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「破壊と創造」、やってみてどうだった?2020年版 年末調整機能の裏側 【PdM,PMM,デザイナーたちはBtoBtoEにどう挑むべきか?公開雑談 Vol.07 イベントレポート】|SmartHRオープン社内報

お疲れ様です。採用広報の瀧田(@takinari)です。
今回の社内報は1/27(水)に開催した公開雑談 Vol.07 のイベントレポートです。
当日は約170名の方にご参加いただきました!

※当日視聴できなかった方は、録画データをGoogle ドライブに格納しているので、レポートとともに是非そちらもチェックしてみてください!

「公開雑談」とは?
『 SmartHR 社内での社員同士の立ち話』をイメージして、ラフに SmartHR のことを知ってもらえたらな、という思いから企画しました。
いわゆる「登壇」とは違った、まるで雑談のような会です。事業や仕事のことだけでなく、働く人の雰囲気も感じてもらえるのではと思います。

今回の参加メンバー

■ファシリテーター
 ▽稲垣 プロダクトマネージャー:@inagakkie1
■雑談メンバー
 ▽西川 プロダクトマーケティング(PMM):@chee_nishikawa
 ▽宮原 プロダクトデザイン(デザイン):@OujiMiyahara
 ▽三好 プロダクトマネージャー(PdM):@hiroki_m1980 
 ▽大塚 ドメインエキスパート(HR):@Chasken6

まずは「年末調整機能」のプロダクト紹介と2020年の開発内容をご説明しました!

5年目を迎えた年末調整機能の法改正対応

PMM西川:2020年で年末調整機能はリリース5年目を迎えました。
SmartHRの年末調整機能の大きな特長は従業員がスマートフォンやPCで簡単な質問に答えるだけで書類が作成できる点です。人事担当者の方は従業員ごとに進捗を確認できます。団体保険情報の事前入力や住宅ローンの控除申告書の作成サポートも含めて、トータルで人事担当者、従業員の工数を減らすプロダクトです。

2020年、年末調整機能の開発における大きなトピックスは2つありました。
1つ目は法改正への対応。これにより、提出する書類が増えました。
もう1つは機能面の拡充。2019年にご利用いただいたお客様の声を反映しました。複数の書類をまとめて確認する機能を追加したり、書類と原本を同時に確認する機能をカイゼンしたりしました。

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稲垣:ありがとうございました! ここから具体的な開発プロセスの話を聞いていきましょう。

1~5月開発フェーズはどんなことをしていましたか?

PdM三好:1月〜2月はスコープの設定ですね。実際にご利用いただいているお客様へのヒアリングやアンケートを実施し、要望を精査して要求と課題の整理・優先順位付けをしました。法改正や他社プロダクトなどの外部環境と社内ビジネスサイドの要望とも合わせつつ整理を進めました。
タイトルにもある「破壊と創造」という言葉についてお話します。
年末調整機能は2016年から提供開始し、管理画面を基に機能が肥大化していったんです。先々の年末調整のあるべき姿や、環境の変化を考えた時に「このままだとしんどいよね」という話を宮原さんと話していました。イチから作り直すという前提で、概念モデルと情報設計を見直しました。

3月からはエンジニアを含めたチームを組み、設計内容や要件インプットを進めて、チームビルディングをしていきました。2020年の年末調整機能をどこまで作るのか見積もり、プロダクトバックログを作りました。

4月、5月になるとお客様の年末調整担当部門の方々が「どうやって今年の年末調整業務を行うか」のフローを検討し始めるんですね。つまりお客様としては「どの機能が出るのか」「どこまで要望が叶うか」を知りたい時期になってくるんです。
そのため「どこまでは絶対に開発を行うのか、どこからが努力目標なのか」の線引きは4月には見定めました。

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稲垣:この時期に連携した職種とかありますか?

デザイン宮原:けっこうトリッキーな開発プロセスを採用したんですよ。急いで作ろうと頑張っていたので、PdMの三好さんとプロダクトデザインの僕とで同時並行的に別々に動いている点がトリッキー(=特殊)だったかなと思います。
三好さんは前年のお客様からのフィードバックや法改正対応など要求整理を進めてもらいつつ、僕のほうではプロダクトとしてモデル構造や情報設計を検討してました。
1月〜2月くらいのタイミングで合流して「要求とズレていないね」と確認して進めてました。
デザイナー側に仕様がドンと降ってくるのではなく、お互いがやっていることを信頼しながら並行して進めていけたと思います!

