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人を想うこと

「人が、人を想う。 
これ以上に美しいことは
ないんだよ」
高倉健

先週、わが娘が家を出て、
再びひとり暮らしを始めた。
引っ越しでドタバタの様子、
だから特には声をかけなかった。
彼女が出ていった当日の夜、
短いメールが届いた。
「2年間、お世話になりました。
昨日はドタバタしてすみません」。

昨日、土曜朝、僕はいつもの
買い出しに出掛けた。
コンビニ弁当や菓子パンなどを
一人分減らした。
僅かだが荷物は減った。
少しだけ軽くなったのだ。軽く。
この感覚は前回の娘の引っ越しより
どこか重い。どっしりと感じる。
いつでも会うことは出来るだろうが
僕の歳、彼女の将来を思えば、
今生もう同居することはない。
そう思えるからだ。

会社でも人が異動したりで、
次第に景色が変わる。
当たり前過ぎるこの事実、
永遠なる移ろい。

僕は昨日から健さんのこの言葉を
思っている。

「人が、人を想う。 
これ以上に美しいことは
ないんだよ」

「鉄道員」「幸せの黄色いハンカチ」
「ホタル」「駅舎・ステーション」
「遥かなる山の呼び声」「あなたへ」
「単騎、千里をいく」「海峡」「動乱」
健さんの主演作は全て、
人を想う心の美しさを描いた作品。

この地球で、今この場所で
生を紡いでいるという奇跡。
やがて天に召された後、
自分の存在など、
誰も思い出すこともなくなる。
よしんば長生きしても、
今から数年後は
誰の記憶にも残らないだろう。

だからこそ今を生きる。
懸命に生きる。
誰かの記憶に残す為ではなく、
この世に生を受けた証として。
その生を育むなかで
最も美しいのは、人を想うこと。

相手の立場を慮ること。
混じりっけなしの気持ちで
相手を許すこと。
その人と過ごした季節に
感謝すること。

ときは過ぎゆく。
跡形もなくなる。
記憶もなくなる。
だから、今が尊い。

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