【第15話】デジタルカメラかフィルムカメラか、それが問題だ
当コラム「寫眞機余話」もスタートしてから2ヶ月を過ぎ、早いもので今回が15話となる。その間、拙いコラムを想像を絶する方々に読んでいただき、250近い「スキ」もいただいた。本当に感謝しかない。
先日、ある写真家が「趣味カメラの醍醐味は上がることにある」と話していた。
「上がる」とは?
別の表現で言えば、「沼に落ちる」ことを言う。
語感的には「上がる」と「落ちる」では真逆のことに感じるが、意味は同じだ。
ただ、「上がる」という表現の方がカメラやレンズに散財して懐が寂しくなっているのに幸福を感じる雰囲気を醸し出していて、なるほど上手い表現だなと思ったものである。
(写真は、Leica M10-P + APO-Summicron-M 50mm F2 ASPHで撮影)
では、趣味カメラで上がるために重要なことは何か?
間違いなく、最初に手にしたカメラで感動することである。「この程度のカメラやレンズで、こんなによく写るのだから、あのカメラを手にしたら、どんな世界が待っているのだろうか?」
この空想こそ、ロマンである。
だから、私はファーストカメラが大切だと思っている。ここで躓(つまず)くと、「カメラは面白くない」という印象を固定化し、せっかく買ったカメラは放置され、スマホで満足する生活に戻ってしまう。
それはそれで散財という誘惑から離れるわけだから、経済的には幸せなことなのかもしれない。しかし、「それで良し」と結論づけると、「寫眞機余話」ではなくなる。
というわけで、きょうはカメラ・レンズ沼の入り口にしっかりと屹立できるカメラを考え、その後の進化の道筋について考えたい。
(写真は、2019年CP+の賑わい。この後、コロナ禍で会場を使用したカメラの祭典は開かれていない。Leica C-LUXで撮影)
ファーストカメラはミラーレスが無難
最初のカメラだが、静止画も動画も楽しめるミラーレスから選ぶのが無難だ。
日常使いを考えた場合、ファーストカメラは富士フイルムのX-S10を推したい。
主な理由は・・・
①400g台の軽量コンパクト→旅行や散歩に持ち出しやすい
②フラグシップと同一のセンサー&画像処理エンジン→画質は心配なし、AFも早い
③動画は4K30p可能、背面液晶モニターがバリアングル→動画撮影など幅広い用途に使える
④新品キットレンズ付きでも13万円前後、中古だと10万円前後。とにかく安い→これが最も重要かもしれない
詳しいX-S10推しの理由はブログにまとめたので、関心のある方は参考にしてほしい。とにかく格安の万能機と言える機種である。
私はX-S10発売前に、すでに最上位機種のX-T4を所有していたので、購入に至っていないが、発売がX-S10→X-T4の順だったら、間違いなくX-S10を購入し、X-T4は見送っていたと思う。
(写真は、FUJIFILM X-T4 + XF18-55mmF2.8-4 R LM OISで撮影)
ミラーレスカメラでイロハ習得後の沼落ち
万能的なミラーレスでイロハを知った後は、いろいろな行き先が待っている。
さらに高級高額なソニーα1やキヤノンEOS R5などフルサイズやフジの中判ミラーレス、あるいは動画に軸足を置いたソニーαSⅢやパナソニックS1、シグマfpもある。
一気にライカ沼に足を踏み入れ散財するのも、ひとつの人生だ。
一方、同じデジタルカメラでも、デジタル一眼レフに目を転じると、安値で放置状態の中古がたくさん市場に出回っている。ニコンやキヤノンが生産をやめても、中古市場はまさに低コストカメラを選び放題だ。
エモい写真、懐かしい写真を撮影したいなら、フイルムカメラという道もある。
(写真は、1950年代、ニコンが報道用に生産したNikon SP black paint)
私は若い頃、Nikon F3で仕事をしていたフィルム世代だが、長年のブランクを経てミラーレス(フジ→SONY→LEICA)から再出発し、過去のフィルムカメラを物色し、最近はデジタル一眼レフにもハマったクチである。
順番としては、フィルム→ミラーレス→フィルム→デジタル一眼レフ、こんな足跡をたどっている。
では、どのジャンルのカメラが面白かったか?
