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スウェーデンがイノベーションハブになる理由①働き方の魅力

なぜスウェーデンでイノベーションが起こるのか?

前回の続きです。なぜスウェーデンがMinecraft、Skype、Spotify、Klarnaなどのユニコーンを産んできたのか、なぜFinTechをはじめとするスタートアップや初期成長企業が集まるイノベーションハブになっているかです。まず人の面からみると、教育制度と雇用制度の組み合わせで、不採算企業や衰退産業からは自然に人がいなくなり、成長産業に移動していく仕組みが出来上がっています。


仕事を辞めることへの不安感の低さ

北欧は社会保障が充実していることで知られています。将来への不安感が低いことは、働くことへの考え方に影響します。労働市場の流動性、という観点で見た時、一つの会社に留まらず、自分に合わなければ合う仕事に移っていくことに肯定的です。内閣府の13歳から29歳までの若年層への調査によれば、転職に否定的な人の割合は調査7カ国の中で最も低く23.5%(辛くても一生一つの職場で働き続けるべき+できるだけ転職せずに同じ職場で働きたい合計。日本は28.0%)、肯定的な人の割合は45.0%(職場に不満があれば転職する方が良い+不満がなくても才能を活かすためには積極的に転職する方が良い合計。日本は32.9%)と調査7カ国の中で最も高くなっています。
その他の調査項目をいくつかピックアップしましたが、スウェーデンの若者には圧倒的な将来への楽観性が見られます。日本の若年層は不安でいっぱい、なのに対して、です。

内閣府調査 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)
内閣府調査 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)
内閣府調査 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)
内閣府調査 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)

そのための社会制度①:仕事を辞めても失業補償がある

これを支える制度として失業補償の手厚さは特筆に値します。受給条件を満たしていれば(失業保険に加入していて、基準時間以上、失業時の補償は、300日まで受給でき、18歳未満の子供がいる場合はプラス150日受給できます。支給額は最初の200日までが失業前の収入の8割、それ以降が7割です(上限あり)。受給条件を満たしていない場合も、最大で510クローネ(7,000円弱)/日受給可能です。一方で、大学の授業料は無料なので、その間に新しい成長分野の勉強をし直すことができます。
(*1)過去12か月中の6か月間、労働時間が月60時間以上etc.かなり基準は緩い

そのための社会制度②:学生に戻ってステップアップ準備できる


大学生は授業料免除の他に、CSN(Centrala studiestödsnämnden)から生活費の低金利ローンが借りられるので、基本的にアルバイトなどをせず、学業に集中できます。CSNからの学生ローンは金利は0.0××%(時々変わりますがほぼゼロ金利)で最長で25年、60歳(64歳までだったのが昨年短縮)までに返済すれば良いので、この制度は若年層だけではなく、社会人の学び直しにも適用され、失業保険の給付が終わってしまった長期失業者用の奨学制度もあるので、大学で先端分野の勉強をして新たな仕事に就くということが当たり前になっているのです。

不採算企業や衰退産業で働いている人は、失業補償があるので、会社にさっさと見切りをつけて辞めていきます。そして、学費無料・学生の期間中の経済的サポートを受けて、ITや環境関連などの成長産業に移動するための勉強をします。このようにして、新しい分野に人が移動していく仕組みができているというわけです。

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