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「最後の一本です!」

この木曜は七夕の夜、暑気払いの宴席。
飲み物の注文でお店の方から
「最後の一本です。
このボトル入れませんか」
と言われた。

特別な蔵元から入荷できた、
貴重な純米大吟醸酒だ。
冷酒にすれば馨しいかおり、
「お店の在庫は残り一本です」と。

20年来の馴染みのお店。
熱燗党の僕ではあるが
さすがに暑い日が続くので
「とっておきの冷酒ね、
そう!お願いします」と応じた。
今夏は冷酒党に鞍替えか。

この「最後一本」という響きは、
どこか懐かしい、
居酒屋や料亭の「決り文句」であった。
本当に最後の一本かと問うのは
野暮の極みだろう。

「最後の一本」と言われると、
最後から2本目、3本目のお酒より
どことなく貴重、稀少な印象になる。
最後の最後まで絞り込んだ雫、
選びすぐった一本のような気がする。

勿論、単に「これ、あと一本だよ」
といものだし、どのボトルも
同じ銘柄で同じ箱に保管されていれば
味も、かおりも変わらないはず。
この特別感は、日本酒と料理が
美味しいお店ならではの、
「トリック」というより「マジック」だ。

懸命に仕事に取り組む人の、
一日の終わりの憩いに、酒がある。

僕らは、いつ命絶えるか分からない。
昨夜飲んだ酒が
「最後の一本」になるかもしれない。

今ある生に感謝し、
過去と今の周囲に感謝し、
ボトルたちにも感謝する。

さればこそ、
お店のオススメ「最後の一本」に、
いざなわれる。
熱燗党でも冷酒党でも。

今を支える社会、
日々の「当たり前」。
自分の命を繋いできた、
かけがえのない今。

何党に入れようが
今日は大切な選挙の日。
そして未来へ。平和へ。


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