どれも甲乙つけがたいが、率直な感想、思いを綴りたい。
フィルムカメラの魅力と注意点
まず、フィルムカメラ。フィルム写真の懐かしさや奥深さ、現像済みフィルムが届いた時のワクワク感は格別である。
撮影までの段取りも味わい深い。S型やF型のニコンはフィルムの装填が楽だが、M型ライカはちょっと面倒だ。バルナックライカになると、コツも必要になる。
その面倒臭さもまたフィルムの魅力と感じられる人なら挑戦してみてほしい。
(写真は、バルナックライカⅢfと赤エルマー)
ただ、注意したいのはランニングコストだ。私が若い頃、フィルムの値段はただ同然のような安さだった。ところがいまや36枚撮りで1000円の時代だ。
現像代もフィルム1個で500円以上は覚悟する必要がある。モノクロだと、さらに高い。私が現役の頃はモノクロの現像代はカラーネガより安かったと思う。
「でも自家現像なら安い」という人もいる。しかし、現像液や定着液は猛毒だ。使用後の処理はどうするのかと思ってしまう。まさか下水道や近くに川に流すわけにはいかない。
私が若い頃はアシスタントが業者に廃液処理を頼んでいたが、いま、そうした業者がいるのかどうか。だから、私はアマチュアカメラマンに自家現像を安易におすすめできない。
(写真は、Leica M4 + Summaron-L35㎜ F3.5 1stで撮影)
デジタル一眼レフは想像以上に面白く新鮮だった
私はひとつ思い違いをしていたことがある。
それは、デジタル一眼レフといっても、所詮、使用感はNikon F3のようなものだろうと勝手に思っていた。だから、ミラーレスのあと、フィルムのM型ライカやバルナックライカ、S型Nikonは買っても、デジイチは買いも使いもしなかった。
しかし、実際に使ってみて似て非なるものであり、デジタル一眼レフならではの魅力にハマってしまった。
この3ヶ月でPENTAXやNikonのデジイチが4台。まだ欲しい機種があるのだから、自分でも呆れる。
(写真は、Leica M10-P・左と、PENTAX K-1 Mark Ⅱ・右)
デジイチの魅力は、フィルム時代の目に優しいファインダーやシャッター感覚はそのままであることがひとつ。これは想像できた。もうひとつは撮影画像をすぐに確認でき、手間暇がかからない、その合理性である。
さらに、CCDセンサー時代から現在のCMOSセンサーまで幅広い画質を安く楽しめて、フィルムの種類を変えるが如く、センサーの異なるデジイチで撮影することで味わいが異なる。
長い目で見ると、安価な中古デジイチを各種購入するのはフィルム代や現像代より安く済むのではないかと感じる。
(写真は、PENTAX K-1 Mark Ⅱ + smc FA 77mm F1.8 AL Limited で撮影)
デジタル一眼レフ最大の魅力は、何より撮影が楽しいことだ。
まずは、ファインダーで実像の被写体を見てセンサーに焼き込む。自分のイメージ通りの写真になっているかどうか、その撮影結果がその場で判明する楽しさがある。
もう一つは聴覚的楽しさだ。
最近のミラーレスはM型ライカを真似ているのか、シャッター音が軒並み静かになっている。しかし、カメラは五感で楽しむもの。
デジタル一眼レフはその五感で楽しむ要素をしっかり残しているのだ。
最後にまとめ
カメラの主流は経年的にフィルム、デジタル一眼レフ、ミラーレスと変遷し、ファインダー形式も一眼や二眼、レンジファインダー、背面液晶だけのファインダーレスなど様々な種類がある。
どれが一番優れているかどうか論じ合うのは面白いのかもしれないが、まずは、ぜひ経験してみてほしい。
どれもみな魅力的な個性を秘めていることが分かるはずだ。
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