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ガン患者さんの憩いの場で、話を聞いてもらう ~とあるOLの乳がん日記【90】

90.

別棟のほうも、とても素敵な雰囲気で、部屋の真ん中にスクリーンがあって、その周りに椅子が置いてあった。
数人すでに座っていたので、私もその1つに座って開始まで待った。

しばらくすると、案内の人がやってきて、挨拶と、自己紹介をして、それからスクリーンの映像を流した。

このガン患者さんの第2の家を目指した場所は、きっかけとなった本家ともいうべき場所が外国にあって、映像では、その場所の成り立ちとか、外観とか内装とか、他の国の同じような場所の映像とかが流れたりした。
だから、国が違くても、同じように悩んでいるガン患者さんが、たくさんいるんだなと思った。

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しばらくして映像が終わったので、また棟を移動した。
どうしようかなと思いながら、部屋の中をぐるりと見てまわっていたら、隅に無料の紹介の紙みたいなのがあったので、それをとって部屋のテーブルの端っこに座った。
それからその紙をぺら、と眺めていたら、女性がこんにちは、と声をかけてきた。

ちょっとだけ驚いて、こんにちはと答えて、この場所はどうですか、といったような内容のことを聞かれたので、この人は、この場所の運営側の人なんだと思いつつ、こんな場所が無料で使えるなんて、すごいですねと言った。

そうしたら、その人は横に座って、何かお話聞きましょうか?というようなことを聞いてくれたので、私は、そんなに話を聞いてほしそうな顔が、出ていたかなと思いながら、でも、ずっと話を聞いてほしいと思っていたから、ぽつぽつといきなり泣き出さないように、話をした。

病院の看護師さんみたいに、いや、きっとこの人も多分、そういう専門の人だったのだと思うけれど、その人はうんうん、と話を聞いてくれて、ときどき問いかけて、私の言葉を引き出してくれて、私は目にたくさん涙を溜めながら、今不安に思っていること、髪の毛が抜けていってやっぱりちょっと悲しいこと、将来が見えなくて苦しいこととかを、全部吐き出していった。

時間にしたら、15分とか20分くらいだったのか、ひょっとしたらもっとだったのかはわからないけれど、気が済むまで話をして、すっきりして、話を聞いてくれてありがとうございましたと言った。
女性は、また、いつでも声をかけてくださいねと言って、席を立っていった。

ちょっとだけその場でぼーっとしたあと、私も席を立って、入口付近ではグッズが売っていて、その横に募金箱があったので、そこに募金をした。
その募金では、一定の額以上の募金をすると、さっき映像で見たきっかけとなった本家を作った人の話の冊子がもらえるということだったので、案内の人のありがとうございますの言葉とともに、冊子を受け取った。

どんな場所かを見に行く、という目的だけでなくて、誰かに話を聞いてもらうという目的まで達成できたので、気持ちはとても晴れ晴れとしていて、帰り際にさっき話を聞いてくれた人にもう一度感謝の気持ちを伝えると、とてもいい気分で、その場所をあとにした。

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