PdM三好:お互い作っているものを確認しながら進めていたので、ズレることはほぼなかったですね。ただこれはかなりトリッキーな開発だったのでオススメはできないです(笑)
2019年12月に2020年の進め方を相談し、同時進行で進めて途中で答え合わせするほうが早いと判断したんです。共通して認識していた課題は「これまでの情報構造と画面構造では、従業員規模の大きなお客様の要望は満たせない」というものでした。そのため、ここで一度破壊しておくしかないと。この課題認識だけ合わせておいて、お互いに走ったという感じです。

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稲垣:この頃の大塚さん、西川さんはどんな関わり方していましたか?

PMM西川:三好さんと話す場を、1月から毎週設けてましたね。そこで要望の整理、社内への情報展開を相談したりしていました。
2月にはセールスメンバー向けに説明会を設けました。年末調整機能はどういう背景でSmartHR内で作られたのか説明し、2020年の展望をシェアする場にしました。

HR大塚:僕は(2020年)4月に入社したのですが、ちょうどそのタイミングで寡婦の税制が変わったんです。人事労務研究所のメンバーとしてこの変更に気づいて、プロダクト側にフィードバック出来たのが初めての成果でしたね。

デザイン宮原:あれはありがたかった!
今までは人事労務研究所との連携は要所要所でこっちからレビューを依頼していく形式だったんですけど、大塚さんが入社してから一緒のチームとして動いてくれたのはすごくよかったですね。

6〜9月の開発フェーズの振り返り

HR大塚:4月・5月の関わりは浅めでした。
検証に本格的に参加し始めたのは6月〜7月からですね。PMM西川さんと法改正に関する記事を書いたのもこの時期です。

PMM西川:Slackの何気ないやりとりから始まりましたよね。「2020年は所得金額調整控除など難しい法改正が多いので、事前に発信しておきたいよね」というところから企画が進んでいきました。

PdM三好:知識と正確性が求められるプロダクトにおける、ドメインエキスパートの存在の重要性を痛感しましたね。もしいなかったら要件や仕様の漏れが発生していたかもと振り返って思います。
ドメインエキスパートがいるので、法改正や制度変更に伴う仕様の変更に関しては、概念と要件を自分が決めたら、なぜそのような仕様にするのか背景の説明はプロの大塚さんに任せようと役割分担しましたね。そのほうが上手くいくと思って割り切って任せました。

PMM西川:6〜9月はセールスやカスタマーサクセス(CS)への社内説明会を開催していましたね。
社外向けには、新規でSmartHR導入を検討いただいているお客様向けにも年末調整をフックとしたセミナーをやっていました。実際にSmartHRを導入しているお客様にパネルディスカッションへ登壇してもらい、SmartHRで年末調整を実施するイメージを持っていただくコンテンツを作りました。

PdM三好:年末調整機能は、リリース後に使っていただいているお客様からのお問い合わせが格段に多くなるのですが、CSやカスタマーサポート(SP)メンバーが正確な情報と知識でお客様とコミュニケーションを取れているかはとても重要です。そのため、リリース前の6〜9月の期間から西川さんと私でCSやSPメンバーにプロダクトの機能と背景、利用方法を定期的に伝えていました。
また、従業員規模の大きなお客さまですと、この時期から年末調整の運用プロセスを検討されるケースが多いです。そういった意味でも、こうした取り組みは重要だと思っています。

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10〜12月の開発フェーズの振り返り

デザイン宮原:タイミング的にはリリースした後くらいですね。

PdM三好:この期間はお客様にトラブルなくサービスを提供し続けられるかが重要な時期です。6〜9月に行ったPdM、PMM、CS、SPとの情報共有が上手く機能していたことがよかったと思いましたね。

HR大塚:リリース前にウェビナーもたくさんやっていましたよね。

PMM西川:ウェビナーを通じてCSが知識のインプットをしてくれていたので、お客様とのコミュニケーションにも役立ったのではないでしょうか。CSの年末調整プロジェクトチームが自律的にやってくれていました。

稲垣:この時期はお客様からの声がどんどん返ってくる時期ですが、急を要した対応など印象的な出来事はありましたか?

