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路上生活と日本人的男らしさ

今日はとても重要な情報を当事者から聞きました。今迄、なんとなくぼんやり感じていたものがハッキリしました。一昔前の日本人的男らしさが路上の人達(全ての路上の人達ではありません)を生み出していて、その日本人的男らしさが、支援を受けることの障壁になっている部分があるのかもと感じています。

そもそも、こちら(炊き出しを続けて感じること その6)で少し書いた、Jさんの具合が悪くなってきていて、Iさんの僕へのお願いと、僕自身のJさんへの心配が重なって、数日前から毎晩、安否確認を兼ねて寝床訪問しています。HさんとJさんが寝床にしている付近は、そこそこ当事者の人達が集まっているエリアで、たまたま、夜回りの支援職員がJさんの担当になったらしいので、「どうか、Jさんをお願いします。」と頭を下げてお願いするため、先に寝床へ向かい待機していようと、夜回りより先に到着していたのです。まずは、Hさんに挨拶をしつつ、Jさんが居ないか探したのですが居ませんでした。Hさんは寝ていたので、まだ起きている当事者2人に近づき、会釈をしながら話しかけたのです。仮にOさんとYさんにします。路上歴10数年のOさんが、数日前から路上状態のYさんへ、どこかの支援を受けろと諭しているところへ、丁度、僕が話しかけたようです。その場で、Oさんも交え、Yさんと僕とのやり取りは上手くいき、少し後に到着した夜回りの支援職員と繋がり、後日、一緒に動いていくような話になっていました。

支援職員とYさんが話している最中、Oさんと僕は別の話をしていました。話の内容が、「なぜ、こういう生活を続けているのか?」みたいな内容になった際、Oさんが、「この生活を続けていても、この先の未来で良い展開になるとは思っていない。それは、多くの路上の人達はわかっている。」みたいなことを言ったのです。そして更に、「それでも、なぜ続けるのか?」みたいな話になり、Oさんは、「日本人の多くは、素直な感情になれない。」「今迄、路上で大変な生活を続けてきたのに、支援を受ける流れになるのは、一種の敗北だ。」みたいなことを言ったのです。

そのOさんには言ってはいないのですが、一連の話を聞いて、当事者の人達を頭の天辺からつま先までリスペクトする勢いで、その当事者がどんな主義主張をしていても、その当事者が何十年と辛酸を嘗める人生を生きてきた結果、今ここでその思考に至っているのだと考え闇雲に否定せず、支援を受ける流れになることを、自分自身の敗北だとできるだけ感じさせないようにすることで、気持ちが変わる当事者も幾らか増えるのではないかと思いました。同時に、ある種の損切りが上手くできない人達なのだろうとも感じています。以前、Iさんと電話で話した際に、あるエリアの当事者同士は、路上歴長い人に対して、「先輩」と呼んで敬うのだと教えてくれました。多分、困窮した男性が、最後に示せる日本人的男らしさが、路上で頑張るということなのだと理解しました。その精一杯の姿勢に対して、無下な扱いをしては駄目なのだと思ったのです。

また、「自分は路上だ。」「自分は〇〇歳だ。」と、僕へ自己申告してくるおじちゃん達の、みつや勝手集計では、路上のボリュームゾーンは70歳前後が一番多いです。以前から思っていますが、この先の未来に、戦争や災害などがなければの話ですけれど、あと10年後には、従来の路上スタイルの人達は、今よりも更に激減すると感じています。今の60代、70代くらいの人達が、健康が維持できない年齢になればなるほど、減るのではないかと予想しています。それより若い人達も一時的に路上状態になる人達は常に一定数生まれると感じていますが、世代的に支援を受けようとする人が多いでしょうし、マンガ喫茶やネットカフェなどを利用できるお金があるならば、利用する人が増えると思います。既に夜はどこかへ避難する人達は増え始めていますが、夜回りをしていれば捕捉できるケースも減ってくると感じています。

男らしさの欠片もなく、名を捨てて実を取る思考が強い僕なので、そういう当事者の人達の気持ちはイマイチわからない部分もあるのですが、一昔前の日本人的男らしさが路上の人達(全ての路上の人達ではありません)を生み出していて、その日本人的男らしさが、支援を受けることの障壁になっている部分がありそうで、そこを上手い具合に当事者に、できるだけ意識させないような流れにできたら、70歳前後の当事者の人達の気持ちの変化は生まれると思っています。僕は当事者と接する際に、常に負けるつもりで接しているのですが、そうすることで関係構築できる人達がかなり増え、協力してくれる人達が増えたから、かなり炊き出しの際に助かっています。Oさんは、「日本人の多くは、素直な感情になれない。」と表現していましたが、言い換えれば、「不器用な男性が多い。」ともとれますね。笑 他の支援にも通底する部分ですが、支援される側の人としての尊厳を蔑ろに、絶対にしてはならないのだとあらためて思った次第です。

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