見出し画像

物語をつくる(10)虚と実の逆転/シモーヌ

22年前の2002年に制作され、
まさに今の「AI時代」を予見した名作「シモーヌ

監督/脚本/製作 アンドリュー・ニコル。
出演 アル・パチーノ、ウィノナ・ライダー、キャサリン・キーナー、レイチェル・ロバーツ(シモーヌ役)

わがままなハリウッド女優に振り回されてる、ちょっと落ち目なタランスキー監督。彼のもとに送られてきたのは、ある男が生涯かけて創り上げた完壁なCG女優のデータとシステム。彼は自分の未完成の作品をそのCG女優シモーヌを使って完成させてしまう。ギャラもトレーラーハウスもメイクも衣装も不要のCG女優シモーヌは、監督の思うがまま完壁な演技をこなしてしまう。

メイクも衣装も不要のCG女優シモーヌ

それもそのはず、シモーヌの容姿や演技は過去のあるゆる有名女優のデータを寄せ集めて作った完全無欠の理想の女優であるから。観客もそんな完壁な女優シモーヌに魅了され、映画も大ヒット。しかし、そこで問題が発生。実在しない女優をいかに存在しているように見せるか、タランスキー監督は四苦八苦する。そんなスタイリッシュなコメディ。

タランスキー監督はアル・パチーノ、元妻のプロデューサーをキャサリン・キーナー、わがままなハリウッド女優をウィノナ・ライダーが演じている。

アンドリュー・ニコル監督と
シモーヌ役のスーパーモデル レイチェル・ロバーツ

わがままだった女優が、シモーヌの演技に魅了され改心したあと見せるオーディションでのウィノナの演技は、さすがに迫真の演技を見せていた。

一瞬のうちに表情を変え、役の入り込む、というシーンをそのまま演じていたわけだが、その切替えはさすがに見せられてしまった。万引事件で、よくない評判も立ってしまったウィノナだが、もともとはやはり力のある女優だと思う。

あまりに美しすぎる女優だからこそ、周りのいろいろな声に耐えられなくなった結果の奇行だったのかなと弁護したい。

考えてみたら、「トゥルーマンショー」にしても「ガタカ」にしてもアンドリュー・ニコルの脚本は、誰かが誰かを騙したり秘密を隠していたり、というような構図が多い。

秘密を抱えた人間の苦悩や虚と実の逆転など、メディア、人間、社会の本質を洞察した発想やアイデアは、やはりすばらしい才能を持った脚本家、監督だと思う。

スピルバーグの最新作「The Terminal」でも、アンドリュー・ニコルは原作と製作総指揮を担当しているというから、まさにハリウッドのアイデア箱のような人物だ。
初稿:2004.07.03

#AndrewNiccol #WinonaRyder #アンドリューニコル #アルパチーノ #ウィノナライダー #キャサリンキーナー #物語をつくる #映像研究 #ストーリーテリング  #映画感想文


この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての制作費用として使わせていただきます!