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【architecture】TIME’S|安藤忠雄

京都は三条駅を降りて鴨川に架かる三条大橋を渡ると高瀬川沿いにコンクリートブロック造の建物が見えてくる

1984年に完成した安藤忠雄設計による『TIME’S』である

こちらの作品も安藤忠雄のデビュー作である『住吉の長屋』と並ぶ傑作であり問題作の一つであろう

『TIME’S』の1番のコンセプトは川と建築との強烈な関わりにある

ほとんどの建物が川に背を向けている中で、『TIME’S』だけが川を建物に取り込むようにつくられている

これは川との関わりが薄くなってしまった現代において自然と一体化した建築の在り方を提起したものである

最も安藤さんが攻めているのが、護岸を切ってつくった川面スレスレの空間だ

高瀬川は上流で水量が調節されている川であることを利用して川と人々をより近づけようと考えたのである

川の深さは通常10センチ程度であるので溺れることはないと言っても、護岸を切って建てるという前例の無い計画に役所との協議に相当な時間とエネルギーがかかったようだ

そこに行ってみると川がすぐそこに感じられて普通は体感できないような気持ちのいいテラス空間になっている

私の子どもは水遊びが大好きなので、恐らく迷わず入っていってしまうかもしれないが、それはそれで楽しそうな気もする

前例がないというある種のタブーに、真っ直ぐに立ち向かうことで生まれた文字通り問題作であるが、そこに込められたメッセージと表現は建築の成せる力である

安藤さんは、社会に対する問題定義を建築で表現してきた方だ

建築に『コンセプト』というよりは『物語』を持たせるイメージでつくられているように思う

計画から完成、そして完成後も愛される建築の『物語』を描いておく事で、建築が長く人々に愛されるように設計されている

用がなくなれば、コンクリートという産業廃棄物として処理される建築をつくり続けている以上、それを使う人が愛着を持てるように考えられている

建物は安藤さん特有の迷路状になっとおり、川面に出たり入ったりするような楽しい空間だ

かくれんぼにはうってつけの場所であるのは間違いないが、あまりに迷路過ぎて分かりにくいのと、やはり昨今のゲリラ豪雨の影響もあり増水を懸念してテナントは半分以上は空いているのが残念ではある

私は京都に行く度に行きたくなる建築で今まで幾度となく訪れている

周辺は観光地としても楽しいエリアでもあるのでぜひ訪れてもらいたい

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