河合隼雄氏講演会と初デート
教室の片隅、図書コーナーを仕切った壁に掲示板があった。秋も深まったある日の休み時間、皆がワイワイガヤガヤ休講の案内などを見ている。そこに講演会のチラシが貼ってある。京都大学の心理学者、というよりユング派心理学を日本に紹介した河合隼雄氏の講演会の案内だった。
当時も以後も著名で、日本における第一の心の臨床家であった。私も以前からとても惹かれていて、サラリーマンからの職業変更時の選択ではSTか臨床心理士かと迷うほどだった(記事#2「学際」)が、それは河合隼雄を知ったからだった。人としての奥深さと言うか、仙人を彷彿させるお顔もそうだが、知りたい、触れたいという気持ちにさせる大きな人だった。後に文化庁長官を務められた(2007年没)。
その河合隼雄氏の講演会の案内を、私の隣で同じように見てるUさんがいた。就職試験で同じ病院を受けて、私は落ちて彼女が受かった(前記事)。試験の帰りに一緒に食事をして以来彼女に魅かれていた自覚があった。気付いたら、手にしてたシステム手帳の一ページに「一緒に講演会に行きませんか?」みたいな事を書いて彼女の前に差し出した。ドキドキしていたと思う、、😅 周りには皆がワイガヤいたのに。。
まあ、30年以上前で時効ということで。返事はYESだった!😃
講演会のテーマは、令和の今でも社会問題のひとつ、不登校だった。当日の講演の内容はよく覚えていないが、多くの参加者の中から当事者のお母さんが泣いてるのか震えてるのか、とても真剣な声で河合先生に質問をした。先生は丁度私の脇の通路を歩きながら、考えながら、真摯に答えていられた、その場面を覚えている。
フリースクールもまだ無い時代、当時の不登校という問題は、戸塚ヨットスクール事件*に代表される様に、家族にとっては今とは比較にならないほどのとても大きな問題だった。
もう一つ覚えているのは、Uさんとエレベーターに乗ろうとした時に、なんとTさん(記事#8「NくんとTさん)や他のクラスの3、4人が一緒に入って来たことで、ここでもドキドキ、詮索されないか、とか、いや丁度玄関ホールで会った程の偶然と思ってくれたか、、とか言い訳めいたことを考えた。翌日以降、噂になることはなかった、、😅
帰りは長い道のりを二人並んで自転車を押して色んな事を話しながら帰った。その日から彼女と付き合うことになった。秋も深まった日曜日だった。
📕この頃12月に読んだ本
「道草」 夏目漱石 岩波文庫
「沈黙の世界」 ピカート みすず書房