キルフェボンの絶望クリスマスケーキ

ケーキの中でもタルトが好き。
タルトの中でもキルフェボンのケーキが好き。

毎年クリスマスは前日まで「ケーキなんか食べなくていっか」というムードなのに、当日の15時くらいから無性にケーキが食べたくなる。世間に踊らされて虚しいなと思いながらも、毎年仕方なく人でごった返したデパ地下に向かい、売れ残り気味の量産型ケーキを買う。なんでいつも同じこと繰り返しちゃうんだ?と毎年のように悔しがっているので、今年は初めてクリスマスにホールケーキを予約してみた。

大好きなキルフェボンのタルトである。

クリスマスでなくてもいつも大行列、スイーツが好きな人なら大体名前くらい知っているであろうキルフェボン。いつかホールケーキを食べてみたいと思っていたキルフェボン。予約も開始数時間で完売すると聞いていたので、スマホのアラームをかけて気合いを入れて朝10時にWEB予約に挑んだ。チケットぴあかよ。無事に予約完了し、うきうきしながらクリスマスを待った。

クリスマス当日、キルフェボンの店頭につくととんでもない行列だった。Twitterで調べてみると150人以上並んでいるとか書いてある(本当に数えたのだろうか)。そのとんでもない行列を横目に、ちょっとした優越感に浸りつ「予約の方はこちら」の列に並ぶ。予約してるのに並ぶんだ…と思ったが、通常の列に比べれば可愛いもの。15人くらいの列に並んで、受取の順番が来るのを待った。

時間にして20分くらい、無事に店内に入るとクリスマスケーキの入った箱が壁に沿ってうず高く積み上げられていて驚いた。まるで引っ越し前の部屋に積まれた段ボールのように、白い壁がケーキの箱で壁が埋め尽くされている。店内の温度はおそらく20度くらい、冷蔵庫の中で保管しなくて大丈夫なのだろうか、とちょっとした不安がよぎるが、とにかくクリスマスにキルフェボンのタルトである。事務的な受け取りを済ませて家路についた。

いざキルフェボンのクリスマスケーキ!箱を開けると想像より小ぶりなケーキが入っていた。フルーツも前に見たキルフェボンのケーキに比べると少し元気もボリュームもないように感じる。いやいや、でもクリスマスディナーの後にはこのくらいのサイズのほうが、とか自分に言い訳しながら家族の分も切り分ける。キルフェボンのホールケーキを自分でカットするなんて、初めてのことだ。なんだか緊張。そしていよいよ、実食である。

そっとフォークで一口分切り分け、食べる。・・・うん、おいしい、おいしいのだが、これは私の想像していたキルフェボンではない。

キルフェボンのクリスマスケーキは、明らかに冷凍ケーキを解凍したものだった。なんで気づかなかったのだろう。クリスマスのケーキはキルフェボンじゃなくったって、基本的には冷凍であるということを。クリスマスという最需要期において、ましてやキルフェボンのような繁盛店において、クリスマスケーキを生で当日に全部作るというのは不可能だということくらい、とっくに理解していたのに、「キルフェボン」「ホールケーキ」「クリスマス」という言葉に踊らされ10時にチケットぴあした私を叱ってやりたい。何ならキルフェボンに申し訳ないと思った。自分の理想のクリスマスケーキを思い浮かべて、冷凍ケーキに絶望してしまうなんて。

結論、キルフェボンのケーキは美味しいけれどクリスマスケーキは買ってはいけない。キルフェボンのケーキは、何のイベントでもない日にひっそり買いに行くのが一番。だってクリスマスじゃなくったて、キルフェボンのケーキがあるだけで、ちょっと特別な日になるから。

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