PdM三好:管理者用の画面についてはイチからリニューアルをしたのですが、優先順位の関係で、落とさざるをえない機能もあったんですね。落とした部分に関して、カイゼン要望をいただくこともありました。リリース後のUI変更は、お客様には嫌がられるのですが「ここは修正しなきゃいけない」という箇所の取捨選択と、その情報をCS、SPに伝えていくことは神経をすり減らす部分が多かったです。

デザイン宮原:業務アプリケーションならではの話だと思うんですが、お客様の中にはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用されている方もいらっしゃいます。そうした状況下で、ボタンの色や位置を変更するとロジックが壊れてしまうので、リリース後の10月〜11月はデザイナーは手を出しづらいというのはありました。

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稲垣:大塚さんはこの時期はどんな関わり方をされていましたか?

HR大塚:リリース前ギリギリのタイミングで、住宅ローン控除申告書のレイアウト変更に気づいたんですね。あれは大変でした。入力する項目が従来の書類と異なるため、住宅ローン控除を受ける人に与えるインパクトがとても大きかったです。

またその時期に問い合わせ対応のチームにも入れてもらいましたね。
ドメインエキスパートとして、開発チームとの関わり方、プロダクトへの貢献の仕方はどうすれば良いか考えていました。

PdM三好:問い合わせには、制度や法の解釈まで考える必要があるものもあり、プロダクト側で全て行うのは結構難しいと思いました。大塚さんにお任せすることで、回答までの時間を短縮できました。

お客様の声とSmartHR従業員アンケートをご紹介!

PMM西川:初めてSmartHRをご利用いただいたお客様からは「工数を削減できた」「法改正にもしっかりと対応していた」という声をいただきました。
SmartHRの従業員にも、実際に自社サービスを使ってみてどうだったか、アンケートをとりました。「入力内容が自動保存され、操作途中で一度その画面から離れることができて便利」「スッと終わったので、いい意味で印象がない」などの意見がありました。

PdM三好:業務用ソフトウェアに携わっていて褒め言葉だと感じるのは、苦労することなく終わったと言ってもらえる時です。
初めてSmartHRを使う方は紙と比べると体験が変わるので「感動した」「驚いた」とよく言っていただけます。(SmartHRでの年末調整が)2年目以降の人に「スッと終わって印象がない」と言ってもらえるのは安心しますね。

視聴者の皆さんのご質問にお答えしていきます!

質問:住宅ローン控除など、その年度からの新たな変更の場合、他社比較もなく、リリース前の検証を行いにくいと思いますが、ユーザーテストや顧客への事前の検証等はどうされていましたか。

PdM三好:外部の税理士さんや社労士さんに見ていただいていますね。また、実際にモックアップレベルでお客様に見ていただくなど、社外の方の目を通していますね。

デザイン宮原:デザインの invision をお客様に見ていただく時間も取りました。

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質問:要望の開発優先順位は何を基準に決めるのですか?

デザイン宮原:一言で言うのは難しいですね。

PdM三好:これ難しいですね。フォーカスすべき課題が何かが決まっていることが大前提ですね。年末調整にかかる業務プロセスの中で「どれだけ担当者さまの業務における煩雑さを削減することができるか」の観点で決めています。

デザイン宮原:今年の目標は「人事労務担当者の腱鞘炎をなくす」になりそうでしたね。
これはほぼ冗談ですけど、画面からいい匂いを出すなどアイディア出てました。まぁきっとこれはやりません(笑)。

PdM三好:でもこうした発想もばかにならないと思うんですよね。年末調整って担当者の方にとっては、まったく気が抜けない業務なんですよ。機能での課題解決以外に、エモーショナルな部分に訴えかける部分としてそういう機能があってもいいんじゃないかと思うこともありますね。

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質問:開発優先度は利益の大きさなどはあまり考えずに「お客様の負荷を下げられるか」という観点ということでしょうか?

PdM三好:お客様の業務の煩雑さ、負荷をいかに下げられるかがこのプロダクトの価値であって、常にその価値を提供できればお客様に使い続けていただけると思ってます。提供し続けることで、利益はついてくると思っていますね。

デザイン宮原:SmartHRの年末調整の機能は単品売り、アップセルのプロダクトではないので、営業的利益でジャッジすることはないですね。お客様のサクセス、経済的発展が一番重要です。

質問:お客様の作業効率を上げることがゴールだと思うのですが、リリース後の効果検証はどのように行われましたか。

PdM三好:個人情報がわからない形で、年末調整が始まって終わるまでの期間や、差し戻しがどのくらい発生しているかなどの数値を見ています。そこから追うべきKPIをいくつか設定して年末調整終了後に振り返っています。
わかりやすいところでいくと人事労務担当者からの差戻し率ですね。ここが昨年比で悪いと、何か問題があったのではないかと予想して深堀ります。
ただ数字だけでなくて、ヒアリング、定性的なアンケートも実施して総合的に判断していく感じですね。

質問:定量的な数字に現れない、少数のお客様の意見を拾い上げるプロセスはありますか?

