ベテラン大家の投資物件の評価⑤実質利回の算出方法

■ドーモ、上海摩天楼です。

本日は実質利回について解説します。

NOIのようなものです。よく地方物件の利回は信用できない、リフォーム代がでないからという人がいますが、具体的な数字で説明できる人が少ない。

何度かこのテーマで書いていますが、毎回評価が低い。やっぱ難しいテーマなのかなと思います。

アタクシなりに書いてみました。それでは行きましょう。

■■実質利回とは?

 私は実質利回で物件を評価しています。
実質利回は下記の数式で算出します。対象物件の客付費用率、運用経費率、管理費率、固定資産税&都市計画税比率が算出できれば、ある程度正確な実質利回が算出されます。

表面利回×(100%-客付費用率-運用経費率-管理費率-固定資産&
都市計画税比率)=実質利回

 
ベテランは実質利回の目安を頭の中で出せます。
 ワンルームとファミリー物件で稼働率、運用経費率が大きく違いますのでこの二つにわけて稼働率、運用経費率を算出して実質利回を算出します。

本日はワンルームの利回のみを解説します。

■■ワンルームの客付費用を算出

 都心築浅、都心築古、都心郊外、都心郊外築古、地方築浅、地方築古に分けて客付費用に影響する、稼働期間、礼金、更新料、フリーレント、ADの5つの要素をどう考えればよいかご説明させていただきます。

■稼働期間
 稼働期間は4年で入居者が入れ替わるとします。
極狭のワンルーム、建物、環境に問題がある部屋以外は4年程度の入居期間が充分に見込めます。

■礼金 

図0-1は某不動産賃貸サイトで礼金0円の物件の比率を調査したものです。
礼金は都心築浅、都心築古のみ1カ月でシミレーションすべきです。都心郊外で7割、地方では9割近くのワンルームで礼金がない状態ですので都心郊外、地方では礼金は0と考えるのが適切です。

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■更新料
更新料は2年に1回家賃1カ月分で不動産会社と大家で折半します。
2年後に0.5カ月家賃がプラスされます。

■フリーレント
都心、都心郊外で新築築浅に限らず、1カ月程度は必要です。入居者が部屋を決めてから、入居するまでの期間が1カ月程度は家賃無料がスタンダードになっています。
地方ではADという文化は少なく、入居者にメリットがあるフリーレント2カ月程度と考えます。

■AD
都心築浅2カ月、都心築古2カ月、都心郊外築浅1カ月、都心郊外築古1カ月、地方は0と考えます。令和3年現在、都心のワンルームが供給過多でAD高騰。地方ではADは不要が一般的です。


■■ワンルームの客付費用率を算出する

下記の条件を当てはめてワンルームの客付け費用率を算出します。
①稼働期間は48カ月
②礼金は都心築浅、都心築古のみ1カ月、都心郊外、地方は0カ月。
③更新料1カ月のうち半分0.5カ月を大家取り分として反映
④フリーレントは都心築浅、都心築古、都心郊外築浅、都心郊外築古は1カ月、地方築浅、地方築古は2カ月。
⑤ADは都心築浅、都心築古2カ月、都心郊外築浅、都心郊外築古は1カ月、地方は0カ月。

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礼金、更新用、フリーレント、ADを反映した客付け費用率は都心で3.1%、地心郊外、郊外築浅で5.2%と想定されます。


■■ワンルームの年間運用経費額算出方法

1部屋あたりのワンルームの年間経費をシミレーションして、築10年以内、築古10~20年程度、築20年以上の3つに分けて年間経費額を算出します。

■エアコン費用
8年間ごとに8万円のエアコンに交換。⇒年間経費1万円

■火災保険&地震保険費用
火災保険と地震保険は5年契約で一部屋あたり5万円程度。
⇒年間経費1万円

■共有部電気代&水道代
電気代&水道代は1部屋あたり月350円程度。⇒年間経費0.4万円

■清掃費用
1部屋あたりの清掃費は月1000円程度。⇒年間経費1.2万円

■退去時リフォーム代、清掃費
リフォーム代、清掃費は4年間の退去時期16万前後、そのうち半額程度を大家が負担する。⇒年間経費2万円×4年

■浄化槽、貯水槽費用
浄化槽、貯水槽があるAPは少ないです。
⇒貯水槽年間経費0.1万円、浄化槽年間経費0.2万円

■消防設備点検費用
消防点検費用は法律で義務付けられている。⇒年間経費0.4万円

■修繕費
修繕費は建物築年数により大きく変動します。
ここは発生する経費のみ記載して、詳細な説明は省かせていただきますが、全て私の経験値です。毎年積み立てる一定額を経費にします。

