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大きな蜘蛛と過ごした日々(完)


「危害は加えない」


そう約束した蜘蛛さんの赤ちゃんを、
パニクっていたとはいえ、

踏みつぶしてしまった私...。



「私としたことが、なんてことを...!」


とっさに蜘蛛の巣に目をやると、

その一部始終を目撃してしまった蜘蛛母さんは、
明らかに動揺しており、

巣に留まったまま、おもむろに一歩後ずさりしました。

「ごめんなさい、ごめんなさい!
約束したのに。
あなたは約束を守ってくれたのに...!」


なんと謝っていいやら...、

しかも

謝ったところで、赤ちゃんが戻ってくるわけもなく…、

蚊やゴキブリなら、
何度殺虫剤をぶっ掛けてやっつけたことかはいざ知れず、

でも、今回の相手は

「契りを交わした蜘蛛さんの赤ちゃん」…。


マジ凹みました…。

凹んだまま、しばらくして窓に目をやると、

「んっ?!」


蜘蛛母さんが、スゴイ勢いで、
せっせこ、せっせこ巣の上で動き回っています。

明らかに急いでいるのが分かります。

夜、
寝る前にカーテンの隙間からベランダを覗いてみても、
まだ忙しく動き続けています。

『何やっているんだろう?!』

と思いつつ、

「本当にごめんなさい!!!」

と、今一度手を合わせて謝って、
ベッドに入りました。

*****

翌朝、
カーテンを開けると、

ナントまあ、

蜘蛛もいなければ、
蜘蛛の巣もきれいさっぱりなくなっていました…。


残されたのは、
巣を作る時に最初に張ったのであろう、
木とベランダの隅を結ぶ
2本の糸のみ!!

動き回っていたのは、
いらなくなった巣を取り壊していたんですね…。

しかも
前日あんなことを目撃してしまったから
大急ぎでやらざるを得なかった

ということでしょう…。

いやぁ、そりゃあ、蜘蛛だって人間不信にもなるでしょう、
あんなことがあったら...。

それにしても、
蜘蛛が一旦作った巣を取り壊すなんて
思いもよりませんでした。

そもそも、だったら何故
蜘蛛の巣だらけの「お化け屋敷」とかが存在するんでしょう?

アフリカの蜘蛛は皆、あんなにこまめなのかしら?

「それともやっぱり昨日のショックが大き過ぎたのかしら…」

と、前日の記憶をひきずったまま一日を過ごしました。

*****

その時の私のアサイン期間は1か月。

残り2週間を無事過ごしましたが、

言うまでもなく、

2度とその蜘蛛を目撃することはありませんでした。

*****

なお、

1日目はともかく、
二日目か三日目に私が部屋を変えなかったのは、

何故か意思疎通が図れたと感じたからなのですが、
(結局私が裏切ってしまいましたが…)

掃除の人などが何故蜘蛛の巣を取り除かったかというと、

以前、こんなことがあったんです。

同じ部屋のカーテン裏に小さなヤモリがいたことがあって、

ヤモリも大の苦手なのですが、
見つけたのが夜遅くだったこともあり、一晩我慢し、

翌日掃除が入っている時間に一旦「帰宅」したので、
掃除のおばさんに話をしたら、

「あ、もう、ころ...、いや、追い出しましたから」

と言うのです。

別の国でも似たような経験をしています。

要は、先進国の人で、ましてやアフリカを訪れようなどという人には
エコ意識が強い人が多いので、

「ヤモリを殺した」
などとは言わないよう教育されているんでしょうね。

ですから、

「あの蜘蛛の巣を取り除いて」


と言わなかった私のことも、

「蜘蛛愛好家」か何かだと思ったんでしょうね...。>苦笑

*****

いやぁ、私のとんだ失態談ではありますし、
蜘蛛母さんにも赤ちゃんにも本当に申し訳なかったけれど、

時折魔女っ気が出たり引っ込んだりする私としては、

蜘蛛とでもちゃんと意思疎通ができることが分かったのは
良かったと思っています。 >爆!

それにしても、すぐ必要以上にパニクる癖は直したいなぁ…、
いい歳したおばあちゃんなんだから…。>苦笑

最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!


注意 ネコ

※ 「何かと不注意でして...」否、
「注意 ネコ」はこたつぶとんさんの作品です。







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