見出し画像

Swedenがイノベーションハブになる理由②諸々のハブである

閑話休題。スウェーデンがイノベーションハブになる理由に戻ります。その2は、なぜ北の端の人口1,000万人程度の小さな国にイノベーションを起こす人材が集まるのか、という話です。

北欧のハブ


国際決済銀行(BIS: Bank for International Settlement)は2021年にStockholmにイノベーションハブを設置しました。イノベーションの専門家のネットワーキングを行い、中央銀行が協力して金融の技術革新を促進するためのもので、香港・シンガポール・スイス(2019年)についでロンドンとストックホルム(2021年)に設置されました。ストックホルムのハブはNordic Centerと呼ばれ、デンマーク、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの銀行が協力します。言い換えれば、BISや中央銀行と密な連携により先進的なFinTechの実験場となることを意味します。

ダイバーシティ先進国


スウェーデンは様々な意味でダイバーシティを重視しています。2020年時点で移民割合は19.84%(日本は2.89%)、2022年の世界ジェンダーギャップ指数で5位(日本は139位)でした。女性の専業主婦(という概念がない)率は1%以下、つまり働ける人はみんな働いています。障がい者の世話や高齢者介護に公的なサポートが十分あり、日本のように家族の中の女性にその負担が集中するということがないということが条件になります。

IT分野ではジェンダー平等は特に進んでいて、ストックホルムのハイテク企業のうち100社以上が「A Woman's Place」を宣言し、女性や男性の機会均等を支援しています。
Safello(デジタル通貨関連のFinTechスタートアップ)のCEO Frank Schuil氏曰く、アムステルダムからストックホルムに拠点を移した理由は、ストックホルムという街に惚れ込んだからだそうです。
「金融当局がデジタル通貨に積極的で、優秀なプログラマーが大勢いることに加え、スウェーデンの国民皆保険制度、480日を超える手厚い出産・育児休暇など、「ワークライフバランスを実現できる会社を作りたい」というビジョンにピッタリだった」というのです。

内ではなく外を向く姿勢


スウェーデン経済は国内市場が小さく、輸出に頼っています。そのため、起業家は最初から国内ではなく世界を見てビジネスを企画します。スーパーの店員、レストランやショップのスタッフ、バスの運転手、ほとんど誰でも英語でコミュニケーションができます。最近の小学生への調査では、学校教育はスウェーデン語よりも英語で受けたいという子供の方が多かったとのこと。内閣府の若者への意識調査(13歳から29歳対象)では、国際的な視野を身につけているかどうか、という質問に対して、十分もしくはある程度身につけているという肯定回答をした割合は、日本が29.4%に対して、スウェーデンは64.6%(ドイツ68.9%、フランス68.1%と欧州勢は総じて高い)でした。

Q29 国際社会の一員としての役割を果たしていくために必要な「異文化理解力・対応力」(たとえ ば、自国と他国の文化・歴史・社会を理解し、互いの生活・習慣・価値観などを尊重して、異な る文化の人々とともに生きていくことができる態度や能力)を、自国の国民はどの程度身に付け ていると思いますか。この中から1つだけ選んでください。(回答は1つ)


サステナビリティをビジネスに


SDGsやESGへの関心は世界的に高まっており、日本も例外ではありませんが、そうしないとプライム市場に残れないとか、ESG銘柄に選ばれて株価が上がる的な議論ばかり。今ある市場の枠組みが限界にきているのに、です。既存システム中にサステナビリティ経営を当てはめようとするのではなく、新たな枠組みを描いて、新たなビジネスの機会を見出し、その機会を実ビジネスに繋げる必要があります。スウェーデンだけでなく、北欧にはそういう取り組みをしている企業事例が多数あるので、それについては別途紹介しようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?