ケイト・モートンの時空の館へようこそ
Kate Morton
今回は、著作は少ないですが、独特な雰囲気のミステリーを発表している作家、ケイト・モートンについて ”note” していきます。
ケイト・モートンは、オーストラリアの作家で、もともとは演劇や舞台美術等を勉強していたのですが、ある日、自分が物語に魅かれていることを認識して、作家を志した人です。
30歳でデビュー作『リヴァトン館』を発表すると、すかさずベストセラー入りして話題になり、以降、6冊の著作全てが、イギリスのサンデータイムズやニューヨークタイムズでベストセラーリストにランクインしている作家です。
(著作リスト)
1 『リヴァトン館 The House at Riverton』 2006年
2『忘れられた花園 The Forgotten Garden』 2008年
3 「The Distant Hours」 2010年
4 『秘密 The Secret Keeper』 2012年
5 『湖畔荘 The Lake House』 2015年
6 「The Clockmaker's Daughter」 2018年
*太文字の作品は邦訳済み作品
日本でも、これまで4作が翻訳されていますが、いずれも話題になっていて、『忘れられた花園』がこのミス海外編第9位、『秘密』が第2位、『湖畔荘』が第4位と高い人気を誇る作家さんなのです。
ケイト・モートンの本の特徴は、そのストーリーテリングにあります。
物語は、いくつかの時代を行き来しながら、過去の事件が明らかになっていく構造をしています。
たとえば、現代、主人公の子ども時代、主人公の母親の若い時代と、3つの時代で物語が絡み合いながら進行していきながら、最後の真相につながっていく、そんな感じの構成なのです。
このそれぞれのパートが、それぞれ面白くて困ってしまうのです。
あるパートが気になって先を急いでると、違うパートも気になって、結局、全部が気になり始めて最後まで読み上げてしまう... と、これがケイト・モートンのストーリーテリングなのです。
まあ、その分、それぞれの時代パートの世界観が、ていねいに描かれているので、序盤はまったりと進んでいきます。
そこが弱点といえば弱点なんですが、ギアの重たい自転車をこいでると、最初はゆっくりだけど、段々とスピードが出てきて爽快感を得られるじゃないですか、それと似た感じなのです。
終盤は、ほんと先が気になっちゃうんですよね~。
『リヴァトン館』 2006年
老人介護施設で暮らす98歳のグレイスのもとに、1924年に「リヴァトン館」で起きた悲劇的な事件を映画化するために、ただひとりの生き証人であるグレイスにインタビューしたいと言う映画監督が訪れます。
封じ込めていた「リヴァトン館」でのメイドとしての日々が鮮やかに甦ります。ふたりの美しいお嬢様、苦悩する詩人、厳格な執事、贅を尽くした晩餐会―そして、墓まで持っていこうと決めたあの悲劇の真相。
死を目前にした老女が語り始めた真実とは…。滅びゆく貴族社会の秩序と、迫りくる戦争の気配。時代の流れに翻弄された人々の愛とジレンマを描いた美しいゴシック風サスペンス。
『忘れられた花園』 2008年
1913年オーストラリアの港にたったひとり取り残されていた少女。名前もわからない少女をある夫婦がネルと名付けて育て上げる。
そして2005年、祖母ネルを看取った孫娘カサンドラは、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。
なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか?
ネルとはいったい誰だったのか?
茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは?
『秘密』 2012年
少女ローレルは庭のツリーハウスから、見知らぬ男が現われ母ドロシーに「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と話しかけるのを見た。そして母はナイフで男を刺したのだ。男は死んだが、ローレルは目撃したすべては話さず、事件は多発していた強盗事件のひとつとされ、母の正当防衛が認められた。
50年後、女優となったローレルは、死の床にある母の過去を知りたく思う。古い写真に母と映る美しい女性は誰なのか? そして、あの事件は何だったのか?
『湖畔荘』 2015年
問題を起こして謹慎中のロンドン警視庁の女性刑事が、祖父の家の近くで、打ち捨てられた屋敷”湖畔荘”を偶然発見する。そして、70年前にそこで赤ん坊が消える事件があり、迷宮入りになっていることを知ると、興味を抱き、謎の赤ん坊消失事件を調べ始める。
かつてそこで何があったのか? 仕事上の失敗と自身の問題と70年前の事件が交錯し、謎は深まっていく。
どの作品も、気になる始まり方じゃないですか?
正直、派手なアクションや手に汗を握るようなサスペンスではないし、どれも短い話ではないので、読み始めるのに躊躇するかもしれませんが、じっくりと腰を据えてページをめくっていくと、きっと上質な読了感を得られると思います。
ゴシックな雰囲気や、少々のGL風味なども、悪くない感じなので、今年のGWは家でマッタリ、という人にはピッタリな作品だと思います。
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どうでも良い情報なのですが、今回の記事にあたり、いろいろ調べていると、ケイト・モートン本人の画像がいくつか出てきました。
モデルさんみたいな美人さんでした!
ますます新作が楽しみになってしまいました!
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おいおいw
現在、6冊の著作のうち2冊が未訳です。
今のところの最新作である『The Clockmaker's Daughter』が発表されてから3年が経つので、そろそろ翻訳が完了する頃かなと期待してるのです。
(東京創元社さん、よろしくお願いします!)
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