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私たちがこの30数年で失ったものを問う(4)【製造業の停滞が生み出した負の連鎖】

私たちは、この30数年で何を失ったのか。それを考えています。

前回はこちら。

自宅のテレビは、中国製です。もう長く使っていますが、壊れることもなく、しっかりと仕事をしてくれています。

私はテレビを買い替えるにあたり、大型電気店を回り店員さんにいろいろ話を伺いました。ただ、日本の家電メーカーのテレビはどれも横並びで、機能だけでなく、デザインも一緒であることがなんとなくではありましたが、納得感を見いだせず、不満に思うところでした。

私が希望する価格帯と画面の大きさのテレビは、判で押したように足が一本で、パソコンのディスプレイのようなデザインばかり。

テレビを観るときくらいは仕事を連想しないデザインがいいな・・・と思ったことをよく覚えています。

それでも、国産メーカーを買うべきなんだろうと思っていたそんな時に、ネットで見つけた記事がありました。それはあるブロガーさんが書かれた中国製のメーカーのテレビのレビュー記事でした。

そのテレビは足が二本で洒落ている。さらにベゼル(ディスプレイの端の部分)がほとんどなくこれもいいなと思いました。

リモコンに不満があるけれど画質、音質は問題ないとの記事の信憑性を信じて思い切って購入しました。

結果、買ってよかったと思いました。

その話を周囲にすると、
・中国製は、粗悪品だ。馬鹿な買い物をした。
・すぐ壊れる。
・日本製がいいに決まっている。

という反応ばかり。まあ、私も購入する前はそう思っていたこともあり、買わないとわからないだろうとも思っていました。

そんなことを思っていると、

というニュースが飛び込んできました。

そう、私が買ったテレビはハイセンスのテレビだったのです。

私はこのとき、時代は変わる。中国製は脅威になると確信しました。

その前後当たりから、日本の製造業は競争力を失っていったように思います。かろうじて何とかなっているのは、トヨタ自動車とパナソニックくらいというのは、大げさな表現ではないでしょう。

この製造業の苦境は、政治的な意味を持ちました。製造業を支援するための円安政策です。
円安政策は、輸出企業には為替レートの恩恵があり、あと消費税の輸出戻し税というプラスもあり、製造業を一服させた良い面がありました。

ところが、この政策の効果は、長すぎる政策期間もあり、限界に近付いていると判断するべきなのでしょう。

それが原材料費の高騰です。食糧需給率の低い日本は、多くの「食」の原材料を輸入に頼っており、当然の結果として、食料品の値上げラッシュとなりました。

円安政策は時間稼ぎ政策でもあるので、その間に本来は輸出企業が国際競争力を回復させる必要があったのですが、そのような結果になっていません。

日本の製造業はすでに国際競争力を失っており、円安による売上拡大よりも、仕入れコスト増加に悩まされており、企業業績は改善していない。円安になれば、見かけ上の売上高と利益は増大するため、新聞には「過去最高益」などという文字が踊るものの、製造業の営業利益率はむしろマイナスとなっており、円安で儲からない体質になっている。

記事より

日本の製造業が国際競争力を失っているのですから、円安程度の支援では限界がある。先進性とそれを担保する技術力がないと市場から淘汰される。かつて、日本のメーカーがGEのテレビを駆逐したように、日本のメーカーは、中国や台湾、韓国などに追い詰められている。

日本の製造業の転落が可視化されたのは、ここ10年程度のことですが、経済における「慣性の法則」を考えると、その萌芽は30年ほど前、つまり、バブル崩壊後のアプローチに問題があったのだろうと思います。

その本質的な問題を洗い出して、問題点をいかに把握することができるかが問われているように思います。

少なくともこの30年で学んだことは、小手先でなんとかできるレベルではないということなのでしょう。

このままでは、未来はもっと暗いということはよく理解しておくべきなんだろうと感じています。


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