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今年読んだ国内作家さんたちの新作ミステリー(読書回顧2021)
11月になって、いよいよ今年も残りが少なくなってきた感じなので、今年の読書の振り返りなんぞをしていこうと思っています。
自分にとって、その年リリースされた国内作家さんのミステリーを読む場合は、好きな作家さんやシリーズの新作に限定されているので、決してたくさん読むわけではありません。
数えてみると12冊しかなかったのですが、年末の各種ランキングのことなんかも思い浮かべながら振り返ってみようと思います。
ちなみに私の国内ミステリーの読書傾向は以下の通りです。
大学生の頃に80年代後半から巻き起こった「新本格ブーム」にはまって、島田荘司さんをはじめ、綾辻行人さん、有栖川有栖さんら、講談ノベルスや東京創元社から出てくる若手作家さんの本格ミステリーを読み漁った世代です。
近年は、「新本格ブーム」で育ってきた世代の新たな若手作家さんも読むようになりました。
(関係note)
特殊設定ミステリーのホープたち
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【2月リリース】
「蒼海館の殺人」著:阿津川辰海
館が沈めば、探偵も、犯人も、全員死ぬ...
濁流押し寄せる館の連続殺人。
雨が止むころ、僕らは生きているのか。
今回紹介する中では、最も若い20代の作家である阿津川辰海さんの新作で、2019年に話題になった「紅蓮館の殺人」の続編になります。
主人公や探偵役が高校生なんで、オジサンが読むにはギャップがあって、なかなか共感できない部分も多いのですが、ミステリーのロジックはほんと面白いです。
そういう意味で、阿津川さんの新作は、これからも読んじゃう気がします。
【5月リリース】
5月には、原田マハさんのアートミステリー「リボルバー」と、恩田陸さんの理瀬シリーズ17年振りの新作「薔薇の中の蛇」がリリースされました。
どちらもミステリーとしては弱いのですが、新作が読めるだけで幸せなのです!
【6月リリース】
「黒牢城」著:米澤穂信
本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。
動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。
いつも、いろんなタイプのミステリーで読者を楽しませてくれる米澤穂信さんの新作は、なんと戦国時代の武将たちを登場人物とした本作でした。
これがまた、なかなか面白いんですよね~。
先日、この作品が山田風太郎賞を受賞したとのニュースが入ってきたし、年末の”このミス”とかでも上位にランキングされる事、間違いなしなのです。
「ボーンヤードは語らない」著:市川憂人
今度こそ傷ついた誰かを救えるように、わたしたちは警察官になった。
空軍基地での変死事件や雪密室、雨の夜の墜落事件の謎、そして不可能犯罪に挑むマリアと漣の“始まりの事件"とは..
「ジェリーフィッシュは凍らない」など、ちょっとSF的なガジェットが登場したりするもうひとつの現代を舞台とした〈マリア&漣〉シリーズの新作短編集です。
地味なんだけど、シリーズの中では一番読みやすくて、好きだったりするんですよね。
【7月リリース】
7月は、思いがけず京極夏彦さんの”巷説百物語シリーズ”の新作がリリースされて嬉しかったです。
ただ、7月には、他にも、年末のランキングに入って来そうな話題作がたくさんリリースされました。
「invert 城塚翡翠倒叙集」著:相沢沙呼
あなたは探偵の推理を推理することができますか?
綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?
このミス2020の国内1位作品だった「medium-霊媒探偵城塚翡翠-」の続編になります。
ドラマ「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」を踏まえた倒叙形式の中編集で、犯人と、美貌の探偵:城塚翡翠との対決が楽しい本なのです。
ただ、探偵の翡翠が”あざとすぎる”キャラ設定のため、感想とか見ると、好き嫌いが明確に分かれる作品なんです。
「硝子の塔の殺人」著:知念実希人
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔、硝子館。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
今年一番の問題作だと思いました。
多分、これも賛否の分かれる本です。
いかにもという舞台に、いかにもという人たちが招かれて、いかにもという事件が起きるわけなのです。
作中で、コナン・ドイルやアガサ・クリスティーに言及する本は、これまでもたくさんあったのですが、この本では島田荘司さんや、綾辻行人さんらの新本格ブームにハマってた富豪が建てたという、いかにもという館が登場するので、一歩間違えばパロディになってしまいそうな感じなんですよね。
ただ、その ”いかにも” ってとこが重要だったりするのが侮れないのです。
帯に、綾辻行人さんが「あ~、びっくりした」という賛辞を寄せてるのですが、そりゃあ、びっくりしますよね!wって感じで、ほんとに秀逸な賛辞になってるので注目なのです。
「兇人邸の殺人」著:今村昌弘
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子が突然の依頼で連れて行かれた先は、“生ける廃墟"として人気を博す地方テーマパークだった。園内にそびえる異様な建物「兇人邸」に、比留子たちが追う班目機関の研究成果が隠されているという。
「屍人荘の殺人」シリーズの第三弾!
