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今後起こるであろう、労働者のいない社会の現実味【熊本県のあるラーメン店閉店の記事に思うこと】

毎日新聞が、興味深い記事を発信しています。

それは、熊本県にある、とある老舗ラーメン店の閉店に関する記事です。

この記事とても、興味深いです。

それは、需要はあっても労働者の不足によって、撤退というこれまでの経済の常識とは別の力学が働いている現象が起こっているようだからです。

熊本県は、台湾の、というか、世界的な半導体メーカーTSMCの工場進出で湧きに沸いていると報じられています。

そのこともあり、

天外天を経営する「小田圭太郎商店」の小田圭太郎社長(47)は「工場の工事関係者や関連する来客が安定的に見込めそうだった」と移転を決めた。オープン後は想定通り、工場の工事関係者や、半導体関連企業の社員とみられる日本人らが来店し、移転前と同様ににぎわった。  

上記記事より

となるまでは、これまでの教科書通りの展開ですが、

ところが、

1年後の23年8月、昼・夜の営業から昼一本に絞らざるをえなくなった。原因はスタッフ確保の難しさだ。2年前の移転オープン当初、学生のアルバイトを含めて数がそろっていたスタッフは卒業などで次第に減っていった。人手不足は飲食業界も例外ではなく、その後の採用も思うように進まなかった。

上記記事より

これがとても興味深い動きだと感じています。これまでの経済の常識では、労働者も需要のあるところに移動し、需給ギャップは調整されてきたであろうからです。

しかし、現実は、労働者はやってこない。

毎日新聞の記者さんは、これをTSMC関連の企業が好待遇で労働者を奪っているからと結論づけていますが、もちろん、それもあるでしょうが、私は、そもそも市場で待機している労働者の絶対数が少ないからではと思っています。

これは、塾講師をしていると、労働者の絶対数の減少はすでに起こっているのではと痛切に感じるからです。
科目別の人的供給という点では、英語の先生が若干余り気味かなと感じますが、理系は完全に人手不足です。
皮肉なことですが、勤務塾では塾から九州大の理系学生を送り出せているので、なんとか学生講師さんが戦力になってくれているという現実があります。

中小企業の場合、給料を上げられないから人が来ないと思われがちですが、実際には、そもそも人がいないのかもしれないのではと思っています。

これまで飲食店を中心とする労働者は、ほとんどが女性で、ご家庭との両立でパートでの時短勤務という点で労働供給機能があった。これが衰えているのではと思っています。

理由は様々でしょうが、一因として大きいのかなと思うのが、パートでの収入では高騰する物価や高すぎる税および社会保障費などを賄うには不十分で、フルタイムの労働市場へと労働力が流出しているのではという点です。

この記事から見えてくるのは、今後は需要があっても労働者がいないことで、経済が縮小していく現実です。

今後、企業は少ない労働者によって業務を回すことが求められ、これが機械化を加速させるでしょう。外国人労働者への奴隷的な待遇も、国力の低下と他国も労働者不足という現実の中、早晩通用しなくなる。

竹中平蔵氏が「日本の正社員は恵まれすぎ」などという妄言が通用することはなくなる世界が待っているのかなと思います。

資本主義は進化し、金融市場でのマネー取引が主戦場となっている一方で、足元から「商品」の供給能力が今後衰えていく社会が待っているかもしれません。

どんなにお金があっても、下部構造に属する労働者がいなければ、サービスを受けられないという社会がもしかしたらやってくるのかもしれません。

外食できる飲食店が激減し、介護サービスは施設の取り合いとなる世界。

これは、形を変えたインフレなのかもしれませんが、そのとき私たちは、そもそもマネーとはただの数字でしかないという現実を知るのかもしれません。

今後も熊本のラーメン店さんのような事例は増えていくのではと思います。
いろいろと「常識」を書き換えていかないといけない時代なんだなとしみじみ思うニュースだったと感じています。

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