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デザイナーへの「制作依頼」チャンネル改修と、ブルドーザー思考の話

こんにちは。コミュニケーションOpsユニットのmzk1496です。
私の所属するユニットでは、制作フローのアップデートや生産性の分析、採用広報からガバナンスの整備まで、クリエイターの働きやすさをサポートしています。

さて、SmartHRのコミュニケーションデザインセンターには、アイキャッチ・eBook・紹介冊子・営業資料・サービス導入補助ツール・動画・ノベルティといった制作依頼が、毎月約70件届きます。
それらの依頼がスムーズに進む状態にすることで、依頼者・制作者双方の負荷を軽減。さらに、依頼に関する数値を蓄積することで、工数予測に役立てる……といった改修を、2023年2月からこれまでの間に3回実施してきました。

必ずしもこの進め方が正解とは限りませんが、同様に依頼対応の課題に取り組まれている方や、部門をまたいだ業務を進める方の参考になる点があるといいなと思います。

編集部注

  • 本記事は、コミュニケーションデザインセンターの定例会議内「ナレッジ共有コーナー」の発表内容を、一部改変・追記してまとめたものです。

  • mzk1496さんは、その力の強さから、社内で「ブルドーザーのような推進力」をもつと言われています。


依頼チャンネル改修の概要

改修の全体像

SmartHRでは、コミュニケーションデザインに関する業務依頼を、Slackの # design_comm_依頼 チャンネルで行っています。依頼者がワークフローに依頼概要を記載して送信すると、制作側の関係者に通知が届く仕組みです。

なお、依頼チャンネルが生まれた背景は、2021年の記事『「一緒につくる」を仕組みで実現する、SmartHRコムデの依頼チャンネル』をご覧ください。本記事では、2023年2月〜2024年4月の14か月の間に3回実施した改修の話をご紹介します。

依頼チャンネルができたことで、分散していた依頼情報が1か所に集まるように。さらに、複数回の改修を経て、情報が蓄積されるようになったことで、「平均工数」「繁忙期予測」といった情報が出せるようになりました。これをもとに、採用や外部委託の検討が進み、そもそもの「依頼しやすさ」「制作しやすさ」にもつながっています。

改修の全体像

🚧 フェーズ1(2023年2月実施)

課題

  • 依頼されるジャンルや数が増えて従来のフォームでは受けきれなくなった

  • 制作依頼をするときに、依頼者から制作側に「何を伝えればいいのか」がわかりにくい

  • 案件が一覧化されないため、アサイン状況を把握しにくい

期待される効果

  • 制作依頼に不慣れな方でも、フォームを埋めれば施策の要件整理がしやすくなる

  • 依頼時に制作時に必要な要件がカバーされており、デザイナーがスムーズに着手できる

  • 案件が一覧化されることで、誰でも簡単にアサイン状況を把握できる

実施したこと

  • 依頼フォームを5種→16種に増設

    • 制作カテゴリごとに個別に設問を設計し、適切なメンバーに通知が飛ぶように設定

  • 「依頼フォーム→スプレッドシート→Slackに投稿→Asana起票」の流れを自動化

    • 各々が独自の依頼管理→Asanaに依頼情報を集約する形に変更

  • Asanaでのチケットの完了状況を自動でスプレッドシートに反映されるよう改造し、各種分析ができる土台づくり

上記の対応の結果、依頼者の「依頼しやすさ」が向上し、依頼に関する情報の蓄積が始まりました。

🚧 フェーズ2(2023年12月実施)

課題

  • 「件数」「カテゴリ」「どの部門から依頼が来ている」といった依頼の情報を計測できていない

  • 計測ができないため、依頼の分析ができず効果的な打ち手を検討できていない

期待される効果

  • 依頼状況の予測/実績から、デザイナーのリソースが管理できる

  • 具体的な数値から、リソースの逼迫状況を可視化し、採用や外部委託を検討できる

  • 繁忙タイミングを予測し、事前に対策が打てる

実施したこと

  • 各カテゴリの平均工数を算出

    • 対応時の予実工数をデザイナーに記入してもらうことで、算出が可能に

  • 概算の必要工数を算出

    • ブランディング統括本部全体にヒアリングをして、今後の依頼予定の案件情報を収集

    • 依頼予定数に平均工数をかけあわせて、概算の必要工数を算出

  • 概算工数の情報をもとに採用や外部発注の意思決定を仰ぐ

    • 関係部署のチーフやマネージャーに情報を共有し、「この時期は〇〇を外部委託する必要がありそう」といった具体的な話ができるようになった

上記の対応の結果、「◯月は依頼見込みがリソースの80%を超えているので、期日調整や外部委託が必要」といった見立てができるようになりました。

🚧 フェーズ3(2024年4月実施)

課題

  • 2024年1月に大きな組織変更があり、宛先を判別する条件分岐が増えた

  • リソース判断をする人/部門のロジックが変わった現状に、依頼フォームがマッチしていない

  • アサインまでの間に、依頼が複数人の間を周るため着手までのリードタイムが長い

期待される効果

  • アサイン判断を適切なメンバーができる

  • 制作着手までのリードタイムを短縮する

  • 関係しないメンバーにSlackの通知が飛ばない状態にする

実施したこと

  • 組織変更に対応した依頼フォームに変更

  • 依頼者の所属ユニットを自動検知し、適切な宛先に通知が届く形に変更したことで、リードタイムを短縮

  • 依頼用の指示書を、Figjamの依頼テンプレートに集約

上記の対応の結果、制作着手から完成までの期間を短縮し、一部の制作物は基本納期の短縮も実現しました。

改修を進めるうえでの3つのポイント

コミュニケーションデザインセンターには社内のあらゆる部署から制作依頼が届くため、影響範囲が広く、考慮点も多くありました。そのため、すべての人の合意を取って進めることは難しく、自律駆動で、尚且つブルドーザーのような馬力で切り拓くことが求められました。