まあ、これだけ人工的な舞台だと、辟易する人もいるでしょうが、そういうジャンルとして読めば、けっこう入り組んでいて、パズラーとして面白いです。
【8月リリース】
「機龍警察 白骨街道」著:月村了衛
国際指名手配犯の君島がミャンマー奥地で逮捕された。日本初となる国産機甲兵装開発計画の鍵を握る彼の身柄引取役として官邸は警視庁特捜部突入班の三人を指名した。やむなくミャンマー入りした三人を襲う数々の罠。沖津特捜部長は事案の背後に妖気とも称すべき何かを察知するが、それは特捜部を崩壊へと導くものだった……
私的に、今年、一番面白かったのが本書でした!
シリーズの第6長編なんで、この本だけを薦めることはできないのが残念なのですが、かつてないハイブリッドエンターテイメントであることは間違いないのです。
ロボットのような機甲兵装という兵器の登場するSFチックな面はありますが、世界情勢や警察機構などにはリアリティが溢れていて、ほんと面白いのです。
リリースされるたびに、SF、ミステリーのどちらのランキングも賑わすシリーズなのですが、この作品も間違いなく上位に位置する傑作だと思います!
「君が護りたい人は」著:石持浅海
犯行の舞台は皆で行くキャンプ場。
毒草、崖、焚き火、暗闇……三原は周到な罠を仕掛けていく。
しかし完璧に見えた彼の計画は、ゲストとして参加した碓氷優佳によって狂い始める。
碓氷優佳という探偵役により事件が起きないという、一風、独特なミステリーの第6弾です。
第1弾だった「扉は閉ざされたまま」が好きで、けっこう楽しみにしてるシリーズなんですが、巻を重ねる度に、薄味になってくような気がして、ちょっと寂しいんですよね。うんうん。
【9月リリース】
「透明な螺旋」著:東野圭吾
房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。
失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。「愛する人を守ることは罪なのか」ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。
ガリレオシリーズの第10作目です。
登場人物の年齢が上がっていく分、ウェットな部分が増してくるんですが、やっぱり読みやすく面白いシリーズなのです。
シリーズの特徴である物理トリックはなく、どちらかというと、作者のもうひとつのシリーズ「加賀恭一郎」ものの雰囲気なんですが、あらすじにある ”最大の秘密” の部分は「加賀恭一郎」シリーズでは、もう使えないものなんですよね。
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読みたかった海外ミステリーの新刊たちは、まだまだ積んでる本もあって、振り返りはもう少し先になりそうなんですが、国内ミステリーの新刊は、この後、読む予定がないので、一足先にまとめてみました。
新刊を読むと、その年のランキングとかで、どのポジションあたりなのか想像すのが楽しみのひとつなのです。(ミーハーですみません💦)
まあ、読んだ本の価値は、読んだ人それぞれにあればいいのですが、やっぱですね、そういうの考えると楽しいんですよね。
自分が毎年楽しみにしてる「このミステリーがすごい!」のランキングでいえば、
米澤穂信さんの「黒牢城」と、月村了衛さんの「機龍警察 白骨街道」は間違いなく上位に来ると思えるぐらい面白かったです!
また、賛否は分かれると思いますが、
知念実希人さんの「硝子の塔の殺人」なんかも、5位~10位ラインには十分入ってくるだけの面白さがあったと思います!
今年は、通勤手段がJR通から自家用車通になったこともあって、今ひとつ読書時間が確保できてないのですが、取りあえず、積んでる本たちを年内に読み上げてしまおうと思ってるのです。
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