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アラフィフからのアイドリッシュセブン【17】 信じる力と「痛快」

※今回は引用が多くなっている。特に二部のネタバレがあるので、ご注意されたい。

何かとしんどいアイドリッシュセブンの世界。(話題のイベント「ダンスマカブル」前半終了。かなりしんどい。後半は2021年公開。お楽しみに。)

この作品はなぜ、普通のアイドルもののようにキラキラしていないのかと人に問われた。

キラキラして無いわけではない。
でも、キラキラするためにはいろんな事象をくぐり抜ける必要があるのだ。

私たちも同じように生きている。それをアイドリッシュセブンの物語を通して見ているからしんどいと思うのだ。

こんな世の中ではあるけれど、辛さに甘んじている訳ではないのは皆んな一緒だ。

ゴシップ

トラブル続きで、やっとの思いでデビューしたIDOLiSH7も、世間の目に晒されるようになった。

もっと見て、と言っていた頃が懐かしい。IDOLiSH7は既に1年目からゴシップ記事を書かれている(しかも優秀な記者さんが多いのか、割と早めにメンバーの素性が暴かれているのには笑ってしまった)。

売れてきたタレントの秘密を知って喜ぶ人間が居るなら、その喜びを叶えるという意味ではマスコミの仕事として需要は充分あるし、存在意義にもなる。

昔からタレントは醜聞に晒されながら高い注目と報酬を得てきた。

アイドリッシュセブンのストーリー二部。
(及びアニナナ2期。ここから引用多めになります)

ゼロアリーナという名称の、伝説のアイドル「ゼロ」の聖地であるホールがリニューアル。
こけら落とし公演を予定しており、Re:valeの5周年記念ライヴ、TRIGGERのミュージカル、IDOLiSH7のライヴ、の3DAYS。

そのタイミングでゼロの楽曲のカバー曲をリリースするRe:valeと、ゼロに楽曲を提供して来た作家の歌を歌っているIDOLiSH7に中傷が相次いだ。

ゼロは失踪という形で活動は終わっているが、熱狂的な人気を誇ったため、今でも人気は衰えない。
姿が見えないアイドル=偶像=信仰の対象
になっている様子も見える。
彼の領域を侵すな、という声は今も根強い。
失踪から15年も経っているのに。

中傷が中傷を生む世界

ゼロの存在を覆す存在になりうるアイドルグループが育ち、現に人気を博しているわけだが、それを気持ちよく思えない人間は居る。
他の芸能人が好き、ジャンルが好き、アイドル自体がちょっと、という全ての人の気持ちは、
当然尊重されるべきだ。

マスコミはその人たちの代弁者と言わんばかりに事務所に詰めかけ、勝手な物言いでテレビや雑誌で騒ぎ立てた。
日頃からゼロ派でもない人間をどんどん取り込んでいき、対立、中傷の種を生み、可哀想という気持ちを植えていった。

現実に不祥事を起こしたタレントは謝罪記者会見を開いたとしても、叩かれるのが常。
そんな様子を見て、つい流れに乗ってしまうのも世間の常。徐々に被害にあった者の側に立ってしまう。

人の噂も七十五日ですぐに次の話題が出ればそれに飛びつくのが一般市民というものだが、
その七十五日の間にバッシングされ続ければ本当にボロボロになってしまうかもしれない。
存在が消えてしまうことになりかねない。
傷が癒えるのは待てない。

単なる刺激

所属する事務所の危機に敢然と立ち向かったのはIDOLiSH7の六弥ナギ。
彼は特別広報マネージャー兼務として小鳥遊事務所と再契約したのちに取材陣の前に現れ、彼のパーソナリティをフル活用していく。
悪いのはゼロではない。中傷する人間こそ悪なのだと、彼は繰り返し強調した。
そして、彼が普段見せないクレバーで優しさに満ちた表情に、取材する人間も乗せられていく。
(この場面は、のちにテレビの情報番組で何度も使われる会見VTR素材となる。私たちが何度となくテレビで見た光景だ。)

自分の大切なものが傷つけられて黙っていられる彼ではない。
何が出来るかを考えた結果、彼は言葉を伝える方法を選んだ。

そして、常に自信と謙虚さを持ち合わせるリーダー八乙女楽が率いるTRIGGER。
アイドルという仕事に誇りを持つTRIGGERの3人がそんな状況を良しとするはずがない。
彼らもまたこけら落とし公演を行う当人なのだ。

テレビ局での収録終わりを待ってマスコミが取り囲む。他の2グループが、ゼロの立場を脅かしているのはどうなのか、という声を浴びせる。
マスコミが3人に期待した言葉は何かは分からないが。

人気の3グループが集まって、ゼロに負けるとは思わない、挑戦することの何が悪いと啖呵を切り、マスコミ陣の前で、新曲を即興で歌った。
生中継。
新しいネタを得たマスコミは喜んで彼らを映していく。

単なる刺激。
TRIGGERの九条天は、半ば自分たちの立場を自嘲するかのように言葉を放ったが、邪推してひそひそ笑っているだけの人間の振る舞いよりも高みにあると言ってみせたのだ。
「いつものように」。

それを聞いたTRIGGERの所属事務所の八乙女社長は画策する。やんちゃなTRIGGERが自ら騒ぎに投じた石。生まれた波紋。それをなんとか穏便に鎮めつつ、たとえ斜めからのものだとしても彼らに注目して来た世間の目を、タレントに、事務所に有利になるように誘導させたい。

IDOLiSH7の和泉一織は、それにうまく乗じることで自分たちのグループ、更には叩かれ続けているRe:valeを救おうと策をめぐらせる。
一織も、自分の利点はこんな策略にある、と言わんばかりに。
彼のことはもう、役立たずとは言わせませんよ。


アイドリッシュセブンという作品、
この辺りの繋ぎは本当に上手いと思う。


痛快

マスコミ主導の世間からのバッシングに対し、自らのワールドを存分に見せつけた。

自分の力で困難を乗り越えていかないといけないという厳しい世の中だからこそ、己の力を信じる者こそが強いのかもしれない。

私たちは私たちの思いで動くことしか出来ないが、その様を見たら、他人は自然と動かざるを得なくなるものだ。

実は、上に書いた話の中では、
仲間同士力を合わせよう、とは誰も示し合わせてはいない。
向かう場所が同じなら心が動く、それが複数集まって奇跡を起こしていくだろうと信じているだけだ。

20歳前後の彼らが、彼らの中にある力を信じていく。
これを痛快と言わずして何をいうのか。

信じるということ

信じるというのは難しい。信じた先に何があるのか分からない。
でも、どこか、納得の行く場所にはいけるはず。

信じると言うと、何か大業な事のように思える。でもそれは普通にしていることだと思う。

帰ったらご飯が食べられる、
子どもの笑顔が見られる、
美味しいお菓子が食べられる、

そうやって準備したり、楽しみに待っている。
それは毎日、信じていることじゃないか。

日本中の人を楽しませたいアイドルたちには敬意を表するし、
身の回りのちょっとした幸せを作る人も立派だ。

こんな世の中が少しでも良くなるよう、
みんな何かを信じている。


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