また、SmartHRはオープンな文化のため、メンバーなら誰でも見える場所にほとんどの情報があり、仮説の大枠をたてられるような宝の山状態になっています。
本件のようなステークホルダーの多いプロジェクトでも活用できる、私が意識していた “ブルドーザー”的な推進のポイントを3つご紹介します。

💡 ポイント1:ステークホルダーを見つける

各ユニット定例会議の議事録を見て、情報収集をする

  • SmartHRはオープンな文化のため、ユニットや部門の定例会議の議事録も公開されており、メンバーなら誰でも見える場所にほとんどの情報がある

  • 関係しそうな活動をしているユニットやメンバーを見つける

  • 各ユニットの月報がとても参考になる

ツールや事象について、Slack検索で情報を集め、関係者や概要を把握する

  • 誰が関係しているかが社内のドキュメントに残っていない場合は、関係する単語をSlackで検索する

会話の流れをウォッチし、「この人が情報を持っていそう/この人と合意を取ると良さそう」のアタリをつけ、情報収集をする

  • 部内やもともとわかっている関係者から何気なくヒアリングできる状態にしておく

  • 同時期に入社したメンバーなど、話しかけやすく且つ仕事以外の話もできる人を増やすと、広く情報が入ってきやすい

  • 関係を築いておくことで困りごとの相談も入ってきやすくなり、課題の収集にも役立つ

💡 ポイント2:要件に落とし込む

まず「絵に餅を描く」ところからはじめる

  • 現実性はいったん度外視し、理想形を描く

  • 餅(理想形)の認識を受益者とあわせる

絵に描いた餅をどうやって、実際の餅にするかを考える

  • まず「やりたいこと」を決めて、「どうやるか」を細かく考える

  • できない場合は「どうやったらできるようになるか」を考える

    • それでもできない場合は要件から外したり、条件を緩和する

  • 進めようとしているものがあまりに大きい場合は、フェーズを区切って段階的に進める

    • 課題の緊急度(対応スピードによる被害・影響の違い)

    • 難易度(低いところから)

💡 ポイント3:ブルドーザー思考をもつ

※ 今まで誰もやってこなかった領域の仕事を、強い推進力をもって進めていくための考え方を、この記事では「ブルドーザー思考」と呼んでいます。関係者が多い中で各所に考慮しながら未開の地を切り拓き、途中で止まりそうになった場合も、周囲への相談などによって乗り越え着実に進め、整えていく、ブルドーザーのような馬力のイメージです。

前例がない場合は「自分が一番詳しい」と思い込んで骨子を組んでみる

  • 骨子を途中で修正する柔軟さがあれば問題ない

  • 仮に失敗したとしても、大事故になるわけではない

全員の100点を目指しすぎず、そのときの最適な形に整える

  • ステークホルダーが多いプロジェクトでは、全員が100点になる答えはないこともある

  • 優先度が下がってしまうニーズについても、小さいベネフィットを用意する

  • ステークホルダーに何かしら受益があるようにすることで、合意してもらいやすい進め方をする

  • やれそうなことは盛り込み、なるべく点数は上げられるように努める

MP(マジックポイント)をうまく管理する

  • 未経験の領域の場合、MPの消費が大きい

  • 成果が出やすい小さな案件を同時に進めることで、達成感によりMPを回復させながら走る

  • フェーズを区切って段階的に成果を出すのもオススメ

最後に

今回は、私が担当した依頼フォームの改修の流れや、そのなかでの気付きをご紹介しました。

社内で「ブルドーザーと呼ばれる推進力の秘訣は何ですか?」と聞かれることがあります。私はストレングスファインダーだと回復志向と最上志向が強く、「困っている原因が何かの追求」と「理想状態に近づける」ことが好きです。でも怠惰な部分もあって、「楽になること」はも〜〜っと好きです(笑)。秘訣があるとすれば、私の考え方の性質と「楽が好き」という2つかもしれませんね。
今より良く、楽になり、生産性向上につながることを考えて、ブルドーザー的な推進力と自律駆動により、グイグイ変革をもたらしていきたいと思っています。

また、私自身、個人的に制作などを行っているものの、デザイナーと言えるレベルでもなく、かといって何も知らないわけでもない狭間の存在です。ゆえに、デザイナーの気持ちも、デザインに触れる機会が少ない人の気持ちも、どちらも共感できるため橋渡し的な思考ができるのかも?と思っています。

正直いうと、成果を上げるための生産性向上は過程でしかありませんが、SmartHRは成果を出すまでの過程も評価してもらえるので、頑張りがボランティアではなく報われる形になっていることもモチベーションになっています。

現在、SmartHR自体もスタートアップからスケールアップに規模が広がり、まさに過渡期です。これからも組織や事業変化にあわせて、制作依頼チャンネルも進化し続けていくと思います!(何なら、制作依頼チャンネルが必要なくなるかもしれない…?!)
関係者の皆さま、これからもよろしくお願いします。


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