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【第13話】Sigmaの対応で考えた!品位あるカメラ・レンズメーカーとは?

前回の「寫眞機余話」で、東京都写真美術館で開催されていた「日本の現代写真1985〜2015」展がコロナ感染の影響で中止となったことに触れた。

カメラ文化が斜陽の時代。1985年から2015年まで、時代を彩った日本を代表する作品が一堂に鑑賞できる機会は滅多にないのだから、日本写真家協会はリバイバルを検討をしてはどうか、という趣旨だった。

先日、SIGMA広報部がその記事に「スキ」をつけてくれていた。

「なぜ、シグマ広報部が?」と不思議に思ったのだが、よくよく考えてみると、その記事にはシグマが新発売した標準ズーム「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」で撮影した写真を添付していた。おそらく、その写真のせいだと思うのだが、間違っていたら、シグマ広報部さん、ごめんなさいね。

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(SONY α7RⅢ +SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary )

シグマが発売したF2.8通しの大三元レンズ「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」。私が所有しているのは初期ロットだ。

シグマファンならご存知だと思うが、この初期ロットは発売直後、「経時変化によりゴースト耐性が悪化する可能性がある」ことが判明したとして、シグマが回収し新品に交換した個体である。

長いこと、ソニー機用の大三元レンズを探していたが、「これは」というものはなかった。しかし、シグマが重さ470g(ライカ復刻ノクチ50㎜F1.2とほぼ同重量)の最小最軽量な「SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」を発表した直後、「探していたのはこんなレンズだ」と予約注文した。

なぜ、購入に至るEマウントのF2.8通し標準ズームがなかったのか?シグマの28-70mmを注文した経緯や到着直後の作例は、ブログに詳しく掲載したので、そちらを参考にしていただきたい。

本稿では、発売直後に不具合が判明したあと、シグマの取った対応に関する思いである。

正直言って、回収前のレンズは撮影していても何の不満もなかった。ソニー機との相性も、純正のようなAF速度だったし、色乗りも期待通り、ボケ感も自然だった。

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(SONY α7Ⅲ +SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary )

シグマが言う「経時変化によりゴースト耐性が悪化する可能性がある」とは、いまは不具合がなくても、将来的にゴースト耐性が悪化する可能性があるということだ。つまり、メーカーが黙っていたら、私は気づかず、そのレンズを使用し続けていた。

にもかかわらず、将来的不具合の可能性を広報し、回収し、修理ではなく新品交換という対応に、ユーザーからは「神対応」という評価もあった。確かに英断だったと思う。

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(SONY α7Ⅲ +SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary )

購入した製品に瑕疵や欠点があると「○○のカメラやレンズはダメ」と批難し、レッテルを貼りたがる人がいる。決して褒められたことではないが、人間のやることだ。間違いや失敗もある。そのこと自体、私はさほど問題視しない。

むしろ、不具合が発覚したあとの対応にこそ、メーカーの体質や余裕がみえてくる。

あれこれ理由をつけ責任を回避したり、「それは仕様」「経年劣化」と言い逃れしていないか。さらには、ユーザーに精神的・経済的な負担を与えないように配慮しているか否か。こちらの方に、そのメーカーの本質がみえるものだ。

私のように昭和に仕事でカメラを使った人間は、シグマというと、安いけれど、純正レンズよりも一段品質の劣るメーカーというイメージだった。

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(SONY α7Ⅲ +SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary )

ところが、昨今のシグマは純正に勝るとも劣らない高性能レンズが増え、最近はコンパクトで質感に優れたレンズ(Iシリーズ)にも着手している。それでも価格は相変わらず良心的だ。

シグマに対する私のイメージは180度変化している。

そして、今回の措置である。

今回の28-70mmの不具合。シグマが黙っていたら、私は気づかないものだったし、目先の損得勘定でいえば、レンズの回収・新品発送には多くのコストも要したはずである。

しかし、シグマは目先の損失との引き換えに信頼を増したのではないか。これが”品位”なのだと思う。

私は決してシグマのハードユーザー、いわゆる信者ではない。ほかにも高品質のレンズを製造するメーカーも少なくない。

しかし、シグマの回収劇を通して「品質と品位を有するメーカーはどれだけあるのか」と、ふと考えた。同時に、そんなメーカーが増えて欲しいと願ったのである。

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