排水管は定期的に高圧洗浄が定期的に必要です。
10年目あたりから、換気扇、給湯器、ウォッシュレットが壊れ始め、10~15年目あたりに屋根&外壁の修繕、塗装が必要。
20年目以降では8部屋程度のAPであれば2~3か月に1回程度に何
かしら壊れたと連絡があります。
これに対応できない人は管理会社に任せることを推奨します。

築10年以内
排水管の高圧洗浄、10年目に換気扇の交換費用、その他修繕費用
⇒年間経費1万円程度と仮定

築10~20年程度
排水管の高圧洗浄、屋根&外壁&階段の塗装、給湯器交換、外壁修繕、共用部電気設備交換、トイレウォッシュレット交換等、インターホン交換
⇒年間経費6万円程度と仮定

築20~30年程度
排水管の高圧洗浄、屋根&外壁&階段の塗装、給湯器交換、外壁修繕、共用部電気設備交換、トイレウォッシュレット交換等、とにかくいろいろ壊れてくる。
⇒年間経費9万円程度と仮定


■■ワンルームの年間運用経費額合計

図0-3はワンルームの年間運用経費を一覧にまとめた表です。
古くなるほど運用経費が高額になり、築10年以内年間7.3万円、
築10~20年年間12.3万円、築20~30年で年間15.3万程度経費が想定されます。

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■■家賃金額ごとに運用経費率を求める

図0-4は上記で算出した運用経費を年間家賃額で割り、経費率を算出して一覧にまとめたものです。
例えば家賃2万円築10年以内で年間運用経費率は30.4%。家賃が高いほど経費率は下がります。
低家賃ほど運用経費率が高くなり、実質利回は大きく低下します。

        図0-4 

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■■低家賃物件の表面利回は信用できない

 たまに家賃月2万円程度で利回20%の投資物件が売られていますが、私は低家賃物件は投資対象外、運用経費だけで家賃の半額以上の経費がかかり、ここから管理手数料、固定資産税、都市計画税、所得にかかる税金を引いたらほとんど残らないからです。

■■管理会社への管理手数料
 
管理会社へ支払う管理手数料は一般的に家賃の3~5%程度です。


■■固定資産税、都市計画税の経費率
 
固定資産税&都市計画税として木造、軽鉄は家賃2~4%程度、建物価値が高いRCは家賃5~8%程度の経費がかかります。
建物には固定資産税、都市計画税の減免措置はありませんので固定資産税が高額になります。

■■固定資産税&都市計画税概要
固定資産税固定資産税評価額(課税標準)×1.4%
都市計画税固定資産税評価額(課税標準)×0.3%
住宅用土地は住宅1戸につき200㎡までが固定資産税1/6、都市計画税は1/3にそれぞれ軽減されます。200㎡を超える部分は固定資産税は1/3、都市計画税は2/3に軽減されます。


■■シミレーションをすると一目瞭然。表面利回は信用できない

都心木造新築7%、都心郊外木造築15年9%、地方郊外築30年13%の利回がほぼ同じ。

地方ワンルーム家賃3万円利回13%でも経費を引いたら手残り率は5.8%。

ここからまだ引いていない金利、税金を引いたら手残りはわずかです。

不動産投資は儲からないのでです。

逆に家賃が高い都心は割と表面利回が信用できます。

①都心ワンルーム利回7%、木造新築 家賃8万円の場合
表面利回り7%×(100%-客付費用率3.1%-運用経費率7.6%-管理費率5%-固定資産&都市計画税比率4%)=5.6%

②都心郊外ワンルーム利回9% 木造築15年 家賃5万円の場合
9%×(100%-客付費用率5.2%-運用経費率20.5%-管理費率5%-固定資産&都市計画税比率3%)=5.9%
地方ワンルーム利回13% 木造築30年 家賃3万円の場合

③地方ワンルーム利回13% 木造築30年 家賃3万円の場合
13%×(100%-客付費用率5.2%-運用経費率42.5%-管理費率5%-固定資産&都市計画税比率3%)=5.8%

■あとがき

いかがでしたか?

私なりのシミレーションです。異論、反論等たくさんあるかと思いますが反響をいただけたら幸いです。

それでは。

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