シン・エヴァを観て、小松左京に思いを馳せる
Komatsu Sakyo
公式追告でも流れてるんで、ネタばれにはならないと思うのですが、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の中で、松任谷由実さんの『VOYAGER~日付のない墓標』が挿入歌として使われています。
なかなか懐かしい曲を持ってきたな~と思うと同時に、日本SF界の巨匠、小松左京さんへのリスペクトを感じたので、そのことについて “note” しようと思います。
こちらが、その公式追告
この曲は1984年に松任谷由実さんの20枚目のシングルとして発表された曲で、同年公開された映画の主題歌として書き下ろされたものです。
紛らわしいのですが、ユーミンは前年の1983年に『VOYAGER』ってアルバムをリリースしているものの、この曲は収録されてないのです。
実は、『VOYAGER~日付のない墓標』は、どのアルバムにも収録されてなくて、後のベストアルバムがリリースされるまでは、長らく幻の曲だったりしたのです。
そして、この曲が主題歌として使われた映画が
「さよならジュピター」
1984年:日本
総監督:小松左京、監督:橋本幸治、特技監督:川北紘一
主演:三浦友和、小野みゆき
「スターウォーズ」のおかげで、世界的にSFブームが巻き起こる中、日本でも本格的なSF映画を作りたいと、小松左京さんが中心となって制作したのがこの映画です。
西暦2125年、地球にブラックホール衝突の危機が迫る!
その時、大惨事を回避すべく人類がとった方法とは・・・。
ネタばれしちゃうと、ブラックホールとの衝突を避けるため、木星を爆発させて、ブラックホールの進路を変えようとする物語なのです。
当時、NASAのボイジャー計画による最新の木星探索データなども取り入れながら科学考証されたストーリーは重厚なもので、木星爆破を暴挙として反対する集団なんかも現れて... みたいな感じで面白そうだったのですが、映画自体は失敗作となっています。
もともと、3時間を超えるシナリオだったものを、そのスケールが大きすぎたため予算が足りず、内容を半分ぐらいに削減しちゃったんですよね。
なので、ストーリーがチグハグになっちゃって.... 酷評されても仕方ないですよね。
本来であれば、未曾有の危機に立ち向かう人間ドラマ!って感じで、同じ小松左京先生原作の「日本沈没」や「復活の日」以上のスケールで描かれるはずだったのですが、資金が足りなかったのは残念なことです
そんな不完全燃焼に終わった本作の主題歌を、あえて挿入歌として使うあたり、庵野秀明監督には、間違いなく小松左京愛があると思うんですよね。
エヴァンゲリオンの舞台のひとつである「第3新東京市」は、「さよならジュピター」に出てくる宇宙船の名前にちなんでいるという話だし、ほんと、庵野監督は小松左京先生へのリスペクトを感じさせてくれるのです。
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そんな庵野監督の小松左京愛を感じさせられたのは、決してエヴァンゲリオンが初めてではなく、1988年に制作されたOVA『トップをねらえ!』でも強い愛を感じることが出来ます。
『トップをねらえ!』は、1988年から1989年にかけて、ガイナックスにより1話30分の全6話のOVAとして製作されたSFロボットアニメです。
庵野秀明さんの初監督作品で、終盤の第5話、6話では脚本にも関わっています。他のスタッフにも、絵コンテに樋口真嗣さん、作画監督に貞本義行さん、オープニングが摩砂雪さんなど、後にエヴァンゲリオンのスタッフとなる方々の名前もありますね。
物語は、「宇宙怪獣」と呼ばれる正体不明の宇宙生物群の脅威にさらされていた人類が、種の存亡をかけて戦うというもので、誇張された表現はありますが、ななか小松左京チックだと思いませんか?
当初はギャグも満載だったシリーズなのですが、話が進むにつれて、ハードになっていく展開でした。
そして、最終話のタイトルが「果てし無き、流れのはてに…」
これって、小松左京先生の代表作、時間と空間をまたにかけた壮大な長編『果しなき流れの果に』からそのまま使われています。
最終話のタイトルだけでなく、ストーリーの方でも、人類が最後にとった手段が、木星を圧縮して、長径869kmの巨大なブラックホール爆弾を作り出すというもので、とにかくスケールが大きいのです。
このあたり、『さよならジュピター』のオマージュも感じるんですよね~。
不完全燃焼に終わった『さよならジュピター』でしたが、今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』での庵野監督の小松左京愛のおかげで、なんか思いが受け継がれてるんだな~、みたいないい気持ちになったのです。
ただ、『さよならジュピター』については、映画よりも、小松先生自らがノベライズ化した小説版を読んだ方がいいかもしれません💦
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