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腰痛予防と体幹力

今は空前の人手不足で、今後もしばらく続くものと予測されています。経済が回復して、さまざまな業種、業界で需要が増加しても、労働者を確保できずに機会損失している経営者も多いと思います。

労働力を確保するためには、給与を高くして労働者を募集するのが手っ取り早く、本質的な方法ですが、それに合わせて他の社員の給与もあげなければならないので、労務費が高くなります。高い給料を払いたい、でも、労務費を充当する利益が確保できない。というジレンマに陥っている経営者も多いのではないでしょうか?

地方に進出した外資系のスーパーマーケットなどは高い時給を提示して、スタッフを集めていて、地場の製造業から転職が相次いでいるという話も聞きます。ますます新たな労働者を雇用するのは難しくなってくるでしょう。

そうすると新たな労働の担い手を生み出していくしかありません。これまで労働市場に参加していなかった人たちに活躍してもらい、離職しないよう労働者をつなぎ止めておく仕組みを考えなければなりません。

新たな労働の担い手となるのは、高齢者や外国人です。外国人の場合は言語の問題もあり小さな会社ではコミュニケーションの課題が残るでしょう。高齢者の場合は体力が低下で転倒や腰痛などの労災が心配です。

そこで今日は高齢者に多い腰痛について考えてみます。

当社が提供するサービス「軽労化ナビ」は、簡単な体力測定の結果から、体幹力を推定します。体幹とは、手足や頭以外の胴体のことで、脊椎(背骨)と内臓を納める腹腔、それらを包み込む筋肉からなっている部分のことです。

体幹

脊椎は加齢とともに脆くなってきます。腰の部分を圧迫した場合に椎間板(背骨の骨と骨の間の軟骨組織)が破壊される強度(N)を示したのが下記の表です。Nとは力の単位で、10Nは概ね1kgfです。
人の上半身の重さを体重の6割とすると、70kgの体重の人の場合、直立しているだけで腰の部分の椎間板には、およそ420Nの力が加わっていることになります。

直立から前傾姿勢になると、およそ630N(直立時の1.5倍)、前傾状態で手に荷物を持つと920N(直立時の2.2倍)の椎間板圧縮力となります。もちろん、荷物の重さが増えたり、深い前傾角度になればなるほど圧縮力は増加します。

さらに、反復動作や動作速度、ひねり、作業時間によって負荷はどんどん増えていきます。

ちなみに、椎間板圧縮力の許容値は性別や年齢によって異なりますが、加齢によって許容値は低下していきます。

Jager M, Luttmann A. Assessment of low-back load during manual material handling.

一般的に60歳以上の女性では、10kg程度のものを持ち上げる動作が少し続くだけで腰痛発症のリスクは非常に高まると思われます。

しかし、前の体幹の図で示した構造を見ていただければわかると思うのですが、脊椎(背骨)は体幹の中に入っています。骨に直接力が伝わらないように筋肉を鍛え、腹腔内の圧力を高めることができます。

腹腔は腹筋や背筋、横隔膜や骨盤底筋などの筋肉に守られていて、お腹に力を入れて圧迫すれば、お腹が引っ込み圧力は垂直(上下方向)に伝わります。これによって椎間板の圧縮力を低下させることができます。

中年以降にお腹が出て姿勢が悪くなっている人は腹圧が逃げてしまっているので重たいものを持った時にダイレクトに腰に負担がかかります。

「軽労化ナビ」では、多くの体力測定の結果から、体幹力指数、体幹力年齢、体幹力を考慮した腰部負荷許容値を推定しています。

体力のある人であれば、上記の椎間板圧縮力の許容値をグッと引き上げることができるのです。

中高年になるほど、日常的に筋トレやストレッチなどを取り入れないと腰痛等発症リスクが増加します。

腰痛は日本人の8割が経験する疾病ですが、1度腰を痛めると数日間は痛みがあります。そして再び腰痛になったらどうしようと不安感を持ってしまうこともあるでしょう。

できれば、腰痛にはなりたくないものです。