中で、自分のパーソナリティと離れた演技をこなすのは大変だっただろうが、アイドルの天性を見た気がする。一織は後半のみ、環は前半中盤から後半序盤にかけての出演。

IDOLiSH7和泉三月は声色の変化が大きな演技のポイントだった。MCやアニメ「魔法少女まじかる☆ここな」での声優をこなしているが、明るいイメージとは異なるダークな表情。それでいて熱血で強い。
彼の更なる可能性を感じた芝居だった。
前後編通しての出演。

IDOLiSH7六弥ナギはいわゆる「ラスボス」。
演技よりもモデルの顔の方が馴染みだが、アニメオタクで声優の演技には馴染みだろう。綺麗な中にある毒を見せつけてくれた。
出番は限られたが、全編に渡って視聴者の「次はどうなるのか」を引っ張り続けた。

IDOLiSH7七瀬陸は後半のみの出演にも関わらず、その存在感は計り知れない。本人の事情もあるかもしれないが、屋内のみでの撮影のようだ。
陸本人が読書家だからだろうか。既に多くのものを、常に遠くを見てきたような眼の印象を受ける。これは筆者だけだろうか。

Re:valeの千が演じたのは意外な立ち位置の人物だった。日和見主義だが常に目を凝らし、いざという時に動ける手腕は「機動警察パトレイバー」の後藤隊長を思わせる。
千はストーリーの中での役の印象を一瞬にして変えることの出来る俳優だ。評価も高い。
全編を通じての出演。

Re:valeの百が演じたのは、権威のトップ。非常に賢く気遣いを忘れない役どころは、彼にぴったり嵌る。演技経験は少ないと思うが、名MCでもある彼の佇まいはさすがと思わせる。
全編を通じての出演。

ŹOOĻ狗丸トウマは演技経験はあまりないかもしれないが、10代からアイドルのセンターを任されて来ただけの度胸があるように見られる。優しさと縁の下の力持ち的強さを併せ持つ、本人のキャラクターにぴったりの人物。照れ隠しのような笑顔も印象的だった。
後半のみの出演。

ŹOOĻの御堂虎於も演技経験豊富ではないだろうが、色男ぶりから離れた粗野で強かな男を演じている。物事に囚われ過ぎないキャラクターが似合うのは、彼の育ちの良さも理由だろうか。前編中盤からの出演。

影響

恐らく、アイドリッシュセブンの世界線の新聞や雑誌などでは、大体的に特集を組まれただろうと思うが、こうして羅列するだけでも大きなインパクトを与えただろうことは想像するに難くない。

そもそもが大人気アイドルたちの夢の共演だ。実は共演の機会は多いのでファンにとっても馴染みになっているかもしれないが、16人が一堂に介してこれまでとは違うアプローチをしてくることに興奮しないファンは居ないだろう。

これまでのイメージを壊して挑戦するということは、タレントはもちろんだが、テレビ局、事務所、脚本家、演出家、ドラマ制作会社、主題歌や劇伴を提供するレコード会社への評価も一新してしまう危険性を孕む。

だが、常に新しい分野にチャレンジし、評価を得られて来たのはファンなら知っているし、それを望まれているのもアイドルたちは知っている。

放送後、賛否両論を巻き起こし、メンバーのパーソナリティとの乖離から来る違和感や作品へを貶める発言もファンから聞こえていた。

登場人物のキャラクター=彼らのキャラクターと見間違える人も多く出ただろう。

違いを受け入れるということ

脚本の山中拓也氏は、「最大公約数」の幸せを描いたつもりはない、と、ツイートしている。

みんな違ってみんないい。

口にするのは容易いが、実は非常に難しいと誰もが分かっていると思う。違いを受け入れるには、これまでのイメージを覆す作業が必要で、これもまた難しい。

でも、違いを受け入れて生きるのが私たち。

登場人物の誰かに感情移入出来、考え方に同調が出来るように練られた脚本に自分を重ねられる。これはフィクションの醍醐味だ。そして、そんな世界に誘ってくれたメンバーの確かな演技力。個人の魅力、役柄の魅力、彼等の努力が合わさった瞬間だった。

さて、そんな環境の中で伝えたかったのは何なのか。

この項続きます。少し長くなるかもしれません。




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