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ウチの子 発達障害!?vol.111~115

vol.111「のんびり過ごす日々も悪くない」

 新型コロナウィルスの影響で、息子の通う高校は5月も休校になることが決まった。登校日もあったが、基本的には宿題を受け取りに行くだけ。この状況なので仕方がないが、普段は家に居ても「何もやることがない」などと言わない息子が、「ヒマだ」と言った。
 ずっと家に居ても運動不足になるからと、先月同様、買い物に付き合ってもらったり在宅の夫も一緒に食べる昼のお弁当を買いに行ったりと、私は楽しく過ごせてよかった。ただ、買い物へ行く時には踏切も通る。息子は電車に乗りたい気持ちを我慢していただろうから、ちょっと気の毒に思った。
 小田急線の踏切付近で小さな子どもと親が一心に電車を眺めていた。お出かけ日和なのにどこへも行けない。どうして出かけられないのか理解し難い年齢の子どもでも、何となく雰囲気で状況を理解しているのだろうか。
 強い日差しの中、親子でじっと電車を眺めている姿に、思わず昔の息子と自分の姿を重ね合わせていた。息子の大好きな電車を一緒に眺める時間は、当時の私にとって特別な時間だったのだ。今は成長した息子とおしゃべりしながら、その親子のそばを通り過ぎた。(2020.5)

vol.112「虐待とその先の苦しみ」

 神奈川県内の2019年度の児童虐待相談・対応件数が2万6156件で過去最多だったそうだ。内容としては心理的虐待が53%(1万3591件)で最も多く、ネグレクトが25%(6474件)、身体的虐待が21%(5265件)、そして残りは性的虐待(164件)。

 私も親から虐待されていた一人だが、当時は誰かに相談することなど、とても考えられなかった。そんなことをしたら、親からさらにひどい仕打ちを受けるから。学生の頃はずっと我慢するしかないと思って生きていた。特に中学や高校時代は気持ちも荒んでいて、何をやっても楽しくなかった。きっと私はたくさんの友人に嫌な思いをさせていただろう。そして家庭の話だけは、誰にもできなかった。

 今ではそんな話も少しはできるようになったが、話せないことも山のようにある。「いつまでも過去にこだわらなくても」と思う人もいるだろうが、過去というのは自分を形成する大切な一部分で、決して消し去ることはできない。そして今もこれから先も、私をずっと苦しめる。虐待とはそういうものなのだ。(2020.6)

 vol.113「息子の就職活動」

 今年の高3の就職活動は、1か月遅れの7月1日から始まることになった。6月中に昨年学校に届いた求人票からどのような会社や業種を希望するのか、3つほど書いて提出しなければならなかったが、息子は具体的に決められないでいた。

 就職先のことまで私がアドバイスすべきかどうか迷ったが、何も言わなければ進まない。求人票を見ると給与ばかりに目が行きがちだが、まずは就業場所を考えて、休日や時間外労働についてもよく見ること、建設科だからといって絶対に建設業を選ばなければならないという決まりはないこと、そして一番大事なこととして、自分が「これだけは無理だ」と思う業種をはっきりさせておくことなどをアドバイスした。

 以前、某進学塾の講師がテレビで「頑張らなくてもできることを仕事にするのがいい」と言うのを聞いたが、私も同感だ。息子は以前、鉄道会社で働くことを夢見ていた。子どもの夢を応援することこそが親の役目なのかもしれないが、明らかに不向きであろう夢を応援するのは忍びなくて、息子とは時間をかけて話し合った。大好きな鉄道は、これからも趣味として続けていけるように応援したい。何はともあれ、いい就職先に恵まれますように。(2020.7)

vol.114「ほんの少しやってみたいと思うこと」

 夏休みに入り、間もなく就職の校内選考が始まる。息子は鉄道会社の駅員業務に就きたいとぎりぎりまで夢を見ていたが、私は難しいのではないかと話していた。先生からも「求人が来ても今は厳しいよ」と言われ、ようやく現実的に考えるようになったのだが、私が都心の電車通勤は大変だろうからと家から歩いて行ける会社を勧めたところ、今度は「そこでいい」と一言。まるで「鉄道会社でないなら何でもいい」とばかりに、何も考えずに従おうとするのが気になった。

 そこで息子に、今年の春に就職したアニメ好きの友人に「どんな会社へ就職したのか、どうしてその会社に決めたのか」を尋ねてみるようアドバイスした。息子が友人に聞くと「力仕事は無理だと先生に言ったところ、ここはどうか?と構造設計の会社を勧めてくれた。」と教えてくれ、おまけに「お前も来いよ」と誘ってくれたそうだ。

 その後も色々話をしたが、「歩いて行ける会社でいい」の一点張り。でももしかしたら友人が就職した会社にも興味を持っているのではないかと思い、「ほんの少しでいいから、やりたいなと思える仕事はどっち?」と聞いてみた(この「ほんの少しでも」というところがポイント)。すると息子はちょっと考えて「構造設計の会社」と答えた。結局、そちらを第1希望にした。

 私自身、息子の年齢でやりたいことなど特になくてもいいと思っている。ほんの少し「やってみようかな、やってみたいな」と思えるだけで十分。面白さなんて、実際にやってみないと分からないから。(2020.8)

vol.115「柔軟に対応するのはどちらか」

 夏休みに行われた校内選考で、息子は設計会社の入社試験を受けることが決まった。8月下旬に早速、他の生徒と一緒に会社見学へ行くことになり、見学終了後は、息子が学校に電話で報告することに決まった。通常学校へ電話をかける際は、「○○科△年□組の○×です。」と名乗ることになっているが、その日は他の生徒も一緒でちょっとした社会科見学気分、本人も浮かれていたのか、名前しか名乗らなかったらしい。

 そのことを、その日は注意されなかったのだが、電話を受けた先生から翌日の授業中に「電話を掛けるときはちゃんと名乗れ」と言われたそうだ。息子は「(名前を)名乗りました」と反論し、先生と言い争いに発展してしまった。午後からの授業でもまたその話で互いに譲らず、最後には「お前にはあの会社は推薦できない」と言われたと、ふてくされて帰ってきたので、息子の話を聞いてすぐに先生にも電話で事情を尋ねた。

 両者の話から考えるに、先生が授業中、他の生徒もいる前でタイムラグのある前日の話を持ち出すのは良くなかったと思うし、互いの主張が食い違っていることに先に気づいて息子に分かりやすく伝えてやればよかったのではないか、とも思う。

 その上で、息子には学校に電話をかけて先生に謝るようにアドバイスした。念のため、電話の際には科・年・組をきちんと名乗るように、とも伝えた。必ずしも必要ではなかったかもしれないが、頭ごなしに注意されるような場合はこちらが柔軟に対応すればよいと、今後のためにも学習してほしかったのである。(2020.9)

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