見出し画像

精神腫瘍科の先生に、心が乖離していると言われる ~とあるOLの乳がん日記【62】

62.

次の日、いつも通りに会社に行ってから早退して、病院へ向かった。
精神腫瘍科は相談センターと同じフロアにあるので、すっかり行き慣れた場所だった。

受付を済ませてしばらく待っていると番号が呼ばれたので、この間と同じ部屋に入ったら、今度は先生が1人だった。
そういえば、この先生がお勧めだと言っていた看護師さんに、受診したあとどうだったかと聞かれたときに、後ろに他の先生が2人もいたのでちょっと落ち着かなかったと言ったのを思い出した。
本当はそれとは関係ないのかもしれないけれど、このときはひょっとして気を遣ってくれたのかなと思った。

先生がどうしましたか、と言ったので私は昨日の夕方、急に不安に襲われて、わーっとなってしまったことを伝えた。
今は元気なので大丈夫なのだけれど、気分転換の方法というか、そういうとき、どういう気持ちで対処したらいいのか教えてほしいと言った。

と、突然、先生の携帯電話が鳴ったので、先生はちょっといいですか、と私に了承を得てから診察室の外に出た。
看護師さんも、先生も、話している途中で電話が鳴ることはよくあることなので、私はなんとも思わなかった。

でも、1人になって、ちょっと手持ち無沙汰になったので、せっかく精神腫瘍科にいるのだから、心のチャンネルを「悲しい」に合わせて先生と話そうと思った。
そうしたら、一気に悲しさが襲ってきて、嗚咽した。

泣いていると先生が戻ってきて、私の異変に気付いた。
さっきまでケロっとして話していたのに、戻ったら泣いているので、驚いているのかもしれなかった。


先生は、どうして泣いているのか、ひょっとして自分が電話に出たから泣いているのですか?と聞いたので、私は全然そんなことはないと言った。

私は、なんというか、ただ、「悲しい」にチャンネルを合わせただけであることを言って、この間、乗馬の予約をしていたら、今までずっと悲しかったのが嘘みたいに元気になった経緯を伝えた。

自分としては、いわゆる気分の切り替えができるようになったので、便利だと思っていたけれど、先生は少し考えるような顔になった。
そして、先生は、それはあまりよい傾向ではないかもしれないと言ったので、え、と思った。

先生曰く、私は心が乖離してしまっていて、そのせいで「悲しいと思っている自分の気持ちに寄り添ってあげていない」状態だということだった。
ちゃんと悲しいことを、悲しいこととして向き合っていないらしく、それだといつまでたっても、根本の解決にならないということだった。

正直そんなことを言われてもはあ、という感じだった。
私としては、オンオフのスイッチの入れ替えができてとても便利だし、現に今も、さっきまで嗚咽していたのに、チャンネルはパチっと入れ替わっていて、普通に会話していた。

だから私は、いや、そういうんじゃなくて、私は普段は元気なんです、乗馬にも行ったし、フラメンコも行ってきて、すっかり元通りになったけれど、ときどき悲しくなるんですというのを伝えて、私の状態をわかってもらおうと思った。
でも先生は、ちゃんと悲しい心に寄り添ってあげてくださいと言うので、困ってしまった。

先生は、薬は飲んでいますか?と聞いたので、実は一度も飲んでないことを正直に白状した。
先生は、あの薬は、元気が出る薬だから、ぜひ飲んでみてほしいと言って、なんとなく納得がいかないままこの日の診察は終わった。

サポートいただいた額はすべてお世話になった病院、SNS、保護猫活動に使いたいと思います♪