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不審者コレクション(1人目)

街を歩いていて不審者に声をかけられるのがちょっとした趣味なんだけど、履歴書に書けなくて困る。

旅行ができず見せびらかす写真もないから、これまで会った不審者の紹介をします。

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大学1年の時くらいだったと思う。冬の池袋駅構内。

「お姉さんすみません」

と、見知らぬおじさんが話しかけてきた。

私は声をかけてきた相手の話はとりあえず聞く。キャッチにも会釈する程度には優しいので。あと怪しくて面白そうだから。
知らない人に声をかけられた緊張のドキドキと、何を言われるのだろうというドキドキ。

「芸能界興味ありませんか?」

ただのスカウトおじさんだった。

「うーん、ないですね」

うーん、とか何の意味もなくちょっと悩むフリをしたが、本当になかったので正直に答えた。
そりゃ私も人気者になることに多少の憧れはあった。オタサーの姫になってサークルぶち壊してみたいなーとか、地下アイドルになって物好きなファンから搾取してみたいなーとか。未だに思うもん。まあ、鏡を見たらそれが無理なことくらい分かるんだけども。
じゃあ、と歩き出した私に付いてくるおじさん。諦めないんか。

「なんでですか?」

なんでですか??いやそんなん分かるやろ。

「成功するとは思えないので」

芸能界で成功するビジョンが1ミリも見えないからだよ。
芸能界なめてんのか!そんな甘い世界だと思うなよ!知らんけど

「えー、そうですか?お姉さんスタイルいいので声かけさせてもらったんですよ」

いや、コート着てて見える体のラインとかタイツ履いてる脚しかないのに?透視できちゃうタイプのおじさんなんだろうか。なんか面白くなってしまった。というか、今歩いてるのがどこか知ってる?チェリーロードだよ。チェリーロードつったらアニメイトへの神聖な道の一つって知らない?

オタ女に並進して声をかけ続けるおじさん。アニメイトまで付いてくる気か?
段々哀れに思えてきて、ほんと大丈夫なんで、と断る。多分20メートルくらいは一緒に歩いた。そしたら、おじさんはようやっと諦めたようだった。

「じゃあ最後に……グラビア興味ないですか?」


>>>AV堕ちフラグ<<<


「ないですね」

全然ないよ。むしろグラビアのその先のビジョンまで見えたよ。おじさんは私のスタイルを透視したみたいだけど、こっちの千里眼じゃおじさんの思惑がスケスケなんだよ。

「そうですか……では」

では、じゃねーよ。すげー付いてきたくせにスマートに去ろうとするじゃん。20メートル一緒に歩いた仲じゃん。あんなにしつこかったのに、別れ際だけそんなあっさりなんて……さみしいとか思ってないんだからね。
永遠にさようなら。

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