見出し画像

「Goodbye Day」の追憶

♫「少しだけ疲れた顔で
君は静かに眠ってる
スタンドの淡い光、
そっと睫毛の影ができる
少しだけ愛が足りない
君はぼんやり呟いた
費やした君との月日
惜しみはしない僕がいる」♪
来生たかお「Goodbye Day」

年の暮れ、大掃除の合間に
YouTubeで何曲か聴いている。
昨日、遠い日に聴いていた
「Goodbye Day」に辿り着いた。

このピアノのイントロと歌い出しで、
27年前に他界した友達を思い出した。

僕が新入社員だった頃、
同じフロアにいた同期Y君と
頻繁に飲みに行った。
彼は僕よりひとつ歳上、大阪出身。
関西弁が節々に出て、発言はストレート、
ユニークな発想の持ち主で
僕より遥かに大人びていた。

僕らは東京勤務、僕は神奈川の実家、
彼は会社の寮住まい。
同期数人で深夜まで飲んだ時は、
彼は僕の実家に泊まったりしていた。

社会人になって初めて得た親友だった。

ある金曜夜にカラオケで
僕が「Goodbye Day」を歌うと
「これ、なんていう曲?誰の歌?」
と彼は着心。
あとで知ったのだが、
翌日の土曜日に彼はCDレンタル店まで走り
この曲を探したという。

その翌週の金曜夜、彼と飲んでいたら、
カラオケ店に行きたいと言う。
その数時間後、御徒町のスナックで
彼は一曲目に「Goodbye Day」を
高らかに歌った。

♪「GoodbyeDay 今日が終わり
One More Day また一日
何事もなく それでいい」♪

土日でしこたま、練習したという。

その後、彼は職場の同僚や上司に
この曲の存在を伝授、彼の部署では
カラオケに行く頻度が飛躍的に上がった。
その部署では数人が代わる代わる
「Goodbye Day」を歌い、
「Goodbye Day」コンテストの様相に。
いつの間にか彼はこの名曲の伝道師に。

それから4年くらいして、
彼が入院したと聞いた。
会社の近くの東大病院だった。
僕は何度かポカリスエットを持って
お見舞いに行った。

ふたりだけで病院のベンチで
数分の間、話した。
彼の様態、会社の近況、他愛もない話。

その後、日に日に症状が悪化し、
翌年、僕らが入社五年目の冬、
彼は逝ってしまった。

彼の葬儀が実家の大阪で行われると知り、
僕は会社を休み、他の同期3人と共に
最期の別れを告げに行った。

あれから27年。
「Goodbye Day」の軌跡。
YouTubeでの来生さん、
1990,Naganoでのライブで弾き語る。
ピアノで刻むあのイントロを聴くと、
心昂り、鳥肌が立つ。

♫「少しだけ疲れた顔で
君は静かに眠ってる
スタンドの淡い光、
そっと睫毛の影ができる
少しだけ愛が足りない
君はぼんやり呟いた
費やした君との月日
惜しみはしない僕がいる」♪
♪「Goodbye Day
けりをつけて、
One More Day また一日
新しい日にすればいい」♫

♫「One More Day また一日
信じていれば それでいい」♫
♫「One More Day また一日
穏やかならば それでいい」♪

親友の面影がよぎってゆく。
27年経っても鮮やか。
この狭い部屋に流れるは、
彼と僕との心の歌。

窓の外、年の瀬の空を仰ぐ。
遠い日の記憶、冬の澄んだ空。

僕は今日も生きている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?