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相撲基礎練習法 第2回 股割その2

前回


1. はじめに

 前回も少しお話したことの確認になりますが、股割(開脚姿勢から胸やお腹を地面につけること)ができるようになるために必要な要素としては、主に以下の二つがあると私は考えています。

①固いとスムーズな前傾動作の妨げになる部位の柔軟性を確保すること
②骨盤(股関節)から前傾する動きを習得すること

 今回は、①の点について、普段どのような取り組みをしているか紹介したいと思います。

 股割が苦手な人は、内腿(うちもも)の筋肉が固いからだと思っている人が多いのではないかと思います。確かに、股割をしていて最も筋肉が引き伸ばされて痛みを感じる部位はどこかと聞かれたら、多くの人にとっては、やはり内腿の筋肉(内転筋)もしくは、腿裏の内側の筋肉(内側ハムストリングス)だというのが答えになると思います。

そのため、股割を行う上で内腿の筋肉の柔軟性を高めることは、それなりに重要なことなのだろうと思います。しかし、内腿の柔軟性を高めようとするだけでは、なかなか股割ができるようにはならないと私は考えています。それは、そこまで痛いという自覚がない部位が固いことによって、開脚姿勢をとったり、そこから上半身を前に倒すということが上手くできていないケースが実はかなり多いのではないかと感じているからです。

 開脚姿勢からスムーズに上半身を前に倒せるようになるために、私が特に重要だと考えているのは、①ハムストリングス(太腿の裏側の筋肉)②臀筋(お尻の筋肉)③脊柱起立筋(背中の真ん中の筋肉)の柔軟性を高めることです。

股割姿勢から上半身を前に倒して、胸やお腹をべったりと地面につけるためには、スムーズに骨盤を前傾させることができる必要があります。腿裏の筋肉や(ハムストリングス)やお尻の筋肉(大臀筋や梨状筋など)は、骨盤の後ろ側に付着していて、骨盤を後ろに倒すように作用します。逆に言えば、骨盤を前傾させる際には、これらの筋肉が引き伸ばされることになります。そのため、これらの筋肉に十分な柔軟性がないと、骨盤をスムーズに前傾させることの妨げになると考えられます。

 また、背中の筋肉をほぐすことによっても、股割姿勢からの前傾動作はしやすくなります。股割姿勢から地面にべったりと体をつけられるようになる上で、骨盤をスムーズに前傾させられることに加えて、背中を曲げていく際に、特定の部位だけが大きく曲がってしまうのではなく、背中全体が少しずつ曲がるように動かせることが重要であると私は感じています。

  股割姿勢から上半身を上手く前に倒すことができていない人に良く見られるのは、首や背中の上部のみを曲げることで、頭を地面に近づけようとしていて、背中の中心付近や腰はほとんど動いていないという状態です。このような動きになってしまうと、ある一定以上は前に体を倒すのが難しくなってしまいます。そして、このような動き方になってしまっている人は、背中の筋肉がガチガチに固まってしまっている人が多いという印象があります。こういうケースでは、背中の筋肉をゆるめることで、背中の中心付近から腰にかけての部位を少しずつ曲げられるようになるようです。このちょっとした動きができるかどうかが、股割姿勢からの前傾動作がスムーズにできるかどうかに、意外に大きく影響していると考えています。

※また、背中の筋肉と腿裏の筋肉は筋膜を介してつながっており、背中の筋肉を緩めることが、腿裏の筋肉を緩めることにつながるということもあるようです。

 以下では、股割の前に行うストレッチについて、私がよく選手に行ってもらっているものをいくつか紹介したいと思います。同じ部位でもストレッチの方法は様々なものがあると思います。基本的には色々と試して自分がしっくりくる方法を見つけて、ルーティン化していくのが良いと思います。ですので、以下で紹介するやり方は、取っ掛かりとしての参考にしていただけると良いかと思います。

2. 腿裏の筋肉のストレッチ

 まずは、腿裏の筋肉のストレッチについて紹介します。腿裏の筋肉をストレッチする方法はいろいろあると思いますが、私が気に入っているのは、下の動画のような壁に足を引っかける方法です。この方法を気に入っている理由としては、一人で徐々に可動域を広げていくという作業を行いやすいということがあります。

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