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1/21 早朝読書会 金子みすゞ「世界中の王様」

読書会をやってみて

金子みすゞの「詩集 世界中の王様」の中の読書会を10名で行いました。
今回は詩集の中の「雀」「つくる」「世界中の王様」「時のお爺さん」の4篇を読みました。
特に読書会で盛り上がったのは「つくる」という作品でした。

「つくる」

小鳥は
藁で
その巣をつくる。
  その藁
  その藁
  たあれがつくる。

石屋は
石で
お墓を作る。
  その石
  その石
  たあれがつくる。

わたしは
砂で
箱庭つくる。
  その砂
  その砂
  たあれがつくる。

この短い詩の中からさまざまなものを感じることができます。読書会では、最初に出てくる巣は生命の誕生を表し、次の墓は死を表している。最後の箱庭は世界を表しているという意見でした。この意見を聞いて、一見単純そうに見えるこの詩が、実は広大なものを含んでいることがわかり、そこを軸に自分の思考がどんどん展開していくことができました。この詩は「生きること」=「つくること」といってるような気がします。プラトンの『饗宴』に「いかなるものであれ、非存在から存在へ移行する場合、その移行の原因はすべて、制作です。」という言葉があります。この世界に存在するすべてはつくられたものであり、生きていくことはつくり続けることである。また世界=箱庭は自分でつくるものである。そのようにこの詩は言っているのだと気づきました。

また「世界中の王様」という詩も印象的でした。

「世界中の王様」

世界中の王様をよせて、
「お天気ですよ。」と云つてあげよう。

王様の御殿ひろいから、
どの王様もしらないだらう。
こんなお空をしらないだらう。

世界中の王様をよせて、
そのまた王様になつたよりか、
もつと、ずつと、うれしいだらう。

「お天気ですよ。」という単純な言葉一つで世界がひろがるような、金子みすゞの詩自体を表しているような詩です。単純な言葉にこそ、今まで気づかなかった、はっとさせられるような気持ちになる要素がある。世界を表すために複雑な言葉ではなく、子どもが話すような単純な言葉をつかっていた金子みすゞのマニフェストのようです。
読書会でここに出てくる王様は、「資本主義下の勝ち組」「文学で名声をなしている人々」ではないかという意見が出ました。すべてなるほどなと思い同意できましたが、ぼく自身はそれ自体も含め、すべての大人たちを王様とよんでいるのだと読みました。ここでいう「御殿」とは仕事、家庭、趣味などの我々が属している世界を「御殿」と言っている、そのように解釈しました。仕事、家庭、趣味などの中でたとえ下っ端にいても、その中では自分の世界を形成しています。その世界にいながら外側を感じることは難しい。しかし、金子みすゞはその世界の外側から投げかける言葉を詩という媒体を使用し構築しようとしています。そこには複雑な言葉は要らない。「お天気ですよ。」という単純な言葉で大人たちのいる世界の外側=自然を見せているように思います。
この詩を読んで久しぶりにゆっくり青空を眺めてみたくなりました。

ご参加いただいた方の感想

あぶくさん
毎回楽しみに参加させていただいています。 金子みすゞの詩が好きで、1人で読むと何十回繰り返してやっと気付くことが、読書会だとその場で、もっと違った視点から広がって、気付いた嬉しさをみんなと共有できるなんとも言えない幸せを感じます。「つくる」好きな詩になりました。金子みすゞ第2回目も是非してもらいたいです。

Mimiさん
初めて読んだ金子みすゞさんの作品は「みんなちがって、みんないい」だったので当初はふんわりとした優しげな明るさのみを感じていました。しかし、今日扱った作品や彼女の生涯を知るにつけ、どこか悲しい感じと暗い深さを感じました。 詩の感想を他の出席者の方々と共有すると本当に沢山の気づきがありますね。自分の精神を中立的な状態、偏っていない状態を保つには日常生活の連続性から離れて、違う視点で物事を考える必要性があるように思います。詩や文学は良い考える題材になりますね。

次回

土曜日と日曜日交互に開催致します。いずれも朝6:00〜7:00です。
興味を持った方はぜひご参加ください。

1/29(日) 梶井基次郎『檸檬』1

2/4(土) 旧約聖書『ヨブ記』9章


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