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上司と部下の、はざま

昨日、ある大学教授たちとの会話で、
民間企業での「人の教て方」が知りたい
と質問された。
教育者としての関心ごとなのだろう。

人間が成長する人生の転機は3つ
「結婚生活、親になること、上司になること」
と誰かが言っていた。
この3つでの苦労で魂は磨かれると。

この20年、僕は民間企業で
誰かの上司として悪戦苦闘してきた。
この歳になって「わかりません!」
というわけにはいかない。
この教授の質問に、
僕は少し考えて以下を回答した。

①「人を育てること」の意味が広すぎる。
業務指導か、執務姿勢の表明か、
はたまた人格形成か。

業務をこなす知識や技術、経験値は
教えることが出来る。
生産性向上やリスクヘッジに繋がり、
部下の達成感という喜び、成長へと結ぶ。
その場合、時間的余裕があるのなら
ダイレクトに答えを伝授するのではなく、
考えるヒントを出す。

②部下のほうが業務知識も
その領域での経験も、豊かな場合がある。
上司は謙虚に教えを乞えばいい。
懸命に目標達成に向かう姿勢を見せる。

③会社の方針を部下に伝授し
理解を促すことは上司の重要な任務だが、
上司個人の価値観や考え方を
押し付けるのは、違う。
部下を自分の好みに
作り変えようとしたらアウト。

誰にも尊重されるべき人格がある。
それを変えるのが上司の仕事ではない。
部下の人生に踏み込むべきではない。

勿論、周囲に迷惑をかけ
危ない道に進もうとする部下を諌め、
助言することは大事だが、
その道の程度によるだろう。

④部下が困難な局面では、
上司はその矢面に立つべき。
自分の保身を考えていないか、
常なる自問自答が肝要。
部下より高い報酬を得ている者の義務。
そういう姿勢を示す。

⑤総論として、上司は、
業務を指導、牽引し、
物事の解決にはヒントを出して、
崖っぷちの部下を救う。
部下の人格を尊重し、
ココロの向きを助言は出来るが、
押し付けない。

そこから先は、部下の自己責任。
その部下は永遠に自分の部下ではなく、
ほんの2〜3年かもしれず、
場合によっては数カ月だ。
上司として彼、彼女の人生の、
責任を取ることは出来ない。
ココロだけは自分で磨くしかないのだ。

辞めていく(転職する)部下もいる。
その決心を止めることは出来ない。
上司としての考えを示すことは出来るが
その人の人生。

部下を上司の意のままに
変えようとするのは間違っている。
互いに成長するのが正だと
現段階ではそう考えるに至っている。

こんな僕の話を聴いて、
一人の教授がぽつりと言った。
「そういうものですか。
そういう意味では大学のほうが気楽。
でも、理論を教える大学よりも
ビジネスの場のほうが
具体的で、リアルで羨ましい。」

僕は返した
「人を育てるなんて、おこがましいです。
僕なんぞ、高尚ではなく、偉くもない。
ビジネスの場は、しんどいです。」

しんどいが、躍動感はある。
部下と一緒に過ごした時間が
いつの日か互いの肥やしになる。
きっと。

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