デザイン宮原:プロセス化はしていないですが、いただいたご意見は全て開発側で見ていますし、チケット化して優先度を決めています。

HR大塚:お客様にチャット上でいただいた要望も1つずつ見ていますね。

PMM西川:CSメンバーが直接ヒアリングしているなかでいただくご要望もありますね。

稲垣:固定のプロセスはないけど、ルートは確保されているという形ですね。

質問:開発手法、開発プロセスなど去年を踏まえて改善予定のものはありますか?

PdM三好:開発とCS・SPとの間の情報伝達にはまだまだカイゼンの余地があると思っています。今年は開発の段階でステークホルダーを巻き込むことを意識したいです。

質問:開発時期はどのくらい先のスケジュールまで組んでいますか?またそれは途中で変更可能ですか?

PdM三好:プロダクトをリリースする時期に関しては変更できる要素はほぼないですね。

デザイン宮原:基本的に何月に何を作るというようなスケジュールはないですね。
開発しているメンバーの経験値を一緒に1年間で積んでいくようなイメージで、たとえば1ヶ月経験してそこからどれくらいのベロシティが出せるかを常にチューニングしながら、いつリリースできるのか予想をアップデートしている感じですね。

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ここで一旦次のテーマである2021年への展望へ

PdM三好:2021年の目標は2つあります。
1つ目は従業員規模の大きなお客様をはじめ、どのようなお客様が使ったとしても、無駄な待ち時間・作業を削ぎ落として最短で欲しい結果を得られるプロダクトを目指して機能追加、機能改善していきたいと考えています。
2つ目は正確性の追求ですね。今年はすでに1月からQAや大塚さんを巻き込んでチームが始動しています。

稲垣:そこは結構大きいですよね。昨年(2020年)で言うと一度解散して、3月に再集合だったところを、今年は2ヶ月前倒しで始められている。

デザイン宮原:昨年、国からも年末調整ソフトが出ていますが、近い将来、紙による年末調整がなくなると思うんですね。それを実現できるようなプロダクトにしていきたいというのが1つ。
もう1つは社内的なものです。PdM、プロダクトデザイナー、エンジニアによる「プロダクト開発の三権分立」があると思っていて、そのバランスを昨年よりももっとよくしていきたいと思っています。
PdM、プロダクトデザイナーはプロダクトの破壊者、エンジニアはプロダクトの守護者として機能を強化したり、一緒にシナジーを生みながらやっていきたいと思います!

質問:「三権分立」ということですが、最終意思決定はどなたがやってますか?

デザイン宮原:意思決定の役割としてはPdMがやるべきと思っています。ただPdMだけで決定するのではなくて、意思決定するためのプロセスをPdMも出すし、エンジニア、デザイナー、ドメインエキスパートも出す。それを踏まえてどういう方向性にするかの最終的な意思決定はPdMがするという感じですね。

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HR大塚:僕も個人的な目標が2つあります。
1つ目はドメインエキスパートという職種に関して、これから新しく一緒に働いてくれる方を採用すること!
ドメインエキスパートは法改正へのキャッチアップから始まり、プランニング系のフォロー、レビューを行います。その後は、ドメイン観点でのユーザーテスト、スプリントレビュー、実装レビューなど幅広くプロダクト開発に関与できますので、ぜひ、お気軽にカジュアル面談でお話ししましょう!

もう1つは、プロダクトのベストプラクティスをドメインエキスパートとして考え、提案していきたいです。PdM、PMMを巻き込んでやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします!

PMM西川:去年は一つひとつの施策が突発的で点になってしまいました。今年は全体的なタイムラインを引いて「いつやるか」「なぜ今やるのか」を周囲に伝えて腹落ちしてもらいつつ取り組めるようにすでに声がけしています。
途中で出てきたアイディアも、そのタイムラインに合わせてどこにプロットするか全体感を見ながら進めていきたいと思います。

終わりに

年末調整というコアなトピックスですが、たくさんの方に視聴・ご質問をいただきました!

PMM / PdM / ドメインエキスパート / プロダクトデザイナーは絶賛募集中です!
もしお知り合いにピンとくる方がいらっしゃったら、ぜひお声がけしてみてくださいね!


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