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配属先は、脚本課。②


  脚本課の仕事は、主に生きている人間の日常を書くことだ。

  知らないのは生きている人間だけである。

  全ての事には意味がある。いや、正確には、脚本課の書き手による意図がある。


  人、ひとりの人生に、多くの書き手が携わる。二十代、三十代と年齢別、または性別、青春、恋愛、家族、仕事、冒険、ミステリー、グルメ、旅…。

  あらゆる分野の作品を、いろんな書き手が携わって書いている。だから人生は色鮮やかだ。

  たまにひとりの人の人生を、一人の書き手のみで書き上げる場合もあるらしい。まぁ、私にはその辺の事情はよく分からないでいる。


  私の仕事は、コンビニに入って来た対象者(主人公とも言える)が、買い物をして去っていくまでを描く。配属された新人は、まずそこで鍛えられる。


「きみねぇ、」

  これは上司の口癖。

「はい。すみません。」

  これは私の口癖。

「いや、まだ何も言ってないし。」

  ここまでがいつもの流れ。

「本当に毎度、毎度。一回読んでごらん。」

「またですか?」

「いいから。これが今日、こっちが昨日、きみが書いた分。」

「二日分も読むんですか。」

  思わず溜め息を付いた。

「『シーチキンマヨネーズを買いました。美味しかったです。』

『コンビニでお昼ご飯を買いに来たら、上司と出くわしました。楽しかったです。』」

「感想文か!短すぎるんだよぉ!

  だいたい今日の分に限っては何?

  コンビニで上司と出くわして、何がどうもって楽しい訳?」

「それを私に聞かれても。」

「そこをきみが書くんだよ!」

  あぁ、またやってしまった。

つづく


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