あるホームレスのかたから言われたこと

一昨年11月から炊き出しに参加し始めて、1年越えました。元主治医が参加してる団体を、元主治医が紹介してくれたのですが、参加してみて良かったと思っています。この1年ちょっとの間で、一番接する機会が多かった、ホームレスのXさんから、昨年夏頃に言われたことをずっと考えています。

炊き出しがコロナ仕様になってから、Xさんとは更に接する機会が増えました。別のnote(ホームレス考)でも書きましたが、そのXさんに「この生活が死ぬまで続くのかな?」、「Y(ある高い建物の名前)から飛び降りてもいいのだけど、片付けする人が大変じゃん?」って言われて言葉に詰まり、まともな返答ができませんでした。それからずっと考えています。

かれこれ、20年くらい前にAさんという、当時、僕が勤めていた職場に入ってきた、おじいちゃんホームレスのかたと僕は出会います。僕はそれまでホームレスは、ダンボールハウスの人みたいなイメージでした。しかし、Aさんは自転車を所有していて、そこに荷物を括り付けて移動しながら、家はないものの働いているので、ファミレスなどで夜を過ごす生活をしていました。今みたいに、飲食店で居眠りしていても、肩叩きなどはなかった時代でした。紆余曲折あり、一時期、Aさんと僕は一緒に生活をします。しかし、Aさんはピロリ菌というのに罹っていて、部屋で吐血し、そのまま入院し、その後、役所のお世話になりました。Aさんは常に冗談を言うような、明るい性格のかたでした。僕の中でのホームレスのイメージが色々覆されました。

過去にAさんと出会ってるので、おじちゃん達にもいろいろな人が居て、いろいろな生活の仕方の人が居ることは既に知っています。だから、僕は一般の人よりも、おじちゃん達に対する構えみたいなものが、そもそもあまりありません。AさんとXさんは、性格も違うし、生活の仕方も違います。だけど、Aさん同様、なんかXさんも、僕には気になってしまう人なんです。

炊き出しを続けていく中で気づいたことは、おじちゃん達の傾向としては、これからホームレス生活に突入し始める人のほうが、この世の終わりのような表情をしてることが多いです。寧ろベテランホームレスのほうが活き活きとしてる人が多いし、冗談も言うし、笑うのです。

一方でそれと同時に、僕は炊き出しがコロナ仕様になってから、おじちゃん達の列の整理誘導をずっとしているのですが、日が暮れていき、列が動きながらおじちゃん達がとぼとぼと進んでいく時間帯は、おじちゃん達は泣きながら歩いている訳ではないのですが、目に見えない涙を流しながら歩いているように感じる時があります。個人的にはその時間帯が一番、心苦しく感じる時です。

この半年以上ずっと考えました。結局のところ、これといった良い考えも浮かびません。同時に毎回、200人から300人くらいのかたと会っていて、なぜそのXさんがとても気になってしまうのか、ただ、Xさんと接する機会が一番多いからだけではないような気がしてきました。僕はなにか、Xさんが気になってしまう部分があるんじゃないかと思ったのです。この年末年始の炊き出しで気づきました。Xさんの笑顔に引き寄せられるのです。どのかたよりも笑顔がいい表情なのです。

たまたま、Xさんと僕は、炊き出しで出会ってしまった。Xさんは死にたい気持ちと隣り合わせの世界で生きている。Xさんと同じ世界観で生きていない僕には、軽々しく死なないで欲しいとは言えません。僕も希望のない中、生きていますが、Xさんはもっと希望がない状態なんだと思います。だけど、僕はこれからもXさんの笑顔を見たいのです。Xさんに限らず、人の笑顔というものは、何か力があるように感じます。今はこのことをXさんに正直に伝えるかどうかで、ずっと考えています。答えがなかなかでませんね。笑

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