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年末年始だらだら読書記録

2023-01-04

あけましておめでとうございます。
年末年始はマイペース読書。世間がのんびりしていると、流されて自分ものんびりしてしまう。別にのんびりしなきゃいけないルールなどないのに。
とはいえ日本は激動で。ニュースから目が離せず、勝手にソワソワして勝手に疲れてました。そういう人、多かったんだろうな。


さて、のんびりムードが断ち切れないので、読書感想文も、読書メーターの丸写し。手抜き。でもいい、読書とは、それ自体からして自己満足。


高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』

「無条件に子どもが好きな人、というのが一定数いる。街を歩く子どもを見てかわいいと思い……自分もそういう人間だったら、楽だっただろうと思う。」
ここにとても共感。子どもに優しくしましょう、という社会通念は理解できる。でも、無条件で好きじゃなきゃいけない、みたいな圧力を感じることがある。私はとことん子どもに対して無害でいることはできる。でも、積極的に好きになることはできない。そんなことを思ったのは、子どもがいないから、なのだろうか…。

中島美鈴『脱ダラダラ習慣! 1日3分やめるノート』

Kindle Unlimitedで読了。やめたいけどやめられない悪習慣の、デメリットではなくメリットに着目する、というのが分かりやすかった。私は甘いものはやめられず、夕食後にスナック菓子やケーキをばくばく食べてしまうのだけれど、それは単に腹が満たされないからではなくて、甘いものを食べることによる別のメリットがあるのだなと、それを深堀りしてみようと思った。1日3分かけてノートを書いてみる……を実践に移せるかは別として、無意識に習慣化した行動を棚卸しして、別の行動に代替できないか探ってみようと思った。

宮本輝『灯台からの響き』

2024年1冊目。灯台めぐりが好きなので、タイトルに惹かれて。―「灯台を見るために足を運ぶことで、海風に体をすくませ、潮の香りを感じ、鮫の背びれのような夥しい白波も目にする。固く締まった土の道の感触や、上りにくい石段の不揃いな段差を、足のすべての筋肉がじかに実感する。それらが複合して一基の灯台の印象となっている」― まさにその通り。灯台自体は物言わねど、その時々の気持ちや体調が、自分だけの印象・記憶として残り続ける。 そして、康平はみんなに愛されていて羨ましい。愚直にやってきたからこそ、なんだろなぁ。

小笠原淳『見えない不祥事ーー北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』

小笠原氏、やっていることはかなりアグレッシブだが、ジーンズに長靴、指に挟むはショートピースなその出で立ちと、ユーモアあふれる書きぶりのせいで、読み物としても楽しめる1冊。道警の不祥事の是非については、一方からの記述なので決めつけるわけにはいかないが、この本での一番の主張は、あとがきに記された1文であろう。「少なくとも地方版の新聞記事になるような事実が、少しの手間と数百円の費用で引っ張り出せるのです。新聞やテレビに所属していない記者でも、地味な話題をネチネチ追い続ければそれなりの情報が入ってくるのです。」

千早茜『ひきなみ』

かつて橋を渡り、友人が住んでいた生口島を訪れたことがある。観光客が「何もない」というような島。表面上はただただ穏やかな土地に、人に、どんよりと覆いかぶさって漂う暗黙の了解。「あの人とは付き合うな」とか、「女は男の下」のような。そのねばっこさと、解放の象徴としての潮風や船の描写。生々しいのに爽やかで、一気に読んでしまった。真衣と「お兄さん」の関係は傍から見れば異常かもしれないけど、それはどんな関係にも言えることであって、普通もそうじゃないも、本当はないのかもしれない。

千早茜『正しい女たち』

それぞれの話がゆるく繋がった連作短編集。どきっとする出来事が起こる話もあれば、平坦に終わる話もある。環の視点で語られる「描かれた若さ」に滲む、女性が男性に消費される、的な考えは、その他の千早さんの作品に出てくる価値観なのかな、と思った。女という生き物は陰湿・ドロドロ、だなんてよく男は言うけれど、それは男も加わって複雑に絡み合うからこそ生まれる世界なのかもしれないと、男である私はなぜか勝手に反省している。

千早茜『桜の首飾り』

小説家というものは、どうして身代わりの術のようにころころと視点や考え方を変化させられるのだろう、と尊敬が止まない作品。桜を見て、ただただ綺麗だなとしか思えない自分にとっては、異なる角度から次々ちがう光を当てられたこの連作短編が輝いて見えた。冒頭の「春の狐憑き」が特にお気に入り。狐に憑かれて自分が自分じゃなくなる瞬間は、憑かれた本人も気づかないことがあるのだという。桜の季節もそうで、人が春を感じるのは、案外と、桜が散ってしまってそれを記憶の中で思い返す時なのかもしれない。

『そういうものだろ、仕事っていうのは』

こういったアンソロジーは、普段読まない作家さんの作品に触れられる。今回は、大崎善生さんの「バルセロナの窓」がとてもいい出会いだった。自分の才能を買いかぶって行動しない主人公に共感し、趣味が高じて仕事へつながっていく描写での、人生においての無駄の大切さに納得し、男二人で過ごすスペインの、うだる熱気が眼前に迫ってきた。てんでばらばらの「仕事論」を各作品に見るにつけ、仕事っていうのは「そういうもの」なんかじゃなくて、自分で意味づけしていくものなのだなと。明日からも仕事を頑張ろうと思った。物語は自分で作ろう。


お気に入りは、千早茜さんの『ひきなみ』。
地方に根付く男尊女卑の粘っこさと、まるで解放の象徴かに映る犯罪者。
舞台となっている島には私も愛媛に住んでいたころに何度か訪れたころがあるのだけれど、外から見た穏やかであたたかな土地柄と、一方で住む者にしかわからないであろう、小さなコミュニティ故の人間関係の煩わしさ、そのどちらも容易く思い浮かべられる、凄味のある作品だと思いました。

しまなみ海道、久しぶりに渡りたいなあ。


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